冠動脈ステント植え込み術 (Coronary Stenting)の最近のブログ記事

Stent Thrombosis in New-Generation Drug-Eluting Stents in Patients With STEMI Undergoing Primary PCI: A Report From SCAAR. Sarno G, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 64: 16:24.

Sweden国内にはPCIを行っている施設は確か 16しか無かったと記憶しています しかもその全てが国立病院であり、そこでの診療記録はは全て登録されます PCIに関する登録は SCAAR (Swedish Coronary Angiography and Angioplasty Register) と呼ばれています これまでにもDESの late stent throbosisについての問題提起をしたり、非常に業績のあるレジストリです

この論文では、STEMIに対するBMSと第一世代DES、そして第二世代DESについて成績が比較されました もちろん、この植え込みは無作為化されていませんので、多くのバイアスが入る可能性がありますが、何しろ大きなレジストリなので、別の言い方をすれば、限定された症例ではなく、実世界診療を表しているとも考えられます

結果は、早期/晩期ステント血栓症の発生は、BMSに比較して、第二世代DESでは HR 0.65 (0.43-0.99)、第一世代DESでは HR 0.60 (0.41-0.89)と少ない発症頻度でした そして、晩期ステント血栓症に関しては、BMSに比較して 第二世代 1.52 (0.78-2.98)、第一世代では HR 2.88 (1.70-4.89)と有意に第一世代DESで多く発生しました

このことから、STEMIに対して総合的に第二世代DES植え込みがBMS植え込みよりもステント血栓症リスクが少ないが、第一世代DESでは多いことが分かり、結果として現在のガイドラインは書き直しが必要である、と提言しています

まあ今さら第一世代DESを用いる施設や医者はいないと思いますがね・・・
Causes of Early Stent Thrombosis in Patients Presenting With Acute Coronary Syndrome. Nakano M, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 63: 2510-20.

この論文は経皮的冠動脈インターベンション特に、薬剤溶出性ステント植え込み病理の世界的権威であられる Virmani先生のラボからの報告です このラボには日本人がたくさん留学しています Virmani先生ご本人はインド人の女性であり、20年近く前に北京で初めてお会いした時には、とてもこわい先生のように思えたのですが、実際にはとても優しい先生です

この論文では急性冠症候群でステントを植え込んだものの30日以内に亡くなられた 59例の剖検心臓に対して、合計67個のステント (37 DES/30 BMS)が植えられた冠動脈を3 - 4mm毎にスライスして合計124+175+252スライスを調べたものです そして、それらを、血栓を認めたステント37個 (19 DES/18 MBS)と、血栓を認めなかったステント30個 (18 DES/12 BMS)に分類し、さらに、血栓を認めたステント299個の 124スライスを、血栓があるスライス124と、血栓の無いスライス175に分類したのです これだけ聞いても気の遠くなるような話ですね

-------- きっと、朝から晩まで顕微鏡を見て、スライスを調べ表にしたりしているのでしょうね いやはや何ともご立派です

結果として、stent malappositionと血栓形成が関係ある (OR = 1.8; p<0.001)ことが判明しましたが、これは以前より言われていることですよね、それとnectoric coreがステント内にプロラプスしている程度が大きいほど血栓症が多い (OR = 2.3; p=0.006)、まあこれも当たり前のような話ですよね、急性冠症候群でステント植え込んだ後、ステント内がケバケバしている所見は、「あっ、ヤバい、血栓できないか心配だな」と思い、色々と対策 (ヘパリン持続投与とか、再度の後拡張など)を講じますからね、
新しい所見としては、中膜が裂けている現象 (Medial Tear)の存在が血栓症と関係ある (OR = 1.8; p=0.001)ことでした

まあここまでは良いですよ 新しい発見 素晴らしいですね

しかし、問題は結論部分なのです そのまま引用すれば
まずは、本文での Conclusionです

Our autopsy study revealed that underlying thrombus burden and suboptimal stenting leads to greater NC disruption, medial tear, and imcomplete stent apposition, which are important factors in the induction of early ST.

といものです 赤字は僕が強調したものです 「何で suboptimal stentingが、greater NC disruption, medial tearと結びつくのでしょうか? 本文の discussionでもそれを証明していません suboptimal stentingと、imcomplete stent appositionが結びつくのはもちろん分かりますよ、こんな自ら示したデータから論理的に証明できないことは、Discussionに書くべきであって、Conclusionに書いてはいけません これではまるで小説であって、科学論文とは言えません
さらにもっと驚くのは、Abstractでの Conclusionです

The current autopsy study highlights the impact of thrombus burden and suboptimal stent implantation in unstable lesions as a trigger of early ST, suggesting that improvement in implantation technique and refinement of stent design may improve clinical outcomes of ACS patients.

となっています ここでまた主張の論理的飛躍があります 何の証明がなされずに主張されているのです どうしてステント植え込みテクニックの改良が、血栓症を減らす(もちろんこのことに関しては僕も同意しますよ)と、この論文の中のデータから言えるのでしょうか??? これではまるで小説であって、科学論文とは言えません ああ 少し TAVI 1例目と 2例目の間で興奮してしまいました 冷静にならないといけませんね

Five-Year Outcomes in Patients With Left Main Disease Treated With Either Percutaneous Coronary Intervention or Coronary Artery Bypass Grafting in the Synergy Between Percutaneous Coronary Intervention With Taxus and Cardiac Surgery Trial. Morice MC, et al. Circulation 2014: 129: 2388-2394.

これは、TAXUS DESによるPCIと、冠動脈バイパス手術の効果を前向きに無作為に比較した臨床試験である Syntax試験の結果にサブ解析です ここでは、左主幹部に対して、TAXUSを用いたPCIと、冠動脈バイパス手術の5年間の治療成績が比較されました これまでにも 1年間の治療成績が公表されており、それでは、脳心血管重大事故 (MACCE)では両群間に有意な差は無いが、脳卒中発症頻度では冠動脈バイパス手術群でよる多く発症していたのです

この傾向は 5年間追跡しても全く同様の結果であり、数字のみを信用すれば、左主幹部の治療においてはむしろPCIの方が冠動脈バイパス手術よりも優れている、そのように結論できます

ただし、この論文の中でも解析されているように、解剖学的にPCIにあまり向いていない、とみなされる群では、やはり冠動脈バイパス手術の方に分がある、というまあ日常臨床の現場では常識的な結論が裏付けられた結果となっています
A randomized, prospective, intercontinental evaluation of a bioresorbable polymer sirolimus-eluting coronary stent system: the CENTURY II (Clinical Evaluation of New Terumo Drug-Eluting Coronary Stent System in the Treatment of Patients with Coronary Artery Disease) trial. S.SAITO, et al. European Heart Journal Advanced Access.

これは Bioresorbable polymerを用いた SESの治療成績についての論文です 対照群は Xienceですが、Xienceに対する非劣性の証明が主要観察項目として日本とヨーロッパで行われた臨床試験であり、日本国内に対しては治験でした

日本とヨーロッパの現状に合わせ、かつ整合する試験を行うためにたくさんの努力が行われ、日本でも多数の病院の先生方そして患者さんがたにご協力頂き、無事試験が終了し、9ヶ月観察期間において、主要観察項目が証明されました そして、その過程で、日本とヨーロッパにおいてより良いディバイスをより早く安全に有効に患者さんに届ける道が開かれたのです 結果は、EuroPCR Late Breaking Sessionで発表されると同時に、European Heart Journalにも掲載されたのです
Predictors of Reocclusion After Successful Drug-Eluting Stent-Supported Percutaneous Coronary Intervention of Chronic Total Occlusion. Valenti R, et al. J Am Coll Cardiolo 2013; 61: 545-50.

これはイタリアの single centerレジストリの結果です 2003年に開始したもので2011年までの 1,035例の慢性完全閉塞患者がそもそもの母集団ですが、この中で 802例でPCIが成功しました かの中で慢性完全閉塞に対するPCIの成績を、EES出現前と、後に分けて比べたものです

一年間の MACE = 16%とものすごく良い成績でした 血管造影は、82%で行われていましたが、再閉塞は 7.5%のみで、EES後では3.0%という低率でした

また、STARS techniqueについても検討されましたが、 明らかに STARS techniqueを行った方が MACE発症率が高かったのです まあ当たり前ですよね 日本人の術者で STARTなんか使う人いないですもんね

総じて成績良かったのですが、そもそもほとんど男性患者であり、糖尿病が少く、年齢も若いのでそのような良い成績となったものと思います
Risk of Major Adverse Cardiac Events Following Noncardiac Surgery in Patients With Coronary Stent. Hawn MT, et al. JAMA 2013; 310: 1462-1672.

循環器科がしっかりしている病院において、心臓以外の手術を行う場合には、かならず心電図や病歴でスクリーニングされた後、虚血性心疾患の有無について何らかの詳しい検査が必要に応じて行われます

この時に問題となるのが、もしも冠動脈有意病変が発見された場合、その手術を先に行って良いものか、あるいはPCIやCABGで心臓の状況を改善させてから、その手術を行うべきか? という点です

この問題に関して参考となるのが AHA/ACC 2007 Guidelineです その日本語訳は以下の通りです

術前のCABGあるいはPCIによる冠動脈再潅流の推奨 
Class I 
1. 有意な左冠動脈主幹部の狭窄をもつ安定した狭心症患者で,非心臓手術前に冠動脈再潅流手技
を行うことは有用である.(Level of Evidence: A) 
2. 3枝病変をもつ安定した狭心症患者で,非心臓手術前に冠動脈再潅流手技を行うことは有用で
ある(LVEF<0.50の時生存の利益が大きい).(Level of Evidence: A) 
3. 有意な近位左前下行枝の狭窄があり,LVEF<0.50あるいは非侵襲的ストレス試験で陽性な2
枝病変をもつ安定した狭心症患者で,非心臓手術前に冠動脈再潅流手技を行うことは有用であ
る.(Level of Evidence: A) 
4. 高リスク不安定狭心症患者あるいは非ST上昇心筋梗塞患者では,非心臓手術前に冠動脈再潅
流手技を行うことが推奨される.(Level of Evidence: A) 
5. 急性ST上昇型心筋梗塞患者では,非心臓手術前の冠動脈再潅流手技が推奨される.(Level of 
Evidence: A) 
 
Class IIa 
1.心症状を緩和するためにPCIによる冠動脈再潅流が適当な患者や,待期的非心臓手術を12カ
月以内に必要とする患者では,①バルーン血管形成術あるいは,②ベアメタルステントとその
後の4-6カ月の二重抗血小板療法が望ましい.(Level of Evidence B) 
2. 薬剤溶出ステントを挿入されていて,緊急手術のためチエノピリジン療法を中止しなければな
らない患者では,可能ならばアスピリンを続行し,可能な限り早期にチエノピリジン療法を再
開するのが妥当である.(Level of Evidence: C)
Class IIb 
1. 高リスク虚血患者(例えば,ドブタミン負荷エコー検査で少なくとも5セグメント以上の壁運
動異常)における術前の冠動脈再潅流療法の意義は確立されていない.(Level of Evidence: C) 
2. ドブタミン負荷エコー検査で異常(1から4セグメント)を呈する低リスク虚血患者に対する
術前の冠動脈再潅流療法の意義は確立されていない.(Level of Evidence: B) 
 
Class III 
1. 非心臓手術前に安定した冠動脈疾患患者にルーチンに冠動脈再潅流療法を行うことは推奨さ
れない.(Level of Evidence: B) 
2. チエノピリジン療法あるいはアスピリン療法,あるいは両者の投与を周術期に中止する必要が
ある以下の患者で待期的非心臓手術は推奨されない:ベアメタルステント植え込みが4から6
週間以内に行われている患者,薬剤溶出ステント植え込みが12カ月以内に行われている患者.
(Level of Evidence: B) 
3. 4週間以内にバルーン冠血管形成術を受けた患者に待期的非心臓手術を行うことは推奨され
ない.(Level of Evidence: B)

このガイドラインに書かれていることは、我々の日常診療感覚と全く同じであり、受け入れやすいものだと思います

さて、本日の抄読会論文ですが、2007年当時より薬剤溶出性ステントの使用がさらに一般化さている現在においても、このガイドラインのままで良いのかどうかということに挑んだ意欲的な論文です
対象としたのは、2000年から2010年のアメリカ退役軍人病院 (VA)データベースであり、ここには124,844のステント植え込みが行われ (DES 47.6%, BMS 52.4%)、その中の 28,029人の患者さんがステント植え込み後 24ヶ月以内に何らかの心臓以外の手術が行われました
この中の 1980人が MACEを発症しました このMACEを起こした患者さんについて解析した結果 以下の3つの因子が重要と判明しました

  1. 緊急での非心臓手術 (OR: 4.77)
  2. 心筋梗塞発症から6ヶ月以内の非心臓手術 (OR: 2.63)
  3. 改良した心危険因子が2以上 (OR: 2.13)
さらに興味深いことには、非心臓手術の後に、薬剤溶出性ステントを用いた方が、金属製ステントを使用するよりも、有意にMACEが少く(OR: 0.91)、また二重抗血小板療法休薬しようが継続しようが、MACE発生率には影響しなかったということです

ちなみに改良された心危険因子 (Revised Cardiac Risk Index: rCRI)とは

  • 心不全
  • 脳卒中
  • 心筋梗塞
  • インスリン使用糖尿病
  • 手術CPT code分類でのhigh-risk手術
  • 術前一年以内のクレアチニン 2mg/dL超
の存在で点数付けし、1点: 低リスク、2点: 中等度リスク、3点以上: ハイリスク とするものだそうです

ちなみに、ステント植え込みから手術までのタイミングでは MACE発生率が
  • < 6wk                                    11.6%
  • 6 wk to <  6 mo                      6.4%
  • 6 mo to < 12 mo     4.2%
  • 12 mo to 24 mo      3.5%
ということであり、6週間過ぎた後の MACE発生率にはそれほど大きな差が無かったのです
 

何れにしてもこの論文の結論は、ガイドラインで推奨されている、「金属製ステントの使用」と、「六ヶ月を越えてから手術すべきだ」ということは、改めるべきだ、と提唱しています

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