経橈骨動脈的冠動脈インターベンション (TRI)の最近のブログ記事

Comaprison of transracial and femoral approaches for percutaneous coronary interventions: A systematic review and hierarchical Bayesian meta-analysis. Bertrand OF, et al. Am Heaert J 2012; 163: 632-48.

先日名古屋で CVIT2014が開催され、その中のシンポジウムの一つとして TRI vs TFIというのがあったようです 僕はメキシコに行っていて参加していませんでしたが、聞けば、Bleeding Complication -> higher mortality during PCIといのが証明されていないので、急性心筋梗塞(STEMI)に対しては、TRIでやろうが経大腿動脈的冠動脈インターベンションでやろうがどちらでも良い というような論旨が主流を占めた、ということです

これに対しては、正直 「何で今さら」と思います 過去に既にPCIと関係なく、

Yatskar L. et al. Access Site Hematoma Requiring Blood Transfusion Predicts Mortality in Patients Undergoing Percutaneous Coronary Intervention. Catheter Cardiovasc Interven. 2007; 69: 961-966.
では、NHLBI registryの解析から、 bleeding complicationとその後の mortalityの間には direct linkが存在すると言われ、また

Feit F et al. Predictors and Impact of Major Hemorrhage on Mortality Following Percutaneous Coronary Intervention from the REPLACE-2 Trial Am J Cardiol. 2007; 100:1364-9
上記の REPLACE-2試験でもそれは明らかです。

そして、急性心筋梗塞に対しては、TRIが経大腿動脈的冠動脈インターベンションに比して明らかに出血性合併症を減少させることが明らかです。ですから、できるならばTRIで治療すべきであり、少なくとも急性心筋梗塞に対してPCIによる治療を行おうと考えている循環器内科医は、普段よりTRIに習熟すべきなのです。

さて、この論文では、これまでpublishされた、TRIとTFIを比較した、無作為試験と観察研究を調べ挙げ、この問題に回答を出そうとしたのです。その結果、観察研究では、hard endpointにおいて、TRIがTFIよりも優れている、という結果が出来ましたが、無作為試験では、死亡や心筋梗塞といったhard endpointsでは両群で明らかな差が認められなかった、というものです

これは、当たり前のことです 何故ならば観察研究では恐らくは対象となる患者群が異なるからです その結果TFI群で分が悪い、そのようになるのでしょう 一方無作為試験群では、ここらが無作為化されますので、対象となった比較的少ない症例数では当然のことならが有意な差が認められないのでしょう だってもともと試験が 僕が2003年にpublishした TEMPURA Trialでも、hard endpointsで有意な差が出るように症例数を設定していないからです
しかし、強調すべきは、Bleeding Complications発現率に有意な差が出ています 全ての試験でそうなのです これは、hard endpointsの発現頻度よりも、bleeding complications発現頻度の方が10倍以上多いから 統計学的に検出し易いからなのです

だから振り出しに戻りますが、急性心筋梗塞の治療に対してPCIを行うのであれば、TRIですべきであります TFIで行いもしもbleedingが起こったならば、その全責任は術者にあります もっとも、橈骨動脈拍動が触れない場合は別ですよ その場合には再灌流時間短縮のために、速やかに動脈アクセスすべきなのです
Transradial Coronary Catheterization and Intervention Across the Whole Spectrum of Allen Test Results. Valgimigli M, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 63: 1833-41.

これはイタリアからの論文ですが、経橈骨動脈的冠動脈インターベンション/経橈骨動脈冠動脈造影に先立って行われることが推奨されてきた Allen試験の不必要性について論じた論文です

もともと、僕は 2000年に既に Kimny Courseにおいて、皆に Allen試験は不必要であることを提唱し、それ以来ヨーロッパでは Allen試験を行わない風潮になってきました もちろん当院においては 1996年頃からそうなのです

これに対して、特にアメリカでは未だに Allen試験を行っています この論文では Allen試験の結果によらず、乳酸産生とか、ハンドグリップ試験において差は認められず、従って Allen試験の結果によらず、安全に橈骨動脈アプローチが可能であることを提唱しています

正直、この関係については、もう我々は新鮮な観点を失っていましたので、「あっ、やられた」という感じです

まあ、しかし、僕としてはこの論文の骨格に対して異議を呈したいと思います そもそも 「アレン試験異常であることが判明している患者さんに対して経橈骨動脈アプローチを行う」ことが、倫理的に許されるのか? ということです 僕はどうしてもこれをクリアできないので、このような研究は行わず、後ろ向きの結果のみでアレン試験は不要である、と主張してきたのです この論文の中では IRBがどうこうとかいうことはあまり論じられていません 何でアメリカの雑誌にこのような論文が通るのか? 全く理解できませんよ

まあ、通してしまえば勝ちでしょうが・・・・
Radial Approach for Percutaneous Coronary Inverventions on Chronic Total Occlusions: Technical Issues and Data Review. Burzotta F, et al. Cathet Cardiovasc Interv 2014; 83: 47-57.

この論文はパリ郊外の Massyにある パリ南心臓病センターからの報告であり、これまでに発表された論文や、講演のデータをまとめたいわゆる Reviewというものです

内容に関しては、我々から見れば目新しいものはなく、ただ、我々の施設からの論文が 6編引用されているのがまあ、良いかな ということだけでした

しかし、このようなものでも一旦論文となれば、世界の世論を引っ張るのであり、僕自身も構えて待っているだけではなく、もっと発言せねばならない、そのように思いました

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