2014年3月アーカイブ

Predicotrs of Outcome After Catheter Ablation of Premature Ventricular Complexes. Baser K, et al. J Cardiovasc Electrphysiol. 2014 in press.

本日はもうすぐ雑誌に掲載予定の論文です ミシガン大学からの報告です 
心室性期外収縮に対するカテーテル・アブレーションは、生命予後などをもともと改善する手技ではないかも知れませんが、現実に頻回な心室性期外収縮のため、日常生活に支障をきたす方もおられ、また希に頻回に心室性期外収縮のために心機能が悪くなる症例もあります
これに対して、抗不整脈薬を投与することは、かえって生命予後を悪くする可能性もあり、現実問題としてはβ遮断薬程度しか使えないのが現状です

そこで、カテーテル・アブレーションの出番となるのですが、生命予後という hard endpointに影響があまり無いためか、これに関する研究というのは意外と少ないようです

この論文では、カテーテル・アブレーションを行い、急性期にその心室性期外収縮がなお残るか、あるいは消えてしまうかで、慢性期の心室性期外収縮再発率に影響があるか否かを 50例という比較的小数例の解析で分析しています

結果としては、簡単に言えば、急性期に心室性期外収縮が抑えられても抑えられなくても慢性期心室性期外収縮抑制率は良かった、というものでした

うーん まあ合併症も少ない手技ですし、積極的に行って良いのでは? と考えます
High-Intensity Signals in Coronary Plaques on Noncontrast T1-Weighted Magnetic Resonance Imaging as a Novel Determinant of Coronary Events. Noguchi T, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 63: 989-99.

この論文は久留米の新古賀病院の方々が長年かけて集められたデータの集大成です 新古賀病院では以前から高性能のMRIを用いて冠動脈を撮影しねプラークの検出を試みてきました
正直 MRIのことは良くわからないのですが、何でも T1強調画像で撮像し、予め決めたカットオフ値で心筋とプラークを分離することにより、冠動脈の高輝度プラークを検出すれば、そのようなプラークは vulnerable plaqueである、ということなのだそうです
そして、カットオフ値のことを、PMR (plaque-to-myocardium signal intensity ratio)と称し、それによって検出された冠動脈高輝度プラークのことを HIPs (coronary high-intensity plaques)と呼んでいます

いかにも最初から難しい話ですね そうなんですこの論文の統計処理がすごく難しいのです ROC curveを用いて、最終的なカットオフ値を求めているのですが、その中で c-indexというものが出てきます

何だこれは? というのが正直な感想でしたが、どうやら AUC (Area Under Curve)のことであり、一般的には c-statisticsと呼ばれているものと同じものを指しているようです

結局論文中では、カットオフ値を 1.4と定めれば一番良く HIPsを検出できて、それが臨床的長期予後を予測する、そのように結論していました うーん 分からない 分からない
Long-Term Arrhythmia-Free Survival in Patients With Severe Left Ventricular Dysfunction and No Inducible Ventricular Tachycardia After Myocardial Infarction. Zaman S, et al. Circulation 2014; 129: 848-854.


ICD (Inplantable Cardioverter Defibrillator: 植込み型除細動器)を植えこみことにより、ある種の患者さんでは突然死から救うことが可能となります 心筋梗塞後左心機能が低下している患者さんを対象に予防的にICDを植え込んだ場合と、植え込まなかった場合を比較した無作為試験の結果からは、慢性期の生命予後をICD予防的植え込みが改善することが知られました

このため、現在のガイドラインではICDの予防的植え込みは、心筋梗塞後 40日を経過し、かつ LVEF <= 30%あるいは、LVEF <= 35%でかつNYHA Class II/IIIの患者さんに対してのみ行うべきだ、ということになっています

これをもって、このような患者さんの全例に ICDを植えこむ必要があるか否か、それを電気生理学的検査(EPS: Electro-Physiological Study)を行うことによりある程度予測できないか それがこの論文の骨子です

オーストラリアの単独施設からの膨大な症例数の解析です この病院では、LVEF < 40%の心筋梗塞症例に対して、心筋梗塞後8日目に EPSを行い、そこで心室性頻拍や心室細動が4発の期外収縮誘発により起こる場合などには危険と判断し、ICDを植え込み、誘発されなければ植えこまない、という方針で臨み、その長期予後を調べました

結果的には、LVEF > 40% (この群はもともとICDの適応外なのでICDを植えない)の患者さんと、LVEF <= 35%であり、EPSでVTが誘発されなかった患者さんでは、48ヶ月までの生命予後に差はありませんでした 従って、LVEF <= 35%でも、EPSで VTが誘発されなければ、ICDを植える必要は無い、と述べています
さらに、LVEF <= 35%で VTが EPSで誘発された患者さん(この方たちには、プロトコルに則って原則的に ICDが植え込まれています)においては、VTが誘発されなかった LVEF <= 35%の患者さんと比較して、有意に、死亡や不整脈が多発していました

この2つの観察を持って、筆者らは LVEF <= 40%の心筋梗塞患者では、EPSにより VT/VFが誘発される場合にのみ ICD植え込みをすれば良い、と提案しています これにより不要な ICD植え込みを減らすことが出来るという訳です

ICDというのは実際にそれが作動した場合の多くでは命を救う非常に大切な器具です しかし現実には不正確動作(必要無いのにショックを発生する)もあり、また植え込んだにもかかわらず一度も作動しない場合もあります 非常に高額な機器ですし、この論文のようなアプローチも必要でしょう しかし、ガイドラインにならなければ臨床医としては手が出せない、という現実もあります
Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitor, Angiotensin Receptor Blocker Use, and Mortality in Patients With Chronic Kidney Disease. Molnar MZ, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 53: 650-8.


CKD (慢性腎臓病)を有する患者さんに対して血圧コントロールのために、ACE-I (ACE阻害薬)や、ARB (アンギオテンシン受容体遮断薬)の投与が予後にどのように影響するかを調べたコホート研究です コホートとしては、アメリカ退役軍人で、これまで ACE-I/ARB治療を受けたことが無く、透析を受けていないCKD患者さん 141,413名が選ばれました
この中で、26,051名において ACE-I/ARB治療が開始されました もちろんACE-I/ARB治療が行われた群と、行われなかった群では、様々な背景因子で有意な差がありましたので、まず行われた解析が、「ACE-I/ARB治療実施」を従属変数として、ロジスティック回帰分析を実施し、いくつかの独立変数のオッズ比を求めました これにより、各背景因子の重みが分かりました
そして、それを用いて Propensity Matchingが行われ、結果的に ACI-I/ARB治療群 20,247例と、非治療群 20,247例が 1:1で抽出されました
この両群間には、様々な背景因子で多くの違いが個々にはありますが、全体として Propensity Scoreが同程度なので良いのでしょう
何れにしてもこの抽出群で、生存解析が行われ、結果としては ACE-i/ARB投与群では、死亡率が有意に低下した、という結果でした
この結果を持って、非透析CKD患者さんに対して ACE-I/ARB投与するとこにより死亡率を低下させることができる、と結論しています

しかしながら大きな疑問を呈します そもそもこの論文の Table 3で ORが示され、これにより Propensity Score Matchingが行われている筈です それなのに、そのようにして20,247例ずつ抽出されたマッチング群は Table 2に示されるごとく多数の背景因子で大きな有意な差があるのです ということは、マッチングが正しく行われていないことを意味しますので、その後の解析には何の学問的意義がありません まったく疫学研究のプロがデータをこねくり回しているだけです

正直昨今の、ARBにまつわる臨床研究のいかがわしさがありますので、本当かな? という思いです また、これまでに同等の患者群に対して行われた無作為比較試験では、ACE-I/ARB投与によって死亡率低下効果は認められない、というものですので、やはり簡単にこの研究結果を受け入れることは問題です
この研究は、10万例以上の母集団を用いたものすごく大きな研究ですので、その数で圧倒した力で攻めてきているのです そして、複雑な統計解析を用い、まあ、一般の臨床医が読んでも良く分からない、そのような論理展開をしているのです
でもやっていることは、大したことはなくって、本来であれば、「一年後生命予後」などを従属変数として、ロジスティック回帰分析を行えば良いのでは? と思います ああ 難しい
High-Dose Allopurinol Reduces Left Ventricular Mass in Patients With Ischemic Heart Disease. Rekhraj S, et al. J Am Coll Cardiol 2013; 61: 926-32.

ザイロリック (Allopurinol)と言えば、Xanthine Oxidase inhibitorとして有名ですね。もちろん通常は高尿酸血症に対する薬剤として重用されています そう言えば、この薬剤 高尿酸血症に伴う痛風発作発作時には使用するのを控えた方が良いらしいですね、尿酸を急激に下げようとすると、余計炎症反応がひどくなるらしいのです 痛風発作急性期にはひたすらボルタレン、というのが今風の治療らしいですね ちなみに、僕が医学生の頃の標準的治療法とされていたコルヒチンは、副作用が多いため、痛風発作前兆に対して、一錠のみ服薬、というのが正しい治療法らしいです

まあ、そんなザイロリックですが、以前より一部には、この薬は酸化抑制剤としても使えるのだ、という主張もありました この論文はそんな観点から、虚血に伴う心室容量増加がザイロリックによって抑制できるのでは? という論文です

何で左心室容量 (Left Ventricular Mass)などという一般的でない評価項目を用いるか? と言えばそれは当然 この方たちがMRIで評価し易いからなのです

つまりこの論文の評価項目は、ぬもすにぬでみた、LVM、そしていわゆるFMD (Flow-mediated dilation)による内皮機能評価、そして、脈波計測でした

患者さんは、冠動脈疾患を有することが明らかな患者さんで、33例ずつがザイロリック 600mg/day投与と偽薬投与に無作為化されました

結果としては、ザイロリック投与により、LVMが減少したので、これは良い、というものでした

何だか面白くない論文でした
Warfarin, Kidney Dysfunction, and Outcomes Following Acute Myocardial Infarction in Patients With Atrial Fibrillation. Carrero JJ, et al,. JAMA 2014; 311: 919-928.


これまで心房細動を伴った急性心筋梗塞患者さんにおいて抗凝固療法を行うかどうかは、腎機能に注意して行う必要がある、とも言われてきました 腎機能低下例では抗凝固療法によるメリットよりも出血性合併症発生のリスクの方が大きいため、CKD (慢性腎臓病)があれば、例外的にワーファリンを投与しないほうが良い、とも言われてきました

本論文では、スウェーデンでの 2003年から2010年までに登録された、24,317例の心房細動を伴った急性心筋梗塞患者さんという前向きコホートに対して、腎機能との関係で一年後の予後が調査されました この中で21.8%の方がワーファリンを退院時に服薬していました

スウェーデンでは全ての入院歴は国家で管理され、データベースに登録されています その中からあの有名な SCCAR Registryも構築されているのです

結果はシンプルで、全ての腎機能において、ワーファリン投与群の方が一年後予後が良かった、というものでした

ただ、この結果を単純に日本人においても当てはめて良いか否かは疑問です というのも琉球大学の井関先生の論文にあるように、日本人透析患者さんでは脳出血が死因として大きな問題だからです
Use of clopidogrel with or without aspirin in patients taking oral anticoagulant therapy and undergoing percutaneous coronary intervention: an open-label, randomized, controlled trial. Dewilde W. et al,. Lancet 2013; 381: 1107-15.


経皮的冠動脈インターベンションにより冠動脈ステント植え込みする患者さんの中には、心房細動のため、あるいは人工弁を植え込んでいたり、あるいは左室内血栓のために、ビタミンL拮抗薬(VKA)であるワーファリン投与による抗凝固療法を受けておられる患者さんが少なからずおられます このような患者さんに薬剤溶出性ステントなどを植える時には、その標準的併用療法である二重抗血小板療法 (DAPT) を続けるか否かが問題となります

何故ならば二重抗血小板療法をむやみに続けることは、その後の脳内出血などの重篤な出血性合併症を起こす可能性が高くなります さらには、アスピリン投与により、胃からの出血のリスクも高まります

しかしながら現在の各種学会(日本国内のみならずヨーロッパ、アメリカなど)のガイドラインでは、未だにこの点に関しては二重抗血小板療法継続のままとなっているようです

この論文では前向きに二重抗血小板療法群と、Clopidogrel群を無作為化して、PROBE法による解析が行われました 579人の患者さんが、279例のClopidogrel + VKA (二重療法)、そして 284例の Aspirin + Clopidogrel + VKA (三重療法)の2群に無作為化され、主要評価項目としては経皮的冠動脈インターベンション後1年間の出血性合併症と定められました もちろん出血といっても穿刺部からの軽度出血から、輸血や外科的修復を要する大出血や、致命的な脳内出血などの重篤な出血までありますが、今回用いられたのは全てをひっくるめた出血性合併症でした

結果としては、一年間で、二重療法群では 19.4%、三重療法群では 44.4%の症例で出血性合併症が発生し、これは当然のことながら p<0.0001であり、二重療法とすれば、Hazard Ration 0.36で出血性合併症発生が少なかったのです しかし、重篤な出血に限定すれば差は認められませんでした

そして、副次評価項目であった死亡、心筋梗塞、脳卒中、再血行再建術そしてステント血栓症に関しては、二重療法群で 11.1%、三重療法群で 17.6%と、これも二重療法群の方が HR 0.60, p=0.025と若干優れていました

そして、結論としては、ワーファリン投与患者さんに対しては、二重療法の方が圧倒的に少ない出血性合併症発症率であり、アスピリンを投与しないことによってステント血栓症が増加することは無かった というものでした

なお、この研究はOpen-sourceのプロジェクトである Rを統計解析に用いています
Efficacy and Safety of Dabigatran Compared With Warfarin in Relation to Baseline Renal Function in Patients With Atrial Fibrillation. A RE-LY (Randomized Evaluation of Long-term Anticoagulation Therapy) Trial Analysis. Hijazi Z. et al,. Circulation 2014; 129: 961-970.

本日は鳴り物入りで日本でも発売開始となった、プラザキサ (Dabigatran)の Pivotal Trial である RE-LY試験の解析結果です これまで、心房細動における脳塞栓予防には、ワーファリンが有効とされてきましたが、特に日本人では納豆との兼ね合いからなかなか投与が難しい場面にも遭遇します また、肝機能や食事による薬の効きの変動が大きいので、定期的な採血が、適切な作用発現維持のために必要であり、それも煩わしいものがありました 具体的には定期的に INR採血が必要であり、INRを 2.0 - 2.5程度に維持することが勧められてきました

これに対して、RE-LY試験では、プラザキサ 150mg/day投与がワーファリンよりも有意に塞栓症を減少させ、出血性合併症を増加させなかったため、人類史上初めてワーファリンにとって変わり得る有益な薬剤が導入されたのです しかも、この試験結果は日本人患者さんでも同様でした

実際我々循環器科医師はワーファリンを投与する機会が多く、それに変わり得る薬剤の出現を首を長くして待っていました そしてプラザキサが使えるようになりとても喜びました しかし、良いことには反対の面もありました 患者さんによっては、ひどい下痢に悩まされる方もありました それも結構な頻度だったのです そして、何より価格がべらぼうに高い、ワーファリンに比較すると大変高い、さらには、人工弁に対する塞栓予防症いや、弁膜症合併例での有効性は証明されていないばかりか、人工弁ではワーファリンに比較して圧倒的に悪い結果であり、臨床試験が途中で中止になってくらいです

さて、本論文は RE-LY試験患者さんを腎機能により、三郡に分けて、それぞれでのワーファリンに対する有効性を調べたものです しかし、その論文内のデータを見ると驚くべきことに、脳塞栓や全身塞栓を防ぐ効果ではワーファリンに比して、Dabigatran 110mg/day, 150mg/dayの何れも有意な有効性を示さなかったのです それを腎機能の低下患者さんのみを取り出せばかろうじて若干の有効性を示しました

まあ出血性合併症は少なかったのですが、それでもええ? この程度? というものでした

という結果を見ればやはり今でもワーファリンが王座をなかなか明け渡さないのですね、と思います

Systematic Review of Current Guidelines, and Their Evidence Base, on Risk of Lactic Acidosis after Administration of Contrast Medium for Patients Receiving Metformin. Radiology 2010; 254: 261-9.

糖尿病患者さんにおける血糖コントロールのために、メトフォルミン(メトグルコ)は非常に有益な薬剤です しかし、この薬剤服薬患者さんに対して造影検査を行った時に、乳酸アシドーシスとなった、という症例報告が散見されます これにより、日本国内では薬の添付文書において、造影剤使用に際しては、メトフォルミンを 48時間前より休薬するように、と書かれています
しかるに、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドにおけるガイドラインでは、腎機能低下が無い限り、その必要は無い、と書かれるいるようです
本論文は、この点に関して焦点を当てたものです
結論としては、正しいガイドラインを作るに十分な科学的データが今だ無い、というものでした
その結果、メトフォルミン服薬患者さんで造影を行うに際しては、検査が必要であるならば、事前にメトフォルミンを休薬する必要は無い、休薬による障害(血糖コントロールの悪化や、糖尿病による心血管障害の増加)を十分に考慮するべきだ、というものでした

ちなみに現在の日本のガイドラインにおいては、腎機能正常であれば、造影の時にメトフォルミンをやめればよいようになっています もともと腎機能悪い方にはメトフォルミンは投与すべきではありません
Paclitaxel-Eluting Balloon vs. Standard Angioplasty to Reduce Recurrent Restenosis in Diabetic Patients With In-Stent Restenosis of the Superficial Femoral and Proximal Popliteal Arteries: The DEBATE-ISR Study. Liistro F, et al. J Endovasc There. 2014; 21: 1-8.

浅大腿動脈病変に対するステント植え込みは、血管内治療後の再狭窄を減少させますが、残念ながらステント内再狭窄した後の予後はあまり良くありません それに対して、薬剤放出バルーンは効果が期待されています

この論文では、過去にバルーン単独で治療した糖尿病を有する浅大腿動脈ステント内再狭窄 42例と、Paclitaxel-Eluting Balloon (DEB) 44例の一年間予後を比較しています

結果としては、一年間の再血行再建術率 (TLR率)はバルーン群 31%に比し、DEB群では 13%と良好な結果が示されました そして、再々狭窄予測因子としては、そもそものステント再狭窄が完全閉塞であった場合が有意に悪い結果でした

膝下病変に対する DEBは必ずしも良好な結果を示していませんので、浅大腿動脈に対するこの有効な成績は期待されます
Comparison Between Different Risk Scoring Algorithms on Isolated Conventional or Transcatheter Aortic Valve Replacement. Wendt D, etl al> Ann Thorc Surg 2014; 97: 796-802.

TAVI (TAVR)あるいは外科的大動脈弁置換術において、治療を行った時に生命予後を予測する点数システムがいくつか開発されてきました 基本的にはこれまで行われた多数の実治療の予後を従属変数として、各種の臨床的独立変数を組み合わせ、判別関数を作成する、という方法で作られてきました その中で、現在良く使用されているのが、EuroScoreと STS Scoreというものです

この世界、そこそこでヨーロッパとアメリカの覇権争いが行われているのですが、例えば日本語で経カテーテル的大動脈弁植え込み術と呼ばれる最新治療、もちろん鎌倉では行っていますよっ! ですが、これの英語呼び名として2つあります。

一つはTAVI (Transcatheter Aortic Valve Implantation)であり、もう一つは TAVR (Transcatheter Aortic Valve Replacement)です。もちろん原義的には、これは弁の入れ替えではなく、単なる植え込みですので、TAVIの方が正しいのです しかし、アメリカでは何故か TAVRが用いられ、ヨーロッパでは TAVIが用いられます さて、日本ではどうでしょうか? 準公式的には TAVRが用いられているようですが、その最大の理由は、経カテーテル的大動脈弁植え込み術を健康保険償還申請する時に、「植え替え」の方が、外科的大動脈弁置換術に近く、保険点数が高くなるのでは? と期待したから、という嘘のような噂があります
また、外科医は、TAVRをTAVIよりも使う傾向があります

さて、そんな中でこの論文では、1999年から2012年に行われた連続 1,512例の外科的単独大動脈弁置換術患者さんと、291例の経大腿動脈的経カテーテル的大動脈弁植え込み術患者さん、そして155例の経心尖部的経カテーテル的大動脈弁植え込み術患者さんに対して、EuroScore (additive/logistic), EuroScore II, STS score, ACEF scoreを計算して、どのスコアが良かったかを調べたものです

結果的には、additive EuroScoreと STS scoreが一番良好に生命予後を良好に予測をしました

まあ結果はこれだけなのですが、ただ、実際に経カテーテル的大動脈弁植え込み術を日本人の患者さんに行っていると、随分と西洋人の患者さんとは異なるのです だから、これから日本人の予測式を作成していかねばなりません それには少なくとも1,000例ぐらいの蓄積が必要でしょう 大変な道のりです
Differential Clinical Characteristics and Prognosis of Patients with Longstanding Persistent Atrial Fibrillation Presenting with Recurrent Atrial Tachycardia versus Recurrent Atrial Fibrillation After First Ablation. Zhao L, et al. J Cardiovasc Electrophysiol. 2014; 25: 259-265.


最近は、発作性心房細動に対するカテーテル・アブレーションは常識となり、慢性持続性心房細動に対しても積極的にカテーテル・アブレーションを行う施設も増えてきていると思います この論文は 慢性持続性心房細動 (1年間以上持続が確認されている心房細動)患者さんに対して、カテーテル・アブレーションを行い、その後再発が認められた 222例の患者さんを対象とした解析結果であり、中国上海の上海胸部病院からの報告です この病院には大分以前にPCIで訪問したこと数回あります・・・ 余談でした

さて、心房細動に対するカテーテル・アブレーション後には、特に慢性持続性心房細動に対するカテーテル・アブレーション後には40%ぐらいの確率で再発が認められます そして、その再発パターンとしては、従来より、心房細動 (R-AF; Recurrence by Atrial Fibrillation)になるタイプと、心房性頻拍 (R-AT; Recurrence by Atrial Tachycardia)となるタイプの二種類あることが分かっていましたが、印象としては、R-ATの方が二回目のカテーテル・アブレーション成功率が高い、と思われてきました

この論文では、R-ATの方が、R-AFに比較してそもそもカテーテル・アブレーション前の心房細動持続日数が短く、左房径も小さく、僧帽弁閉鎖不全も少く、CFAEs (Complex Fractionate Atrial Electrograms)が少ないという結果でした そして、やはりR-ATとなった場合には、再度のカテーテル・アブレーションの有効性が高いことが判明しました

この分野も着々と進歩していますね


Impact of Intraprocedural Stent Thrombosis During Percutaneous Coronary Intervention. Genereux P, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 63: 619-29.

一時期 JACCも CirculationもこぞってInterventionを分離し、それぞれ JACC Interventionとか Circulation Interventionとか新たに雑誌を立ち上げ、Intervention関係をそちらに誘導し、JACC本体などに PCI関係の論文を投稿しても、そもそも受け付けない、そんな状況が数年続きました しかし、最近 PCIは一時程の勢いは無く、その関係だと思いますが、最近は JACCや Circulation本体にも PCI関係の論文が掲載されるようになってきました そんな印象持っているのは私だけでしょうか???

この論文は、CAMPION PHOENIX試験という、新しい静脈内投与用の抗血小板薬である、Cangrelorと、内服のスタンダード抗血小板薬である Clopidogrel (プラビックス)のPCIにおける効果を比較した試験からの副次解析結果です
Cangrelorというのは現在開発中の薬剤であり、血小板ADP受容体であるP2Y12受容体拮抗薬ですが、Clopidogrelとの違いは、Clopidogrelが Prodrugであり、体内で代謝されて初めて作用を発揮する内服薬であるのに、Cangrelorはそれ自体が作用を発揮する徐脈内投与薬だという点です

観察項目として、「PCI手技中のステント血栓症 (IPST: IntroProcedural Stnet Thrombosis)」という今までにあまり無い項目を選択しています。

IPST予測因子として単離されたのは、STEMI (HR 1.87, p=0.04), NSTEMI-ACS (HR 2.07, p=0.004), Baseline Thrombus (HR 1.79, p=0.01), Total Stent Length/mm (HR 1.03, p<0.0001), Cangrelor instead of Clopidogrel (HR 0.65, p=0.048)でした かろうじてCangrelorの方がClopidogrelよりも IPST抑制効果が高かった、ということになりました

さらに、IPSTが起これば術後48時間および、30日での死亡率に有意な重大な影響を与えました (IPST+: 10.1%, IPST-; 1.0%の30日死亡率, p<0.0001)

このことから結論として
  1. IPSTは比較的希な事象である(<1%)
  2. しかしながら、IPSTが起こればカテ室を出た後の重大有害事象と結びつく
  3. Cangrelorは IPSTの発症を抑制する
としています

正直、僕の印象は、日本人患者さんに対してそのような強力な血小板ADP受容体P2Y12に対する拮抗薬を使用して本当に大丈夫か? と思います きっと、出血性合併症が多数発生し、かえって悪い結果が出るのではないでしょうか?

それと、このような PCIに直接関係した論文を再び JACCが掲載するようになったのは時代の変化を感じます
Association of Atrial Tissue Fibrosis Identified by Delayed Enhancement MRI and Atrial Fibrillation Catheter Ablation: The DECAAF Study. Marrouche NF, et al. JAMA 2014; 311: 498-506.


これは心房細動に対するカテーテル・アブレーション後の心房細動再発と、心房線維化程度の関連性についての研究です 心房線維化程度は、MRI遅延造影によって判定していますが、これは心室筋における、壊死の存在判定と同様です
MRI delayed enhancementをvolume rendering表示して、心房全体の10% - 40%まで 4段階に線維化の程度を層別化し、これと心房細動再発率を検討したところ、線維化が1%増すごとに心房細動再発リスクが1.06倍増える、という結果でした
もっとも、あまりにも線維化がひどくなれば、そもそも心房筋の電位が無くなったり、無限ループ回路ができたりしても、全体には波及する訳が無いので、心房細動にはならないのでしょうね

Radiofrequency Ablation vs Antiarrhythmic Drugs as First-Line Treatment of Paroxysmal Atrial Fibrillation (RAAFT-2): A Randomized Trial. Marillo CA, et al. JAMA 2014; 311: 692-699.


現在のガイドラインでは、発作性心房細動に対しては、まず薬物療法を行い、それで効果が不十分であれば、カテーテル・アブレーションを考慮する、というふうになっています。これは、今まで行われた大規模試験において、発作性心房細動に対する治療法として、カテーテル・アブレーションが薬物療法に対して明らかな優位性を示せなかったからです。
この論文では、立場を変え、「それでは、薬物療法を受けていない発作性心房細動に対して、カテーテル・アブレーションと薬物療法を比較すればどうなのよ」という命題で開始されました。
しかしながら、その実 症例登録なかなか進まず(何と、2006/07月から2010年01月までかかり、127例しか登録できなかった!!)、統計学的な再検討を行い sample sizeが 400例から 125例に縮小され、むりくり出した結論、なんてね

まあ結論としては、2年までに61例の薬物療法群の44例(72.1%)で、そしてカテーテル・アブレーション群66例の36例(54.5%)で再発が見目られ、これはp = 0.02の有意差があった だから、発作性心房細動に対する初期治療法としてカテーテル・アブレーションが妥当である、と 結論てしています

だけど、そもそもこの再発率高く、しかも、カテーテル・アブレーション群では6例で心タンポナーデを起こしているのです こんなのち療法してそもそも認められるのでしょうか? 信じられない成績を堂々と出すのですから、大した神経です

Prospective Multicenter Evaluation of the Direct Flow Medical Transcatheter Aortic Valve. Schofer J, et al., J Am Coll Cardiol 2014; 63: 763-8.


現在(2014年3月現在)日本で保険診療下で使用できるTAVIのディバイスは Edwards SAPIEN-XTしかありません そして、次に使えるようになりそうなのが、Medtronic CoreValveです
やはり、TAVIを実際に行っていて、その劇的な有効性を体験すると共に、とんでもない合併症が起こり得る、ということを知ります また、大動脈弁閉鎖不全が残存することがあるのも難儀です さらには SAPIEN-XTに至っては、一旦植え込みにかかれば、引き返すことができない、というのも怖いものです
Direct Flow MedicalのTAVIディバイスは全く革新的な発想で開発されたものです そもそもの発想の原点が、TAVIの現状ディバイスが有している問題点の大多数は、ディバイスが金属で硬くできていることに起因するのだ、という発想なのです
これに対するアンチテーゼとして、樹脂を用いて柔軟に解剖に追随するような造りなのです
この論文では、ヨーロッパを中心として行われた、Cohort A (訓練フェーズ) 25例 + Cohort B (評価フェーズ) 75例の合計 100例の植え込み結果について記載しています。
期待通り、高い成功率、大動脈弁閉鎖不全発生の低下、回収可能ということが実証されました 早く日本でも使えるようになれば良いですね
Door-to-Balloon Time and Mortality among Patients Undergoing Primary PCI. Menees DS, et al. N Engl J Med 2013; 369: 901-9.


本日の抄読会は、急性心筋梗塞に対する Primary PCIにおいて、Door-to-Balloon Time (病院到着からバルーン拡張までの時間)が予後に影響するか否かを調べた大規模後ろ向き試験です。アメリカではDTB Timeが 90分を切るか否かで、予後が変わる、ということで病院の態勢を整え、なるべく早期に心カテに送ることが試みられています。
対象は、アメリカ515施設で CathPCI Registryに2005 - 2009年に登録されたST上昇型急性心筋梗塞患者 95,007人です。
結果的に、この間にDTB < 90分となる頻度が増加しているにもかかわず、死亡率向上は認められなかった、従って急性心筋梗塞の死亡率改善のためには、DTB < 90分だけでなく、他の方策も考えねばならない、というものでした
そして、Limitationや、Discussionでは色々と述べられていますが・・・

何と信じられないことに、死亡率を上昇させることが、他の大規模試験で明らかな、経大腿動脈的冠動脈インターベンションによる治療が、99%で行われ、経橈骨動脈的冠動脈インターベンションが1.0%未満だということです。こんな臨床試験ばっかみたいですよ 本当に
そりゃあ論文にはなるでしょうが、物事の本質ではありません、如何にもアメリカ的です

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