2014年4月アーカイブ

Comparison of Balloon-Expandable vs Self-expandable Valves in Patients Undergoing Transcatheter Aortic Valve Replacement: The CHOICE Randomized Clinical Trial. Abdel-Wahab M, et al. JAMA 2014; 311: 1503-1514.


これは歴史上最初に公表された、SAPIENと CoreValveの前向き無作為ガチンコ勝負の論文です 実施したのは、ドイツ・ハンブルグにある有名な Segeberger心臓センターからの一施設報告です

従来、後ろ向きには、この2つのTAVIディバイス、まあ典型的なバルーン拡張型と、自己拡張型の比較がこれまでに行われてきましたが、前向きに無作為化しての試験はこれ以外にはありません

ずばり結果は、Balloon-Expandableの方が機器の成功率が有意に高かった (95.9% vs 77.5%)であり、機器の成功率が主要評価項目だったのですから、Balloon-Expandableに方が優れている、という結論となりました

ただし、この直前の New England Journal of Medicineに掲載された CoreValveの US pivotal trialの凄まじい結果 "In patients with severe aortic stenosis who are at increased surgical risk,TAVR with a self-expanding transcatheter aortic-valve bioprosthesis was associated with a significantly higher rate of survival at 1 year than surgical aortic-valve replacement. "  

Transcatheter Aortic-Valve Replacement with a Self-Expanding Prosthesis.

 2014 Mar 29.

の結果を見れば「本当かよ?」と思わざるを得ません そして、僕自身、この両者のTAVIを行っている経験を有する数少ない術者として、信じがたい結果なのです


では何故そのような結果がこの JAMAの論文では導きだされたのでしょうか?
  1. まず、主要評価項目はを、device successとしているから
  2. 次に、臨床評価を植込み後三ヶ月時点でしか行っていない
  3. あまりにもペースメーカー植え込み率が高く、技術的に信用できない
というのが、僕の感想です
1.については、この Device Success率が低い原因として、直後の大動脈弁逆流が含まれ、実はそれが原因で Self-ExpandableではDevice Successが得られなかった症例がほとんどであっのです
2については、そもそも三ヶ月の時点での死亡率などは、両群で同等であったのですが (心血管死亡率 4.1% vs 4.3%)、それより長い期間での結果については触れられていません そもそも術後大動脈弁逆流については、Self-Expandableでは時間経過と共に減少してくる、というのがこれまでの定説です
3.については、Balloon/Selfで 17.3% vs 37.6%という高率でペースメーカー植え込みが行われており、これは異常に高い値です それが意味するところは、弁の植え込み位置が、不適切な可能性がある、ということです

だから僕はこの論文の結果を信用しません
Device-detected atrial fibrillation and risk for stroke: an analysis of >10,000 patients from the SOS AF project (Stroke preventiOn Strategies based on Atrial Fibrillation information from implanted devices). Boriani G, et al. European Heart Journal 2014; 35: 508-516.


最近の体内式ペースメーカーなどの植え込みディバイスには、心電図のホルター機能がついています。これを用いて、心房細動発生と、虚血性脳卒中発症の関連について調べたものです この論文の特色は、何しろ 10,000例以上という膨大な母集団だと言うことです これらの患者さんは、植え込みディバイスがあり、心房細動ではない患者さんです 年齢中央値は、70歳前後であり、 CHADS2 score 0/1が 40%ぐらいの集団でした

2年間の follow-up期間中で、少なくとも 5分間持続する心房細動を少なくとも1日間察された患者さんは全体の 43%でした そして、全体の中で 95例の患者さんが虚血性脳卒中を起こしましたが、これは年 0.39%の頻度でした そして、その発症率は、 心房細動持続時間が 1時間未満の人と比較して、 1時間以上では有意にハザード比が上昇する (HR 2.11; 1.22 - 3.64; p = 0.008)でした

結果としては、筆者からが主張したかった結論、心房細動持続時間が長いほど 虚血性脳卒中を合併する可能性が高い、というものでした

しかし、そもそもこの年齢の患者さんで虚血性脳卒中発症頻度が年率 0.39%というのは低すぎないでしょうか? それと、表を見ると どう考えても発症頻度と、持続時間の間には関連が無い、ようにしか思えないのですが・・・
A Controlled Trial of Renal Denervation for Resistant Hypertension. Bhatt DL, et al. N Engl J Med 2014; 370: 1393-1401.

今年の ACCで最大の話題となった論文です 薬剤抵抗性高血圧症に対する、腎動脈デナベーション (RDN)の効果を、いわゆるシャム治療と無作為に比較したものです 何故に話題となったかと言えば、(1) シャム操作というものをインターベンション治療の臨床試験に導入した (2)その結果、これまで有効とされていたことが完全に否定されてしまった からなのです

これまで、全身の HTN1/HTN2試験では RDNは明らかに有効な作用を発揮する、とみなされていたのですから、この結果は衝撃的です 実際に何もしなかった場合と、効果が全く同じだったのです もちろん、症例エントリーまでの薬剤投与期間が短い、とかの批判もあるのですが、何しろ無作為化されているので結果の大枠は動かしがたいものがあります

しかし、日本でこのようなシャムという操作を行うことはどう考えてもできないと思いますが如何でしょうか? シャム操作というのは、医療提供する側からすれば、より科学的に正しくなるの一点から受け入れられますが、医療を提供される側からすれば、全く無意味なことをされるのですからたまったものですありませんよね
Everolimus-eluting bioresorbable vascular scaffolds for treatment of patients presenting with ST-segment elevation myocardial infarction: BVS STEMI first study. Diletti R, et al. European Heart Journal 2014; 35: 888-768.

世間の期待を集めた BVS (Bioregradable Vascular Scaffolding: 世界で最初の実用化された完全生体吸収性薬剤溶出性ステント)ですが、最近は 「何だ、二年経っても消えてないじゃないか」とか、「ステント内再狭窄だっておこるじゃないか」とか、「最初の炎症反応が強くて、金属製薬剤溶出性ステントよりもステント血栓症の危険が高いのではないのか」とか、医学的にも色々な問題点が見つかってきたし、営業的にも必ずしもうまくいっていないようですね

この論文は Patrick W. Serruys大先生引退の後、世界的影響力を保つためにBVSにより素晴らしい業績を維持しようとしている(と、僕が勝手に思っているのですが・・・)、オランダ・ロッテルダムの Erasumus大学 THORAXCENTERからの論文です

思い出しますねえー このErasmus大学というのは、ルネッサンスの頃既にヨーロッパの知の殿堂であり、世界の知性の根源に位置してきたヨーロッパでも有数の大学ですが、その心臓センターである THORAXCENTERというのは、これまた経皮的冠動脈インターベンションの分野において、世界をリードしてきた臨床研究施設です 僕はここのカテ室を三回訪問したことがあります

最初は、確かレーザーの見学だったと思います その頃は、Hamburger先生が実質上のカテ室の中心でやっておられました 現在はアメリカに移住されていますね この時は純粋に見学だけであり、ひたすら「すごいなー」という印象でした
二回目は、2004年の EuroPCRでのライブデモンストレーション術者として招聘された時です この時は右冠動脈の慢性完全閉塞でしたが、比較的すんなりと順行性に開けました もちろん放映した会場はパリであり、その時の聴衆も1,000名の医師ではきかなかったと思います
三回目は、それから4年後の 2008年でした やはり EuroPCRのライブデモンストレーション術者として招聘されました、この時のテーマは、慢性完全閉塞に対する Converntional WIre Technique vs New Modalityとかいうものであり、その Serruys大先生と僕が別の慢性完全閉塞症例に対して ヨーイドンで開始して、どちらがうまくいくか? という対決だったのです Serruys大先生は うーん今は誰も使っていないのではないでしょうか? ナビゲーション・システムも用いて、左冠動脈前下行枝中部の短いいかにも通りそうな慢性完全閉塞病変、僕は蛇行した右冠動脈の起始部からの慢性完全閉塞で、閉塞長は長く、またステント内再狭窄による閉塞も伴う超難関の慢性完全閉塞でした しかし、結局、僕は逆行性アプローチで通過させ、綺麗に仕上げ、対する Serruys大先生は最後まで不成功で終了し、彼の意図する結果と逆の結果となったのでした これを見ていた1,000名以上の大聴衆は皆大喜びであり、その歓喜の様子が、中継ラインを通して僕にも伝わってきました いやあ気持ち良かったですねえー 国旗を背負っての戦いだったのですよ 本番に強い僕ならではでした

そんな施設からの発表であり、BVS植え込みに関しては世界で一番の経験数を誇る施設です 日本からも定期的に留学生が勉強に行っていますね さて、49例の STEMIに対して、BVSを用いて再灌流を行った結果を術後30日の経過で評価しています さらに OCTによる評価を行っています

30日の時点で、TLR = 0%,であり、心臓死や、ステント内血栓症は無かった、という報告です そして、BVSはストラットが厚いので、そこに血栓が捕獲されたりして有利だ、とかステントと血管壁の間に塞栓物質が保持されるので slow flowが起こりにくいのだ とか推論しています 実際には、術後の TIMI IIIは 91.7%でしか得られていませんので、これはおかしいですね

結論としては、STEMIに対しても BVS使用の可能性がある、というものでした まあ今は何でもあり、の時期なのでしょうね 僕の意見をここで述べるのは色々と差し障りのある時期なので控えましょう。
Role of Arrhythmogenic Superior Vena Cava on Atrial Fibrillation. Miyazaki S, et al. J Cardiovasc Electrophysiol. 2014; 25: 380-386.

本日は発作性心房細動や持続性心房細動に対するカテーテル・アブレーションのお話です 正直僕はボクになってしまい、あまりきちんと理解できません

心房細動のメカニズムとして仮定されているのはどうやら、複数の triggersにより引き起こされ、それを維持する substateというものが左房および左房周辺にあることは良く知らています triggersで有名なものが、肺静脈内の遺残組織です この論文では、それだけでなく、上大静脈 (SVC)も triggersや sbustrateとなり得るということを示したものです
もっとも、発作性心房細動のカテーテル・アブレーションをやっている施設では、どうやら SVCも電気的に isolation (隔離)した方が、成績が良さそうだ、ということは言われているらしいです ただ、横隔神経麻痺の可能性があるため、積極的に SVC isolationは行っていない施設が多いようです

この論文は、横須賀共済病院と、土浦恊同病院という、不整脈治療の大本である東京医科歯科大学関連病院からの報告です 何しろ、土浦恊同病院での 連続956例の、そして横須賀共済病院での連続269例の薬剤抵抗性発作性心房細動あるいは持続性心房細動に対するカテーテル・アブレーション患者さんが母集団です 膨大な症例数に圧倒されますよね その中の、74例 (5.2%)でSVCが不整脈を誘発することが確認されたのです

実際、その 74例ではSVCからの triggersによって発作性心房細動が誘発されたりすることが確認されたし、SVCが心房細動の substrateとして作動する場合があることも心内心電図から確認されました そして、これらに対してカテーテル・アブレーションを行い電気的隔離を形成すると心房細動が起こらなくなることも確認されました また、4例 (5.4%)で横隔神経麻痺が起こりましたが、その後全例で回復したそうです

このことから、心房細動患者の中には、SVCが重要な不整脈源であることがあり、その可能性をマッピングの時に注意することにより、カテーテル・アブレーションの成績が向上する可能性がある、と述べられています

僕が感じたのは、多分心房細動に対してカテーテル・アブレーションを行っている不整脈医師は誰しも、以前からSVCも原因のようだ、と思っていたのだと思います しかし、そのことを、論文として主張するためには、このような圧倒的な症例数の裏付けが無いと、なかなか主張できないのではないでしょうか? まるで(かつての)◯◯病院のようですが、臨床医学では重要な側面でしょう。
Radial Approach for Percutaneous Coronary Inverventions on Chronic Total Occlusions: Technical Issues and Data Review. Burzotta F, et al. Cathet Cardiovasc Interv 2014; 83: 47-57.

この論文はパリ郊外の Massyにある パリ南心臓病センターからの報告であり、これまでに発表された論文や、講演のデータをまとめたいわゆる Reviewというものです

内容に関しては、我々から見れば目新しいものはなく、ただ、我々の施設からの論文が 6編引用されているのがまあ、良いかな ということだけでした

しかし、このようなものでも一旦論文となれば、世界の世論を引っ張るのであり、僕自身も構えて待っているだけではなく、もっと発言せねばならない、そのように思いました
A Prospective Randomized Trial of Everolimus-Eluting Stents Versus Bare-Metal Stents in Octogenarians: The XIMA Trial (Xience or Vision Stents for the Management of Angina in the Elderly). Belder AD, et al. J Am Coll Cardiol 2013; 63: 1371-8.


この研究は、イギリスとスペインの二カ国共同で行われ、前向きに無作為に80歳以上のお年寄りに対して、Xience EESと Vision Bare-Metal Stentの効果を比較したものです 通常は、薬剤溶出性ステント植え込みを行うことによって、MACEが減少するため、理由が無ければBare-Metal Stentよりも薬剤溶出性ステントを植えこむ、というのが現在のPCIの主流です

しかしながら、もともと脳内出血などの重篤な出血を起こす危険性が若年者よりも高いと考えられる 80歳以上の方々に対しては、二重抗血小板療法を半年から一年間以上継続せねばならない薬剤溶出性ステント植え込みが本当に良いかどうかに関しては、これまで前向き無作為試験が行われてきませんでした

後ろ向き試験であれば、これまでも報告がありますし、特に日本人に関してのデータは、湘南鎌倉総合病院循環器科の松実君が報告した下記のものがあります

Risk of long-term dual antiplatelet therapy following drug-eluting stent implantation in octogenarians. Matsumi J, et al. J Interv Cardiol. 2013: 26; 114-22.

これによれば、日本人の患者さんでも、薬剤溶出性ステント植え込み後はBare-Metal Stent植え込み後よりも、二重抗血小板療法継続期間が有意に長く、植え込み後一年では、出血性合併症発症頻度に差は認められないものの、二年以降では薬剤溶出性ステント群で著明に出血性合併症発症頻度が増加する(2 years, 21.6% vs 9.6%, P = 0.02; 3 years, 29.4% vs 11.5%, P = 0.001; 4 years, 31.4% vs 15.4%, P = 0.007; major: 2 years, 12.7% vs 3.8%, P = 0.04; 3 years, 18.6% vs 5.8%, P = 0.005; 4 years, 19.6% vs 6.7%, P = 0.006) この結果主要出血性合併症は、薬剤溶出性ステント群でハザード比  4.324 (1.506-12.414; P = 0.007)で増加することが判明しています。それ故、日本人患者さんでは、80歳以上であれば、二重抗血小板療法は一年で打ち切りすることを考えねばならないとされました。

さて、英国とスペインで行われた本試験、そもそもこれは明らかに Xienceと Visionを販売している A社のスポンサー試験と思われるのですが、そんなことは論文中に一言も記載が無く、あの日本を舞台にした降圧剤の臨床試験で問題となったことは一体全体ヨーロッパではOKなのですね というのが最初の印象です

結論から言えば、この試験ではBare-Metal Stent群では一年後二重抗血小板療法率は32.2%、薬剤溶出性ステント群では94.0%と日本と同様に薬剤溶出性ステント群で二重抗血小板療法が長かったにもかかわらず、主要評価項目であり、一年後の死亡、心筋梗塞、脳血管障害、標的血管再治療そして、主要出血からなる複合評価項目では、両群で有意な差が認められませんでした (BMS: 18.7% vs DES: 14.3%, p = 0.09)

その内訳を分析すれば、死亡、主要出血、脳血管障害では発生率に差が無く、心筋梗塞と再血行再建術では、有意に薬剤溶出性ステント群で良かったという結果でした

このため、結論としては、80歳以上でも積極的に薬剤溶出性ステントを使用するのが良いと、暗黙に勧めているのです

しっかしだ~ 本当にそうなのか???

まず、その論文が前提にした仮説では、ARTS I/II試験の結果から、主要評価項目発生頻度を、Bare-Metal Stent群2では20%、薬剤溶出性ステント群では12%と仮定し、そこらか優越性試験を行った時に、α 5%、Power 80%で、658名の症例登録が必要と判断され、結果的に BMS 400/DES 399例という十分な症例数が登録されました それなのにああそれなのに、主要評価項目で有意な差が認められなかった、ということは、そもそもそれ以降の推論が全てだめなのだ、と思います もちろん非劣性評価はされていません

それに松実くんの論文では、出血が問題となるのは、この主要評価項目以降の話であり、本当にこのまま二重抗血小板療法を継続するのが良いか否かについては何も言えません そもそも、主要評価項目で有意な差が出なかったのであれば、何も薬剤溶出性ステントを使用する必要が無いと思われますよね

A Randomized Comaparison of Drug-Eluting Balloon Versus Everolimus-Eluting Stent in Patients With Bare-Metal Stent-In-Stent Restenosis: The RIBS V Clinical Trial (Restentosis Intr-stent of Bare Metal Stents: Paclitaxel-eluting Balloon vs. Everolimus-eluting Stent). Alfonso F, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 63: 1378-86.


この RIBS Vと呼ばれる臨床試験は、スペインの大学病院25施設が共同で 189名のBare-Metal Stent (BMS)後のステント内再狭窄を対象として、日本でも最近認可された DEB (Drug-Eluting Balloon)による治療と、Xience EESを植えこむことによる治療を前向きに比較したものです

正直最近はBare-Metal Stent植え込みは多くの国々で特集な場合にしか行われていませんので、これだけの数のBare-Metal Stent後のステント内再狭窄を集めるのは大変ですし、この結果にどれだけの臨床的意義があるかは不明です

Primary Endpointとして設定されたのは、これまで新規ステントの有効性に良く用いられてきた9ヶ月選択的冠動脈造影での QCAによる最小ステント内内径 (minimum in-stent lumen diameter)でした 必要症例数の算定に用いられた仮説としては、EES植え込み後の9-Mo  MLD = 2.3 +/- 0.7 mm そして、DEB後の9-Mo MLD = 2.0 +/- 0.7 mmという値が用いられていますが、それは、EESもDEBも同等の Late Loss = 0.3 mmと仮定し、EESの方が DEBよりも、Acute Gainが大きいと考えています (どうやら、この考えはこれ以前に行われた RIBS I/II試験の結果から導き出されたようです)  この仮説の下で、Power 80%として脱落率 10%を見込んで EESが 9-Mo MLDで有意に優れている結果が出るには 190例が必要と計算されました

結果としては、予想通り EESの方がDEB よりも大きな 9-Mo in-stent MLDであり、EESが勝ちました 再狭窄率は EES/DEB = 4.7%/9.5% (p=0.22)でした そして、12ヶ月までの臨床結果(MACE)に関しては、両群で有意差はありませんでしたが、EESの方が若干優れた結果でした

このことから結論として、Bare-Metal Stent植え込み後のステント内再狭窄に対しては、EES植え込みをしても、DEBにより治療しても結構良好な成績が得られるけど、若干EESの方が優れている、と結論しています

問題点として言えば、薬剤溶出性ステントの使用は、EESでも示されているように持続的にMACEが発生する点です このため、今回の 9/12 Moでの評価が十分であるとは思えません まあ何れにしてもBare-Metal Stent植え込み後のステント内再狭窄というのはあまり問題とはならないので、今後は薬剤溶出性ステント植え込み後のステント内再狭窄に対する効果を知りたいものです これまで、ステント内再狭窄に対して DEB vs POBAではそれが薬剤溶出性ステントであろうが、Bare-Metal Stentであろうが、DEB (Paclitaxel-Eluting)の方が優れた成績が示されてきました そして、Limus系の薬剤溶出性ステント後のステント内再狭窄に対して、DEB vs TAXUSでは若干 DEBの方が優れた成績でした (ISAR=DESIRE 3 trial) しかし、Limus系の薬剤溶出性ステント後のステント内再狭窄に対して、Limus系薬剤溶出性ステント最植え込み vs DEBというのは未だありませんので、その結果を知りたいものです えっ、それならば自分でやれば? と言われてしまうかも知れませんが、事実上症例数の制約から日本では不可能ですよ

Risk of Major Adverse Cardiac Events Following Noncardiac Surgery in Patients With Coronary Stent. Hawn MT, et al. JAMA 2013; 310: 1462-1672.

循環器科がしっかりしている病院において、心臓以外の手術を行う場合には、かならず心電図や病歴でスクリーニングされた後、虚血性心疾患の有無について何らかの詳しい検査が必要に応じて行われます

この時に問題となるのが、もしも冠動脈有意病変が発見された場合、その手術を先に行って良いものか、あるいはPCIやCABGで心臓の状況を改善させてから、その手術を行うべきか? という点です

この問題に関して参考となるのが AHA/ACC 2007 Guidelineです その日本語訳は以下の通りです

術前のCABGあるいはPCIによる冠動脈再潅流の推奨 
Class I 
1. 有意な左冠動脈主幹部の狭窄をもつ安定した狭心症患者で,非心臓手術前に冠動脈再潅流手技
を行うことは有用である.(Level of Evidence: A) 
2. 3枝病変をもつ安定した狭心症患者で,非心臓手術前に冠動脈再潅流手技を行うことは有用で
ある(LVEF<0.50の時生存の利益が大きい).(Level of Evidence: A) 
3. 有意な近位左前下行枝の狭窄があり,LVEF<0.50あるいは非侵襲的ストレス試験で陽性な2
枝病変をもつ安定した狭心症患者で,非心臓手術前に冠動脈再潅流手技を行うことは有用であ
る.(Level of Evidence: A) 
4. 高リスク不安定狭心症患者あるいは非ST上昇心筋梗塞患者では,非心臓手術前に冠動脈再潅
流手技を行うことが推奨される.(Level of Evidence: A) 
5. 急性ST上昇型心筋梗塞患者では,非心臓手術前の冠動脈再潅流手技が推奨される.(Level of 
Evidence: A) 
 
Class IIa 
1.心症状を緩和するためにPCIによる冠動脈再潅流が適当な患者や,待期的非心臓手術を12カ
月以内に必要とする患者では,①バルーン血管形成術あるいは,②ベアメタルステントとその
後の4-6カ月の二重抗血小板療法が望ましい.(Level of Evidence B) 
2. 薬剤溶出ステントを挿入されていて,緊急手術のためチエノピリジン療法を中止しなければな
らない患者では,可能ならばアスピリンを続行し,可能な限り早期にチエノピリジン療法を再
開するのが妥当である.(Level of Evidence: C)
Class IIb 
1. 高リスク虚血患者(例えば,ドブタミン負荷エコー検査で少なくとも5セグメント以上の壁運
動異常)における術前の冠動脈再潅流療法の意義は確立されていない.(Level of Evidence: C) 
2. ドブタミン負荷エコー検査で異常(1から4セグメント)を呈する低リスク虚血患者に対する
術前の冠動脈再潅流療法の意義は確立されていない.(Level of Evidence: B) 
 
Class III 
1. 非心臓手術前に安定した冠動脈疾患患者にルーチンに冠動脈再潅流療法を行うことは推奨さ
れない.(Level of Evidence: B) 
2. チエノピリジン療法あるいはアスピリン療法,あるいは両者の投与を周術期に中止する必要が
ある以下の患者で待期的非心臓手術は推奨されない:ベアメタルステント植え込みが4から6
週間以内に行われている患者,薬剤溶出ステント植え込みが12カ月以内に行われている患者.
(Level of Evidence: B) 
3. 4週間以内にバルーン冠血管形成術を受けた患者に待期的非心臓手術を行うことは推奨され
ない.(Level of Evidence: B)

このガイドラインに書かれていることは、我々の日常診療感覚と全く同じであり、受け入れやすいものだと思います

さて、本日の抄読会論文ですが、2007年当時より薬剤溶出性ステントの使用がさらに一般化さている現在においても、このガイドラインのままで良いのかどうかということに挑んだ意欲的な論文です
対象としたのは、2000年から2010年のアメリカ退役軍人病院 (VA)データベースであり、ここには124,844のステント植え込みが行われ (DES 47.6%, BMS 52.4%)、その中の 28,029人の患者さんがステント植え込み後 24ヶ月以内に何らかの心臓以外の手術が行われました
この中の 1980人が MACEを発症しました このMACEを起こした患者さんについて解析した結果 以下の3つの因子が重要と判明しました

  1. 緊急での非心臓手術 (OR: 4.77)
  2. 心筋梗塞発症から6ヶ月以内の非心臓手術 (OR: 2.63)
  3. 改良した心危険因子が2以上 (OR: 2.13)
さらに興味深いことには、非心臓手術の後に、薬剤溶出性ステントを用いた方が、金属製ステントを使用するよりも、有意にMACEが少く(OR: 0.91)、また二重抗血小板療法休薬しようが継続しようが、MACE発生率には影響しなかったということです

ちなみに改良された心危険因子 (Revised Cardiac Risk Index: rCRI)とは

  • 心不全
  • 脳卒中
  • 心筋梗塞
  • インスリン使用糖尿病
  • 手術CPT code分類でのhigh-risk手術
  • 術前一年以内のクレアチニン 2mg/dL超
の存在で点数付けし、1点: 低リスク、2点: 中等度リスク、3点以上: ハイリスク とするものだそうです

ちなみに、ステント植え込みから手術までのタイミングでは MACE発生率が
  • < 6wk                                    11.6%
  • 6 wk to <  6 mo                      6.4%
  • 6 mo to < 12 mo     4.2%
  • 12 mo to 24 mo      3.5%
ということであり、6週間過ぎた後の MACE発生率にはそれほど大きな差が無かったのです
 

何れにしてもこの論文の結論は、ガイドラインで推奨されている、「金属製ステントの使用」と、「六ヶ月を越えてから手術すべきだ」ということは、改めるべきだ、と提唱しています

Carotid Artery Stenting in Patients With Left ICA Stenosis and Bovine Aortic Arch: A Single-Center Experience in 60 Consecutive Patients Treated Via the Right Radial or Brachial Approach. Montorsi P, et al. J Endovasc Ther. 2014; 21: 127-136.

Bovine型の左総頚動脈分岐奇形 (Bovine Arch Configuration)に関しては、その発現率はやはり民族の差異により異なり、全人口の 10%程度から、20%程度まで報告されていますが、最新のレポート (What is the true incidence of anomalous bovine left common carotid artery configuration? Ahn SS, et al. Ann Vasc Surg. 2014; 28: 381-5) によれば、何と 35%にも上り、その中の type I (左総頚動脈が Brachiocephalic Arteryと同じ入口部で分岐する)が、78%そして、type II (左総頚動脈が Brachiocephilic arteryから分岐する)が、22%とされています。

僕自身はあまり、CAS (Carotid Artery Stenting: 頸動脈ステント植え込み術)という手技がどうしても好きになれず、これまで行ったのはたったの1例のみです。そんな僕が言っても説得力はありませんが、左内頚動脈狭窄症に対する CASにおいて、この Bovine奇形は技術的に非常にやりにくいのです。通常 CASは経大腿動脈的インターベンションで行われることが多いのですが、Bovine奇形においては、下肢からアプローチすると、ガイディング・カテーテルに強い屈曲を必要とするので、大変なのです。

これに対して、右橈骨動脈あるいは、右肘動脈からアプローチすれば簡単に行けるのでは? などということは少し気の利いた Interventional Cardiologistならば思いつきますよね

この論文では、イタリアのある大学病院で行われた CASの中で、Bovine anomalyに対して、右肘動脈あるいは、右橈骨動脈より行った 60例について検討しています。60例? そんな少ないの? と思うことなかれ、これでも世界最大規模の経験数なのですね。

まあ結果は簡単なもので、1例が経大腿動脈的インターベンションに移行したのみで、他の59例は成功した、ということで、この方法の優位点について検討されています。筆者らは、右上肢から行えば、
  1. 大動脈弓にワイヤーもカテーテルも入れずに手技が行える
  2. 解剖学的にやりやすい
  3. Mo-Maを含め、各種の近位保護ディバイスを用いることができる
  4. そもそも合併症が少ない
  5. 終了後すぐに歩行可能である
といった利点を挙げています。

何故この論文? と言えば、その中の引用文献 19に僕が、何と1999年という昔に publishした結構有名な論文 (Influence of the ratio between radial artery inner diameter and sheath outer diameter on radial artery flow after trans-radial coronary intervention. Saito S, et al. Catheter Cardiovasc Interv. 1999; 46: 173-178.)が引用されているので、少し嬉しくなったのですよ。

それにしても今朝の抄読会で皆が疑問に思ったことは、「何故 Bovineと呼ぶのか?」ということでした。Bovineとは「牛」のことです 牛の角のように見えるから? あるいは、牛の頸動脈がこのような解剖なのかな? インターネットで調べても分かりません どなたかご存知の方がいらっしゃればご教授下さい
Aortic Regurgitation After Transcatheter Aortic Valve Implantation With Balloon- and Self-Expandable Prostheses. Abdel-Wahab M, et al. J Am Coll Cardiol Intv 2014; 7: 284-92.

日本では現在 SAPIEN-EXという balloon-expandable TAVIしか認可されていません そして、CoreValveという self-expandable TAVIは認可待ち、の状態です 果たしてこのどちらのシステムが患者さんにとって良いのか? それは皆が知りたい命題です

この論文ではドイツの2施設でのレジストリで、5年間に合計で400例足らずを解析した結果です balloon-expandableとself-expandableがだいたい半々でした

一年後の生命予後は、どちらのシステムでも大体一緒でありましたが、術後にmild以上の大動脈弁閉鎖不全が残存した例では予後が悪かった、というのが結論です このシリーズの中では、どちらのシステムでmild以上の大動脈弁閉鎖不全が多い、というはっきりした差異は認められませんでした

我々の施設では CoreValveに関しても植え込んだ経験が多数あります 大動脈弁閉鎖不全に関しては、術後よりも長期になると改善するように思われました いったい日本人の患者さんではどうなのか? それについて明らかにするのは我々の使命の一つでしょう
Warfalin Use and the Risk for Stroke and Bleeding in Patients With Atrial Fibrillation Undergoing Dialysis. Shah M, et al. Circulation 2014; 129: 1196-1203.

心房細動においては、一般的に塞栓症予防のために、ワーファリンによる抗凝固療法が必要とされています。また最近ではいわゆる NOAC (Nobel Oral Anti-Coagulation)と呼ばれる納豆も食べられる抗凝固薬も使用されています。但し、弁膜症や機械弁がある場合には NOACの有効性は証明されておらず、特に機械弁の場合には有害とされており、未だにワーファリンが Golden Standardなのですね

しかしながら抗凝固薬を服薬すれば、当然のことながら出血性合併症を伴うリスクも増大します ここいら辺の関係は昔から良く検討されており、現在では簡単なスコアでそのリスクとベネフィットを推定できます (CHADS2 score/HAS-BLED score)

さて慢性血液透析を受けておられる患者さんは一般的に出血性リスクがそうでない患者さんよりも高いのですが、このような患者さんが心房細動となっている場合に、ワーファリンによる抗凝固療法を行うことが良いのか否かについてはこれまで一定の見解はありませんが、日本においては慣例的に抗凝固療法を行わない場合の方が多いようです

この論文ではカナダ・ケベックのデータベースから拾い上げ、これらの患者さんに対してワーファリンによる抗凝固療法を行うリスク・ベネフィットを検討しています

結果は、慢性血液透析を受けていない患者さんではワーファリン使用により脳卒中発症リスクは低下したが、出血性合併症発症リスクも増加する しかし、慢性血液透析患者さんでは脳卒中発症リスクも増加し、出血性合併症発症リスクも増加する、という結果でした このため、慢性血液透析患者さんではたとえ心房細動を合併していたとしても、ワーファリンは投与しない方が良い、という結果でした 何故ワーファリン投与によってかえって脳卒中発症リスクが増加するのか? についてははっきり分かっていませんが、慢性血液透析患者さんの特異な代謝が影響していると推論されています

さて、この論文では、1,626名の慢性血液透析患者さんと、204,210名の非慢性血液透析患者さんで比較解析がされているのですが、こんな三桁も異なる群間比較に意味があるのでしょうか? これではどんなに微細な差異でも統計学的有意差が検出されてしまい、本当は意味の無い独立変数がいかにも意味のある独立変数とみなされてしまいます 僕としては、こんなに差がある母数を比較する時には、「差がある」ことには何の意味も無く、「差が無い」ということのみ証明できるのでは? と考えますが如何でしょうか?

Use of a Lateral Infraclavicular Puncture to Obtain Proximal Venous Access with Occluded Subclavian/Axillary Venous Systems for Cardiac Rhythm Devices. Bernstein NE, et al. PACE 2014; 00: 1-6.

この論文も on-lineでしか未だ見れないもので号番号が決まっていません
ICD/CRT/CRTDなどの普及に伴い、経皮的アプローチルートしての鎖骨下静脈アプローチの重要性は増しています
特に、あらかじめペースメーカーわ植えこまれている患者さんでこれらの治療ディバイスに upgradeする場合には 既に鎖骨下静脈が閉塞していたりして難儀することがあるらしいのです (このような曖昧な言い方しているのは、僕自身 CRT/CRTD/ICDを植え込んだことが無いからです・・・)

僕が初めてペースメーカー植え込み、というものを行ったのは 1977年の頃であり、当時は未だ水銀電池のものもあり、ようやくリチウム電池ペースメーカーが出現してきた頃です 従ってディバイスは巨大であり、電極も無骨なものでした この電極を静脈内に入れるためには、カットダウンで cephalic veinを露出し、そこから挿入していたのです

時代は変わり、ディバイスは小さくなり、電極もしなやかになり、同側の鎖骨下静脈から3本もの電極を入れる時代となりました

さてこの論文は、そんな現代において、閉塞した鎖骨下静脈に対して、著者らが考案した穿刺法を用いれば、安全に再度の穿刺が出来てもう一本電極を挿入できる、そのような提言です

本当にこの方法が正しいか否か、自分では検証できません そんな少し時代から取り残された自分が、ただひたすら「いいなあ~」というのが感想です

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