手術前のPCIは?

Risk of Major Adverse Cardiac Events Following Noncardiac Surgery in Patients With Coronary Stent. Hawn MT, et al. JAMA 2013; 310: 1462-1672.

循環器科がしっかりしている病院において、心臓以外の手術を行う場合には、かならず心電図や病歴でスクリーニングされた後、虚血性心疾患の有無について何らかの詳しい検査が必要に応じて行われます

この時に問題となるのが、もしも冠動脈有意病変が発見された場合、その手術を先に行って良いものか、あるいはPCIやCABGで心臓の状況を改善させてから、その手術を行うべきか? という点です

この問題に関して参考となるのが AHA/ACC 2007 Guidelineです その日本語訳は以下の通りです

術前のCABGあるいはPCIによる冠動脈再潅流の推奨 
Class I 
1. 有意な左冠動脈主幹部の狭窄をもつ安定した狭心症患者で,非心臓手術前に冠動脈再潅流手技
を行うことは有用である.(Level of Evidence: A) 
2. 3枝病変をもつ安定した狭心症患者で,非心臓手術前に冠動脈再潅流手技を行うことは有用で
ある(LVEF<0.50の時生存の利益が大きい).(Level of Evidence: A) 
3. 有意な近位左前下行枝の狭窄があり,LVEF<0.50あるいは非侵襲的ストレス試験で陽性な2
枝病変をもつ安定した狭心症患者で,非心臓手術前に冠動脈再潅流手技を行うことは有用であ
る.(Level of Evidence: A) 
4. 高リスク不安定狭心症患者あるいは非ST上昇心筋梗塞患者では,非心臓手術前に冠動脈再潅
流手技を行うことが推奨される.(Level of Evidence: A) 
5. 急性ST上昇型心筋梗塞患者では,非心臓手術前の冠動脈再潅流手技が推奨される.(Level of 
Evidence: A) 
 
Class IIa 
1.心症状を緩和するためにPCIによる冠動脈再潅流が適当な患者や,待期的非心臓手術を12カ
月以内に必要とする患者では,①バルーン血管形成術あるいは,②ベアメタルステントとその
後の4-6カ月の二重抗血小板療法が望ましい.(Level of Evidence B) 
2. 薬剤溶出ステントを挿入されていて,緊急手術のためチエノピリジン療法を中止しなければな
らない患者では,可能ならばアスピリンを続行し,可能な限り早期にチエノピリジン療法を再
開するのが妥当である.(Level of Evidence: C)
Class IIb 
1. 高リスク虚血患者(例えば,ドブタミン負荷エコー検査で少なくとも5セグメント以上の壁運
動異常)における術前の冠動脈再潅流療法の意義は確立されていない.(Level of Evidence: C) 
2. ドブタミン負荷エコー検査で異常(1から4セグメント)を呈する低リスク虚血患者に対する
術前の冠動脈再潅流療法の意義は確立されていない.(Level of Evidence: B) 
 
Class III 
1. 非心臓手術前に安定した冠動脈疾患患者にルーチンに冠動脈再潅流療法を行うことは推奨さ
れない.(Level of Evidence: B) 
2. チエノピリジン療法あるいはアスピリン療法,あるいは両者の投与を周術期に中止する必要が
ある以下の患者で待期的非心臓手術は推奨されない:ベアメタルステント植え込みが4から6
週間以内に行われている患者,薬剤溶出ステント植え込みが12カ月以内に行われている患者.
(Level of Evidence: B) 
3. 4週間以内にバルーン冠血管形成術を受けた患者に待期的非心臓手術を行うことは推奨され
ない.(Level of Evidence: B)

このガイドラインに書かれていることは、我々の日常診療感覚と全く同じであり、受け入れやすいものだと思います

さて、本日の抄読会論文ですが、2007年当時より薬剤溶出性ステントの使用がさらに一般化さている現在においても、このガイドラインのままで良いのかどうかということに挑んだ意欲的な論文です
対象としたのは、2000年から2010年のアメリカ退役軍人病院 (VA)データベースであり、ここには124,844のステント植え込みが行われ (DES 47.6%, BMS 52.4%)、その中の 28,029人の患者さんがステント植え込み後 24ヶ月以内に何らかの心臓以外の手術が行われました
この中の 1980人が MACEを発症しました このMACEを起こした患者さんについて解析した結果 以下の3つの因子が重要と判明しました

  1. 緊急での非心臓手術 (OR: 4.77)
  2. 心筋梗塞発症から6ヶ月以内の非心臓手術 (OR: 2.63)
  3. 改良した心危険因子が2以上 (OR: 2.13)
さらに興味深いことには、非心臓手術の後に、薬剤溶出性ステントを用いた方が、金属製ステントを使用するよりも、有意にMACEが少く(OR: 0.91)、また二重抗血小板療法休薬しようが継続しようが、MACE発生率には影響しなかったということです

ちなみに改良された心危険因子 (Revised Cardiac Risk Index: rCRI)とは

  • 心不全
  • 脳卒中
  • 心筋梗塞
  • インスリン使用糖尿病
  • 手術CPT code分類でのhigh-risk手術
  • 術前一年以内のクレアチニン 2mg/dL超
の存在で点数付けし、1点: 低リスク、2点: 中等度リスク、3点以上: ハイリスク とするものだそうです

ちなみに、ステント植え込みから手術までのタイミングでは MACE発生率が
  • < 6wk                                    11.6%
  • 6 wk to <  6 mo                      6.4%
  • 6 mo to < 12 mo     4.2%
  • 12 mo to 24 mo      3.5%
ということであり、6週間過ぎた後の MACE発生率にはそれほど大きな差が無かったのです
 

何れにしてもこの論文の結論は、ガイドラインで推奨されている、「金属製ステントの使用」と、「六ヶ月を越えてから手術すべきだ」ということは、改めるべきだ、と提唱しています

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このページは、Dr_Radialist (KAMAKURA & SAPPORO)が2014年4月11日 08:34に書いたブログ記事です。

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