2014年5月アーカイブ

Rapid Endovascular Catheter Core Cooling Combined With Cold Saline as an Adjunct to Percutaneous Coronary Intervention for the Treatment of Acute Myocardial Infarction. The CHILL-MI Trial. Erlinge D, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 63: 1857-65.


心肺停止状態から脳を護るために、低体温療法は良く行われます。これにより代謝を抑制し、保護するのです。心筋の保護に対してもこれが有効か確認するために、この研究では 120名の発症後6時間以内の ST上昇型急性心筋梗塞患者さんを多施設で、低体温療法を行うか行わないかに無作為化し、急性心筋梗塞発症後 4 +/ 2日で施行したMRIにより、心筋壊死領域を測定することにより、その有効性を評価したものです。
低体温療法は、14 Fの introducerを大腿静脈に挿入し、カテーテルを下大静脈に挿入し、その先端は横隔膜レベルに置き、4度の生理的食塩水を 600 - 2,000ml与することにより、行われました。
このような大規模な介入試験でしたが、残念ながら有意な心筋サルベージ改善効果はありませんでした。
A randomized, prospective, intercontinental evaluation of a bioresorbable polymer sirolimus-eluting coronary stent system: the CENTURY II (Clinical Evaluation of New Terumo Drug-Eluting Coronary Stent System in the Treatment of Patients with Coronary Artery Disease) trial. S.SAITO, et al. European Heart Journal Advanced Access.

これは Bioresorbable polymerを用いた SESの治療成績についての論文です 対照群は Xienceですが、Xienceに対する非劣性の証明が主要観察項目として日本とヨーロッパで行われた臨床試験であり、日本国内に対しては治験でした

日本とヨーロッパの現状に合わせ、かつ整合する試験を行うためにたくさんの努力が行われ、日本でも多数の病院の先生方そして患者さんがたにご協力頂き、無事試験が終了し、9ヶ月観察期間において、主要観察項目が証明されました そして、その過程で、日本とヨーロッパにおいてより良いディバイスをより早く安全に有効に患者さんに届ける道が開かれたのです 結果は、EuroPCR Late Breaking Sessionで発表されると同時に、European Heart Journalにも掲載されたのです
Predictors of Reocclusion After Successful Drug-Eluting Stent-Supported Percutaneous Coronary Intervention of Chronic Total Occlusion. Valenti R, et al. J Am Coll Cardiolo 2013; 61: 545-50.

これはイタリアの single centerレジストリの結果です 2003年に開始したもので2011年までの 1,035例の慢性完全閉塞患者がそもそもの母集団ですが、この中で 802例でPCIが成功しました かの中で慢性完全閉塞に対するPCIの成績を、EES出現前と、後に分けて比べたものです

一年間の MACE = 16%とものすごく良い成績でした 血管造影は、82%で行われていましたが、再閉塞は 7.5%のみで、EES後では3.0%という低率でした

また、STARS techniqueについても検討されましたが、 明らかに STARS techniqueを行った方が MACE発症率が高かったのです まあ当たり前ですよね 日本人の術者で STARTなんか使う人いないですもんね

総じて成績良かったのですが、そもそもほとんど男性患者であり、糖尿病が少く、年齢も若いのでそのような良い成績となったものと思います
Transradial Coronary Catheterization and Intervention Across the Whole Spectrum of Allen Test Results. Valgimigli M, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 63: 1833-41.

これはイタリアからの論文ですが、経橈骨動脈的冠動脈インターベンション/経橈骨動脈冠動脈造影に先立って行われることが推奨されてきた Allen試験の不必要性について論じた論文です

もともと、僕は 2000年に既に Kimny Courseにおいて、皆に Allen試験は不必要であることを提唱し、それ以来ヨーロッパでは Allen試験を行わない風潮になってきました もちろん当院においては 1996年頃からそうなのです

これに対して、特にアメリカでは未だに Allen試験を行っています この論文では Allen試験の結果によらず、乳酸産生とか、ハンドグリップ試験において差は認められず、従って Allen試験の結果によらず、安全に橈骨動脈アプローチが可能であることを提唱しています

正直、この関係については、もう我々は新鮮な観点を失っていましたので、「あっ、やられた」という感じです

まあ、しかし、僕としてはこの論文の骨格に対して異議を呈したいと思います そもそも 「アレン試験異常であることが判明している患者さんに対して経橈骨動脈アプローチを行う」ことが、倫理的に許されるのか? ということです 僕はどうしてもこれをクリアできないので、このような研究は行わず、後ろ向きの結果のみでアレン試験は不要である、と主張してきたのです この論文の中では IRBがどうこうとかいうことはあまり論じられていません 何でアメリカの雑誌にこのような論文が通るのか? 全く理解できませんよ

まあ、通してしまえば勝ちでしょうが・・・・
Efficacy and safety of colchicine for treatment of multiple recurrences of pericarditis (CORP-2): a multicentre, double-blind, placebo controlled, randomized trial. Imazio M, et al. Lancet published online March 30, 2014.

僕はあまりお目にかかったことは無いのですが、原因は何であれ、心膜炎を何回も繰り返す患者さんがおられるそうです そう言えば 当科にもおられるとのことです そのような患者さんは現実問題として心嚢水が貯留するために、入院、排液を繰り返さねばなりません

これに対して、これまではアザチオプリンによる免疫抑制、ヒト免疫グロブリンの大量投与、IL-1受容体拮抗薬 (Anakinra)、あるいは他の免疫抑制剤投与が行われたり、場合によっては、外科的に心膜切除を行うことも行われてきました

この論文では、痛風発作に対して古典的には用いられていたコルヒチンを投与して、再発を防ごう、という試みです

240例の該当患者さんを 1:1 に無作為化し、コルヒチンを投与するか、あるいはプラセボを投与するか比較されましたが、18ヶ月までの経過観察において、心膜炎再発率に対する Hazard Ratioをコルヒチン投与群では、プラセボ群に対して 0.46 (95% CI: 0.30 - 0.72)に抑制されました 心配な副作用に関して、両群で有意な差は認められませんでした

うーん 何で高窩がるのか良く分かりませんが、居ずにしても ESC guideline 2004ではコルヒチンが再発性心膜炎に対する一次的治療法として推奨されているようです 今回は、多発再発性心膜炎に対しても有効性が示唆された、ということでした 何だかこんな安価な薬で有効であれば素晴らしいですね
Warfalin, Kidney Dysfunction, and Outcomes Following Acute Myocardial Infarction in Patients With Atrial Fibrillation. Carrero JJ, et al. JAMA 2014; 311: 919-928.

先日 「統計学のマジック」として Circulationの論文を紹介しました そこでの結論は、慢性血液透析を受けている心房細動患者さんに、ワーファリンによる抗凝固療法を行えば、出血性リスクが増加するのみならず、脳卒中発症リスクも増加するので、これらの患者さんに対してはワーファリンを投与すべきでない、というものでした

さて、この JAMAに掲載された論文は、スウェーデンの国家レジストリ (SWEDEHEART)における 2003-2010年の、 24,317人の心房細動を伴う急性心筋梗塞患者であり、急性期に死亡しなかった患者さんで、かつ血清クレアチニン値がはっきりと分かっている患者さんを対象として、腎機能別に層別化しながら、ワーファリンを服薬していたか、いないかで分けてみて、心房細動を伴う急性心筋梗塞患者さんでかつ慢性腎臓病の患者さんに対してワーファリンを投与することがいいのかどうなのか? について検討したものです 観察項目は、退院後一年間の、MACCEおよび、出血性合併症でした

要するに先の、Circulationの論文と近い内容のものですが、結論としては、心房細動を伴う急性心筋梗塞患者さに対して、ワーファリンを投与することによって、出血性合併症を増加させることなく、主要脳・心血管事故を低下させることができ、しかもこれは慢性腎臓病の程度にかかわらず認められる というものでした

しかし、ちょっと待ってよ ここでは急性心筋梗塞と言っているけど、その中で STEMIは全体の 21.5%しかありませんし、PCIを受けているのも 29.7%しかありません さらに、 CHADS2 score >= 2の症例は全体の 78.8%あるにもかかわらず、ワーファリンが投与されているのは、全体の 21.8%しかありません また、eGFR <= 15 mL/min/1.73m2 という慢性血液透析対象となる患者さんはたった 2.0%しかありません

ちなみに、ワーファリン投与群の 4,332名 (81.9%)では CHADS2 score >= 2でしたが、ワーファリンを投与していない患者さんにおいても 14,829名 (77.9%)が CHADS2 score >=2 だったのです これから言えることは、ワーファリンを投与するあるいはしない、ということに関して一定のルールは無く、主治医のバイアスが入っていると思われます 当然のことながら、見た感じで「この患者さんは出血起こりそうだな」と主治医が感じれば、ワーファリンを投与していないものと思われます

ということで、僕はこの論文の結論は、先日のTAVIに関する CHOICE試験の結果、そうこれも JAMAに掲載されたのですよね、それと同じように信用しません
Carotid Artery Stenting According to the "Tailored CAS" Algorithm Performed in the Very Elderly Patients: The Thirty Day Outcome. Dzierwa K, et al. Cathet Cardiovasc. Interv 2013; 82: 681-688.

CAS (頸動脈ステント植え込み術)は内頚動脈狭窄症による虚血性脳卒中に対する治療法として、あるいは予防法として確立しています この分野においても、心臓領域でそうであるように、外科的治療法(内膜剥離術)と、インターベンション治療法(ステント植え込み術)が互いに パイを奪い合っている側面もあります

この論文は、ポーランドの CAS high volume centerにおいての報告です

CASは高齢者 (75歳以上)では術中・術後の虚血性脳卒中合併症が多く起こることが分かっていますが、手技中のこれらの合併症を予防するために、さまざまな術中末梢保護ディバイスが使用されたり、あるいは Closed Cell Stentが用いられたりしています この論文においては、high-volume centerにおいて、75歳以上の症例に関して、積極的にこれらのディバイスを用いることにより、虚血性脳卒中合併が減らせるか否か、について検討しました

結論から言えば、それらの仕立て屋さんのような、病状に併せて微妙にディバイスを変更しながらCASを行っても、75歳以上の患者さんでは多くの虚血性脳卒中合併症が起こったのです

この結果、筆者達は、心臓における Heart Teamのように、Vascular Teamによってこのような high-risk群には対処すべきだ、ということを提唱しています
Prevalence and Impact of Preoperative Moderate/Severe Tricuspid Regurgitation on Patients Undergoing Transcatheter Aortic Valve Replacement. Barbanti M, et al. Cathet Cardiovasc Interv 2014; **:**-**.

この論文は、北米随一のTAVI施設である、Vancouverにある St. Paul病院からの単施設経験です
TAVIの長期予後に影響を与える因子として、従来左室駆出率や、僧帽弁閉鎖不全の存在が言われていますが、この論文では術前の三尖弁閉鎖不全の影響について調べています

  1. TAVIを受ける症例の 15%で moderate/severe TRが認められた
  2. moderate/severe TRを伴う症例では、死亡率が二倍に増加する
  3. しかしながら、左室駆出率低下が死亡率に影響を与える程度と比べると無歯できるものである
というのが結論です

問題点としては、経胸壁心エコーで、TR評価を行うのですが、論文中にもあるように、その程度評価は必ずしも正確では無い、ということでしょう
Feasibility and Safety of Uninterrupted RIvaroxaban for Periprocedural Anticoagulation in Patients Undergoing Radiofrequency Ablation for Atrial Fibrillation. Lakkireddy D, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 63: 982-8.

心房細動に対するカテーテル・アブレーションに際して、それまで服薬していた抗凝固薬を中断するか否か? というのは現実的に大きな問題です。心房細動による塞栓症予防のためには、CHADS2 scoreや HAS-BLED scoreに則って、ワーファリンあるいは、NOACによる抗凝固療法を行うべきとされています。

これらの抗凝固療法継続しながら、カテーテル・アブレーションを行えば、手技に伴って穿刺部出血性合併症や、まれに心タンポナーデを起こした時に、それを止めることができるかどうか? まあワーファリンであれば、拮抗薬を投与できるけど、NOACであれば、現在未だ拮抗薬は存在しませんので、余計迷うことになります。さりとて、抗凝固薬を完全に止めれば、その間の塞栓症発症リスクが出てきます。

この研究では、何れにしても抗凝固療法継続のままで、それがワーファリンによる場合と、NOACの一つである Rivaroxaban (イグザレルト)によるものとどちらが優れているか? という点を比較しました。結論的には、イグザレルト継続によるカテーテル・アブレーションは、ワーファリン継続によるカテーテル・アブレーションと比較して安全で有効である、というものでした。
Permanent Leadless Cardiac Pacing: Results of the LEADLESS Trial. Reddy VY, et al. Circulation 2014; 129: 1466-1471.

さてさてこのようなうーん何というか、奇異なものが Circulationに掲載される、というのがまずは驚きです これは、LCP (Leadless Cardiac Pacemaker; Nanostim Inc, Sunnyvale CA)という右心心内膜側心筋に直接 screw inして、本体が右室から右心房にかけて置かれる VVI pacing deviceです

このペースメーカーを 33例に植え込んでその 90日までの成績を出したものです

まあ、それなりの成功率ですが、わざわざこんなことせねばならないのか? そのように思います もちろんペースメーカーの事故で一番多いのは電極リードの欠陥に由来するものであり、電極リードを完全に排除したこのシステムではそのような事故は起こるべくもありません しかし、別の事故が起こりえると思います

まあ論文として掲載されたのだからそれで良いのかも知れません

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