FH (家族性高脂血症)の方々に対してはいいかも

Effect of an RNA interference drug on the synthesis of pro protein convertase subtilisin/kexin type 9 (PCSK9) and the concentration of serum LDL cholesterol in healthy volunteers: a randomized, single-blind, placebo-controlled, phase 1 trial. Fitzgerald K, et al. Lancet 2014; 383: 60-68.

この論文もまたまた basic medical scienceから遠ざかっている我々には理解困難な論文です これまでFH (Familial Hypercholesterolemia: 家族性高脂血症)の患者さんの原因遺伝子変異としては、LDL receptorの変異や、Apolipoprotein B遺伝子変異がそのメカニズムとして有名でした しかし、PCSK9というのも関与していることが最近提唱されているのです PCSK9は、肝細胞表面のLDL receptorと結合し、肝細胞内に LDL receptorを取り込み、そのまま肝細胞内のリソゾームでLDL receptroを分解します この結果、血中のLDLは肝細胞で分解されなくなり、結果的に血中LDL cholesterolが上昇するのです 
遺伝子変異により、PCSK9が機能しなくなれば、肝細胞表面のPCSK9とLDL receptorが結合せず、その結果、肝細胞表面の LDL receptorは多く発現するので、どんどん肝細胞内にLDLを血中から取り込み、この結果、血中LDLが低下し、虚血性心疾患が低下します
従って、人為的に PCSK9の働きを低下させれば、同様に LDL値が低下する筈です

ここでは、RNA interferenceというノーベル賞をとった方法で PCSK9の産生を低下させる方法論の試験が健常人を対象に行われ、優子であった、という報告です 何でもこの方法は、PCSK9を作成する messenger RNAと相補的な RNAを合成し、それを微小脂肪カプセル内に封入し、注射で投与すれば、肝細胞内に取り込まれ、PCSK9 messenger RNAからの蛋白質合成 つまり PCSK9産生をブロックする そのような仕掛けです

難しいですねえ 僕は若いころ生化学分野の教科書や論文を読み、その内容から、「ああ なんて論理的な素晴らしい世界」と思いました そして、大阪大学医学部基礎講座配属の時には進んで 栄養学教室に入り、三ヶ月間 ヒトからの Pyruvate Kinase MM型結晶の精製に取り組みました これは大変な作業であり、それこそ泥作業だったのです それで、「ああ生化学の真実はこうなんだ 泥臭い作業の結果なんだ 見てくれとは全然違うんだ」ということを実感し、それから生化学者になる夢を捨てました

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このページは、Dr_Radialist (KAMAKURA & SAPPORO)が2014年8月19日 08:49に書いたブログ記事です。

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