DAPT(二重抗血小板療法)は一年後も必要か?

Dual-antiplatelet treatment beyond 1 year after drug-eluting sent implantation (ARCTIC-Interruption): a randomized trial. Collet JP, et al. Lancet published online July 15, 2014.

現在ヨーロッパやアメリカでのガイドラインでは、薬剤溶出性ステント植え込み後の二重抗血小板療法期間は、通常一年間と言われています これに対して、一年間以上継続した方が良いのでは? とか あるいは特に日本国内ではダラダラと何年間も二重抗血小板療法が継続されることがあります 特に日本人の患者さんは服薬遵守率が欧米と比較して良い、と言われていますので、一年間以上継続の是非というのは大きな問題となります

この論文では、薬剤溶出性ステント植え込み後、一年間が経過した患者さをその時点で二重抗血小板療法継続と、非継続とに無作為化して、その後の経過を追ったものです

対象となったのは、2011/01/04から 2012/03/03の間に無作為化された患者さんで、二重抗血小板療法中止群 624例と、継続群 635例です これに対して、無作為化後 17ヶ月前後の追跡が行われました ITTで評価した主要評価項目である全死亡、心筋梗塞、脳梗塞や一過性脳虚血性発作、再血行再建術、ステント血栓症は、両群とも 4%の発生率であり、同等でしたが、主要安全性評価項目であるSTEEPLE主要出血性事故(この定義については後述)発症率は、継続群 1%、中止群 <0.5% (HR = 0.15, p = 0.073)と継続群で多く、また、STEEPLE主要および非主要出血性事故は、継続群 2%、中止群1% (HR = 0.26, p = 0.04)と継続群で多く認められました

この結果を受けて、薬剤溶出性ステント植え込み後、一年間心事故が無かった患者さんに対して、二重抗血小板療法期間を一年間以上継続することには、明らかな利益は無い、と主張しています

さて、STEEPLE出血とは何でしょうか?
これは低分子ヘパリンである EnoxapainをPCIにおいて使用することの有効性を評価した試験である Montalescot G, et al. Enoxaparin versus unfractional heparin in elective percutaneous coronary intervention. N Engl J Med 2006; 355: 1006-17. において用いられた定義であり、"Safety and Efficacy of Enoxaparin in Percutaneous Coronary Intervention Patients, an International Randomized Eval" の頭文字をとったものだと思います (確信無し!!)
ちなみに、ここより引用すれば

●大出血
致死的出血 後腹膜,頭蓋内,眼内出血 特別な治療を要する血行動態の悪化を引き起こす出血 止血または出血のコントロールのためにインターベンション(外科的/内視鏡的)または閉鎖空間の減圧を要する出血 濃厚赤血球または全血1単位以上の輸血を要する臨床的に明白な出血 ヘモグロビン3g/dL以上の低下をもたらす臨床的に明白な出血(ヘモグロビン値不明の場合は,10%以上のヘマトクリット値の低下)
 ●小出血
外傷に関連しない肉眼的血尿(例:器具による) 長引く,繰り返される,栓もしくはインターベンションを要する鼻出血 消化管出血 喀血 結膜下出血 >5cmの血腫,または入院/入院期間の延長を要する出血 ヘモグロビン2-3g/dLの低下をもたらす臨床的に明白な出血 硫酸プロタミン投与を要するコントロール不良の出血  

大出血基準の1つ以上に該当する場合は大出血とする
大出血基準には合致せず,小出血基準の1つ以上に該当する場合は小出血とする

さて、この中で面白い記述があります 実は二重抗血小板療法継続群でも 30%の人が実際には二重抗血小板療法を止めていたのです まあそれはそれとして、実は薬剤溶出性ステント植え込み後最初の一年間の二重抗血小板療法中の人の全例に対して VerifyNowによる血小板凝集能測定が行われてました その結果は、二重抗血小板療法一年以上継続あるいは中止に関する無作為化には影響しなかったそうですが、実は血小板凝集能が高かった症例では、死亡率が高かったそうです (3% vs 1%; HR 5.07, p = 0.005) さらに、血小板凝集能と、チエノピリジンの中止あるいは継続との関連は、主要評価項目などとの間には関連が認められなかったそうです このことは、割りとさらりと書かれています

これはどういうことでしょうか? 日本人では特に Plavixでは遺伝子多型により実はあまり効かない症例があり、その頻度は実は 50%近くにも達するということが判明していますが、実はこの試験が行われた欧米人でも結構存在する、ということではないでしょうか そして、そのような患者さんに関しては薬剤溶出性ステント植え込み後のリスクが多いので、他の抗血小板薬 たとえば Prasugrelを投与すべきではないのでしょうか? ちなみの本試験で用いられた チエノピリジンは 90%の症例で Plavixでした

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このページは、Dr_Radialist (KAMAKURA & SAPPORO)が2014年9月 2日 13:31に書いたブログ記事です。

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