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Periprocedural Stroke and Bleeding Complications in Patients Undergoing Catheter Ablation of Atrial Fibrillation With Different Anticoagulation Management: Results from COMPARE Randomized Trial. Biase LD, et al. Circulation 2014; 129: 2638-2644.

心房細動に対するカテーテル・アブレーションは既に標準的治療法の一つとなっており、日本では健康保険診療下で日常的に行われています 心房細動患者さんに対しては CHADS2 scoreにもよりますが、ワーファリンないしNOACによる抗凝固療法が脳梗塞予防のために行われていますが、カテーテル・アブレーション手技中にはヘパリンが用いられますので、その時には経口抗凝固薬から一時的に切り替えねばなりません ところが、この時に、梗塞や場合によっては出血といった合併症が起こるのです

そこで、経口薬としてワーファリンか NOACかというのが議論になっていました ワーファリンの利点は Vitamin K投与により reverseが簡単に行えるのと、抗凝固能を簡単にモニターできる点でしょうか さて、この論旨に則ってワーファリンによる抗凝固療法をカテーテル・アブレーション前に行っていた場合、手技に移行する時に、ワーファリンを止めるのか、止めないで継続して手技に移るのか? それが現実的に問題となります この論文ではここに焦点を当てて臨床試験が組み立てられました

この論文では 1,584名のCHADS2 score >= 1の患者さんを、ワーファリン継続群と ワーファリン一次停止群に 1:1で無作為化して open-labelで行われました もちろん blindは不可能ですねよ だって INRとか測定せねばならないので服薬しているかいないかは自明ですから・・

結果は驚くべきであり、ワーファリン継続群では、2例 (0.25%)でしか脳梗塞が発症しなかったにもかかわらず、ワーファリン一次停止群では、39例 (5.0%)で何らかの脳梗塞が発症したのです これはももちろん掛率(OR) = 13 (3.1 - 55.6; p<0.001)という賭けにもならない程の確かさで、ワーファリン継続群の勝ちとなりました

というわけで現在のところ、多くの医師が、ワーファリンが効いた状態で、カテーテル・アブレーションなどの侵襲的手技を行うのをためらうにもかかわらず (言っておきますが、僕はためらいません だって Radialistだもん)、カテーテル・アブレーションに際してワーファリンを停止することは勧められませんね 

なお筆者達は、この結果は他の NOACに外挿することはできない、と言っています
Efficacy and Safety of Rivaroxaban Compared With Warfarin Among Elderly Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation in the Rivaroxaban Once Daily, Oral, Direct Factor Xa Inhibition Compared With Vitamin K  Antagonism for Prevention of Stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation (ROCKET AF). Halperin JL, et al. on behalf of the ROCKET AF Steering Committee and Investigators. Circulation 2014; 130: 138-146.

NOACの一つである Rivaroxaban (日本での商品名 イグザレルト)は、腎機能低下例でも投与でき、また一日一回投与でも良いなど、NOACとして使いやすい特徴があります さらに、この Rivaroxabanの有効性をワーファリンに比して検証した大規模試験 ROCKET AFにより、Warfalinに比して、Rivaroxabanは心房細動患者さんでの脳梗塞予防効果において、劣っておらず、しかも、脳出血の合併症が有意に少なかった点から、その有効性が期待されています
また、日本人においても、国内第三相試験において、ワーファリンに対する非劣性が示された (どうも統計学的には有意な非劣性ではない?) ことから、日本人患者さんでも有効性が期待されています

特に、日本は世界の中でもダントツに急速な高齢化が進み、高齢化と共に心房細動患者さんが増加していますので、脳梗塞の予防と、かつ脳出血の増加抑制というのは重要な要求事項であります

さて、この論文では、 ROCKET AF患者群を 75歳以上の 6,229例と、75歳未満の 8,035例で、ワーファリンに対する Rivaroxabanの有効性を再解析したものです 正直論文に記載されていることは複雑怪奇であり、読んでいると誰しも眠くなり、あっ、この論文は新しい睡眠導入剤開発物語なのかな? と思ってしまいます

そういう訳で、筆者の言うとおりのことしか記載する元気はありません それによれば、75歳以上の高齢者における非弁膜症性心房細動に対しても、Rivaroxabanは、INRをきちんとコントロールしたワーファリンと同等の脳梗塞予防効果を示し、しかも脳出血の危険性は少なかった というものでした

これは素晴らしい結果であり、積極的に Rivaroxabanを使用したいと誰しも思います 僕もそうです というか、このような論文が出ている状況では、患者さんに Rivaroxabanでなく、ワーファリンを投与し続けることは罪でしょう

とは言っても、日本の急速な高齢化は色々な社会的別の問題をもたらします 何しろ、NOACはワーファリンに比して p<0.00000000000000000000000000001などという天文学的数字でもって有意に高額なのです さすれば、そのような高額の薬剤を収入の途絶えた高齢者が支払うことができるのか? これはある意味選別化とか、色々な問題につながるのかも知れません 時限爆弾のように社会に影響をもたらすのかも知れません
Prospective Randomized Evaluation of the Watchman Left Atrial Appendage Closure Device in Patients With Atrial Fibrillation Versus Long-Term Warfarin Therapy: The PREVAIL Trial. Holmes Jr DR, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 64: 1-12.

心房細動に伴う塞栓予防に対しては、これまでワーファリンあるいは NOAC (Novel Oral Anti-Coagulation)が有効とされており、これが標準的治療法として確立しています これに対して、deviceにより塞栓予防を行おうとする試みが行われてきましたが、その代表が本論文で扱われている Watchman Deviceです このDeviceは心房中隔穿刺により、左心耳を閉鎖するものです 次に行われているものが、LARIATと呼ばれるものであり、経皮的に心嚢穿刺を行い、心房中隔より左心耳入り口に挿入した磁石をガイドに、心外膜側から左心耳を縫縮してしまう、というものです

Watchman deviceの有効性を検討するために、アメリカで行われた PROTECT AF試験では、このディバイスが心房細動に伴う脳塞栓予防に対して、ワーファリンによる内科的治療法に比して、劣らないことが示されましたが、その一方で手技に伴う合併症が問題となりました

この論文で結果が示された PREVAIL試験では、非弁膜症性心房細動患者さんで、CHADS2 score >= 2あるいは、 CHADS2 score = 1でかつ、他の危険因子がある患者さん 269名に対して、Watchmanで治療が行われ、2:1の 138名に対しては標準的ワーファリン治療が行われ、その長期成績が検討されました

18ヶ月の心事故発生率は Watchman 0.064, Warfalin 0.063と同等であり、非劣性は証明されませんでした 心配された手技に伴う合併症は Watchman群の 2.2%で発生しましたが、これは PROTECT AF試験での合併症発生率よりも有意に低値でした 

結果的には、Watchmanによる左心耳(LAA; Left Atrial Appendage)閉鎖術は、ワーファリンと比べて何ら良い点を示せませんでした この結果であれば、誰から見ても痛い思いをするよりも、薬を飲んでいたほうが良いでしょう

ただ、Discussionでも論じられているように、この試験ではワーファリン群で異様に脳梗塞発症率が低値だったのです 例えば NOAC vs Warfalinで行われた大規模臨床試験である ARISTOTLE, ROCKEF AF, RE-LYでは何れもワーファリン群での脳梗塞発症率は 1.7人年であったのに、この試験ではたったの 0.7だったのです これは、ある意味きちんとワーファリンで抗凝固をコントロールすれば、Watchmanに劣らない脳梗塞予防効果が獲得できる、ということになりますよね
Atrial Fibrillation in Patients with Cryptogenic Stroke. Gladstone DJ, et al. N Engl J Med 2014; 370: 2467-77.

虚血性脳梗塞には何らかの原因があります その中で主要なものは、アテローム性脳梗塞、ラクナ脳梗塞と、心原性脳梗塞です アテローム性脳梗塞とは、内頚動脈などが動脈硬化で細くなり、あるいは閉塞するために起こってくるものですが、ラクナ脳梗塞は、もっと細い脳動脈の動脈硬化で起こります 一方心原性脳梗塞は、心臓に由来する血栓が脳の動脈につまって起こるものです
さて、実際の虚血性脳梗塞の患者さんで原因を精査すると、6名の中の1名は明らかに心房細動による脳塞栓でありますが、4名の中の1名は原因不明 (= Cryptogenic Stroke)なのだそうです
問題は心房細動による脳梗塞であれば、その後の抗凝固療法が二次予防には有効であるので、抗凝固療法を行う必要がある、というところなのです

それでは、この原因不明の脳梗塞の中に、実は心房細動か隠れていて、なかなか見つけられていないのでは? というのがこの研究の仮説です

この研究では、特殊な器具を内蔵したベルトを胸に巻いてもらい、何らかの心電図上R-R間隔変動が起これば、その後の2.5分を自動的に記録する装置を患者さんに装着し、30日間観察したものと、通常の24時間ホルターしか行わない患者さんを比較して、隠れた心房細動が発見される可能性が上昇するか否かを調べました

結論だけ記しますと、55歳以上の、既に原因不明の (Cryptogenic)脳卒中あるいは一過性脳虚血性発作を起こした患者さんでは、発作性心房細動が多く認められ、そのような患者さんに対して、30日間モニターを行えば、24時間ホルター心電図で検索するよりも二倍の頻度で発作性心房細動を発見でき、結果的に5から6名に一人の潜在性発作性心房細動患者さんを発見できる、というものでした

でも、そんなややこしいことしないでも、原因不明の脳卒中であり、しかも抗凝固療法に禁忌でなければ、抗凝固療法を開始すればいいのに・・・ とはいかないのでしょうかね
Impact of Increased Orifice Size and Decreased Flow Velocity of Left Atrial Appendage on Stroke in Nonvalvular Atrial Fibrillation. Lee JM, et al. Am J Cardiol 2014; 11: 963-969.

心房細動患者さんは心原性塞栓症による脳梗塞に陥る危険があります この危険性は、合併する要因により増加することが知られていて、その危険性を段階づける簡便な方法として、 CHADS2 score (うっ血性心不全、高血圧、年齢 75歳超、糖尿病があれば、1点ずつ加点、過去に脳卒中や一過性脳虚血性発作があれば、2点加点する)とか、CHA2DS2-VASc score (うっ血性心不全、高血圧症、年齢 75歳超x2、糖尿病、過去の脳卒中x2、末梢血管障害、年齢 65歳超、女性を加点)とかが提唱されています

この論文では、これらのスコアに加え、左心耳入口部の大きさや、左心耳内の流速により脳卒中発生頻度が増加するのでは? という仮説を検証するために、脳卒中を起こした 67例と、脳卒中を起こしていない 151名をCTと経食道心エコーで調べ解析しました

結論は、左心耳内血流速度が遅い症例や、左心耳入口部が大きい症例で有意に脳卒中発生頻度が多かった、というものです

しかしながら、結果的には脳卒中が起こる/起こらない を決定論的に予測できるものではありませんので、臨床的にどの程度の意味があるかは疑問です
Warfalin, Kidney Dysfunction, and Outcomes Following Acute Myocardial Infarction in Patients With Atrial Fibrillation. Carrero JJ, et al. JAMA 2014; 311: 919-928.

先日 「統計学のマジック」として Circulationの論文を紹介しました そこでの結論は、慢性血液透析を受けている心房細動患者さんに、ワーファリンによる抗凝固療法を行えば、出血性リスクが増加するのみならず、脳卒中発症リスクも増加するので、これらの患者さんに対してはワーファリンを投与すべきでない、というものでした

さて、この JAMAに掲載された論文は、スウェーデンの国家レジストリ (SWEDEHEART)における 2003-2010年の、 24,317人の心房細動を伴う急性心筋梗塞患者であり、急性期に死亡しなかった患者さんで、かつ血清クレアチニン値がはっきりと分かっている患者さんを対象として、腎機能別に層別化しながら、ワーファリンを服薬していたか、いないかで分けてみて、心房細動を伴う急性心筋梗塞患者さんでかつ慢性腎臓病の患者さんに対してワーファリンを投与することがいいのかどうなのか? について検討したものです 観察項目は、退院後一年間の、MACCEおよび、出血性合併症でした

要するに先の、Circulationの論文と近い内容のものですが、結論としては、心房細動を伴う急性心筋梗塞患者さに対して、ワーファリンを投与することによって、出血性合併症を増加させることなく、主要脳・心血管事故を低下させることができ、しかもこれは慢性腎臓病の程度にかかわらず認められる というものでした

しかし、ちょっと待ってよ ここでは急性心筋梗塞と言っているけど、その中で STEMIは全体の 21.5%しかありませんし、PCIを受けているのも 29.7%しかありません さらに、 CHADS2 score >= 2の症例は全体の 78.8%あるにもかかわらず、ワーファリンが投与されているのは、全体の 21.8%しかありません また、eGFR <= 15 mL/min/1.73m2 という慢性血液透析対象となる患者さんはたった 2.0%しかありません

ちなみに、ワーファリン投与群の 4,332名 (81.9%)では CHADS2 score >= 2でしたが、ワーファリンを投与していない患者さんにおいても 14,829名 (77.9%)が CHADS2 score >=2 だったのです これから言えることは、ワーファリンを投与するあるいはしない、ということに関して一定のルールは無く、主治医のバイアスが入っていると思われます 当然のことながら、見た感じで「この患者さんは出血起こりそうだな」と主治医が感じれば、ワーファリンを投与していないものと思われます

ということで、僕はこの論文の結論は、先日のTAVIに関する CHOICE試験の結果、そうこれも JAMAに掲載されたのですよね、それと同じように信用しません
Feasibility and Safety of Uninterrupted RIvaroxaban for Periprocedural Anticoagulation in Patients Undergoing Radiofrequency Ablation for Atrial Fibrillation. Lakkireddy D, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 63: 982-8.

心房細動に対するカテーテル・アブレーションに際して、それまで服薬していた抗凝固薬を中断するか否か? というのは現実的に大きな問題です。心房細動による塞栓症予防のためには、CHADS2 scoreや HAS-BLED scoreに則って、ワーファリンあるいは、NOACによる抗凝固療法を行うべきとされています。

これらの抗凝固療法継続しながら、カテーテル・アブレーションを行えば、手技に伴って穿刺部出血性合併症や、まれに心タンポナーデを起こした時に、それを止めることができるかどうか? まあワーファリンであれば、拮抗薬を投与できるけど、NOACであれば、現在未だ拮抗薬は存在しませんので、余計迷うことになります。さりとて、抗凝固薬を完全に止めれば、その間の塞栓症発症リスクが出てきます。

この研究では、何れにしても抗凝固療法継続のままで、それがワーファリンによる場合と、NOACの一つである Rivaroxaban (イグザレルト)によるものとどちらが優れているか? という点を比較しました。結論的には、イグザレルト継続によるカテーテル・アブレーションは、ワーファリン継続によるカテーテル・アブレーションと比較して安全で有効である、というものでした。
Warfalin Use and the Risk for Stroke and Bleeding in Patients With Atrial Fibrillation Undergoing Dialysis. Shah M, et al. Circulation 2014; 129: 1196-1203.

心房細動においては、一般的に塞栓症予防のために、ワーファリンによる抗凝固療法が必要とされています。また最近ではいわゆる NOAC (Nobel Oral Anti-Coagulation)と呼ばれる納豆も食べられる抗凝固薬も使用されています。但し、弁膜症や機械弁がある場合には NOACの有効性は証明されておらず、特に機械弁の場合には有害とされており、未だにワーファリンが Golden Standardなのですね

しかしながら抗凝固薬を服薬すれば、当然のことながら出血性合併症を伴うリスクも増大します ここいら辺の関係は昔から良く検討されており、現在では簡単なスコアでそのリスクとベネフィットを推定できます (CHADS2 score/HAS-BLED score)

さて慢性血液透析を受けておられる患者さんは一般的に出血性リスクがそうでない患者さんよりも高いのですが、このような患者さんが心房細動となっている場合に、ワーファリンによる抗凝固療法を行うことが良いのか否かについてはこれまで一定の見解はありませんが、日本においては慣例的に抗凝固療法を行わない場合の方が多いようです

この論文ではカナダ・ケベックのデータベースから拾い上げ、これらの患者さんに対してワーファリンによる抗凝固療法を行うリスク・ベネフィットを検討しています

結果は、慢性血液透析を受けていない患者さんではワーファリン使用により脳卒中発症リスクは低下したが、出血性合併症発症リスクも増加する しかし、慢性血液透析患者さんでは脳卒中発症リスクも増加し、出血性合併症発症リスクも増加する、という結果でした このため、慢性血液透析患者さんではたとえ心房細動を合併していたとしても、ワーファリンは投与しない方が良い、という結果でした 何故ワーファリン投与によってかえって脳卒中発症リスクが増加するのか? についてははっきり分かっていませんが、慢性血液透析患者さんの特異な代謝が影響していると推論されています

さて、この論文では、1,626名の慢性血液透析患者さんと、204,210名の非慢性血液透析患者さんで比較解析がされているのですが、こんな三桁も異なる群間比較に意味があるのでしょうか? これではどんなに微細な差異でも統計学的有意差が検出されてしまい、本当は意味の無い独立変数がいかにも意味のある独立変数とみなされてしまいます 僕としては、こんなに差がある母数を比較する時には、「差がある」ことには何の意味も無く、「差が無い」ということのみ証明できるのでは? と考えますが如何でしょうか?

Warfarin, Kidney Dysfunction, and Outcomes Following Acute Myocardial Infarction in Patients With Atrial Fibrillation. Carrero JJ, et al,. JAMA 2014; 311: 919-928.


これまで心房細動を伴った急性心筋梗塞患者さんにおいて抗凝固療法を行うかどうかは、腎機能に注意して行う必要がある、とも言われてきました 腎機能低下例では抗凝固療法によるメリットよりも出血性合併症発生のリスクの方が大きいため、CKD (慢性腎臓病)があれば、例外的にワーファリンを投与しないほうが良い、とも言われてきました

本論文では、スウェーデンでの 2003年から2010年までに登録された、24,317例の心房細動を伴った急性心筋梗塞患者さんという前向きコホートに対して、腎機能との関係で一年後の予後が調査されました この中で21.8%の方がワーファリンを退院時に服薬していました

スウェーデンでは全ての入院歴は国家で管理され、データベースに登録されています その中からあの有名な SCCAR Registryも構築されているのです

結果はシンプルで、全ての腎機能において、ワーファリン投与群の方が一年後予後が良かった、というものでした

ただ、この結果を単純に日本人においても当てはめて良いか否かは疑問です というのも琉球大学の井関先生の論文にあるように、日本人透析患者さんでは脳出血が死因として大きな問題だからです
Use of clopidogrel with or without aspirin in patients taking oral anticoagulant therapy and undergoing percutaneous coronary intervention: an open-label, randomized, controlled trial. Dewilde W. et al,. Lancet 2013; 381: 1107-15.


経皮的冠動脈インターベンションにより冠動脈ステント植え込みする患者さんの中には、心房細動のため、あるいは人工弁を植え込んでいたり、あるいは左室内血栓のために、ビタミンL拮抗薬(VKA)であるワーファリン投与による抗凝固療法を受けておられる患者さんが少なからずおられます このような患者さんに薬剤溶出性ステントなどを植える時には、その標準的併用療法である二重抗血小板療法 (DAPT) を続けるか否かが問題となります

何故ならば二重抗血小板療法をむやみに続けることは、その後の脳内出血などの重篤な出血性合併症を起こす可能性が高くなります さらには、アスピリン投与により、胃からの出血のリスクも高まります

しかしながら現在の各種学会(日本国内のみならずヨーロッパ、アメリカなど)のガイドラインでは、未だにこの点に関しては二重抗血小板療法継続のままとなっているようです

この論文では前向きに二重抗血小板療法群と、Clopidogrel群を無作為化して、PROBE法による解析が行われました 579人の患者さんが、279例のClopidogrel + VKA (二重療法)、そして 284例の Aspirin + Clopidogrel + VKA (三重療法)の2群に無作為化され、主要評価項目としては経皮的冠動脈インターベンション後1年間の出血性合併症と定められました もちろん出血といっても穿刺部からの軽度出血から、輸血や外科的修復を要する大出血や、致命的な脳内出血などの重篤な出血までありますが、今回用いられたのは全てをひっくるめた出血性合併症でした

結果としては、一年間で、二重療法群では 19.4%、三重療法群では 44.4%の症例で出血性合併症が発生し、これは当然のことながら p<0.0001であり、二重療法とすれば、Hazard Ration 0.36で出血性合併症発生が少なかったのです しかし、重篤な出血に限定すれば差は認められませんでした

そして、副次評価項目であった死亡、心筋梗塞、脳卒中、再血行再建術そしてステント血栓症に関しては、二重療法群で 11.1%、三重療法群で 17.6%と、これも二重療法群の方が HR 0.60, p=0.025と若干優れていました

そして、結論としては、ワーファリン投与患者さんに対しては、二重療法の方が圧倒的に少ない出血性合併症発症率であり、アスピリンを投与しないことによってステント血栓症が増加することは無かった というものでした

なお、この研究はOpen-sourceのプロジェクトである Rを統計解析に用いています

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