CKD (慢性腎臓病)の最近のブログ記事

Warfalin Use and the Risk for Stroke and Bleeding in Patients With Atrial Fibrillation Undergoing Dialysis. Shah M, et al. Circulation 2014; 129: 1196-1203.

心房細動においては、一般的に塞栓症予防のために、ワーファリンによる抗凝固療法が必要とされています。また最近ではいわゆる NOAC (Nobel Oral Anti-Coagulation)と呼ばれる納豆も食べられる抗凝固薬も使用されています。但し、弁膜症や機械弁がある場合には NOACの有効性は証明されておらず、特に機械弁の場合には有害とされており、未だにワーファリンが Golden Standardなのですね

しかしながら抗凝固薬を服薬すれば、当然のことながら出血性合併症を伴うリスクも増大します ここいら辺の関係は昔から良く検討されており、現在では簡単なスコアでそのリスクとベネフィットを推定できます (CHADS2 score/HAS-BLED score)

さて慢性血液透析を受けておられる患者さんは一般的に出血性リスクがそうでない患者さんよりも高いのですが、このような患者さんが心房細動となっている場合に、ワーファリンによる抗凝固療法を行うことが良いのか否かについてはこれまで一定の見解はありませんが、日本においては慣例的に抗凝固療法を行わない場合の方が多いようです

この論文ではカナダ・ケベックのデータベースから拾い上げ、これらの患者さんに対してワーファリンによる抗凝固療法を行うリスク・ベネフィットを検討しています

結果は、慢性血液透析を受けていない患者さんではワーファリン使用により脳卒中発症リスクは低下したが、出血性合併症発症リスクも増加する しかし、慢性血液透析患者さんでは脳卒中発症リスクも増加し、出血性合併症発症リスクも増加する、という結果でした このため、慢性血液透析患者さんではたとえ心房細動を合併していたとしても、ワーファリンは投与しない方が良い、という結果でした 何故ワーファリン投与によってかえって脳卒中発症リスクが増加するのか? についてははっきり分かっていませんが、慢性血液透析患者さんの特異な代謝が影響していると推論されています

さて、この論文では、1,626名の慢性血液透析患者さんと、204,210名の非慢性血液透析患者さんで比較解析がされているのですが、こんな三桁も異なる群間比較に意味があるのでしょうか? これではどんなに微細な差異でも統計学的有意差が検出されてしまい、本当は意味の無い独立変数がいかにも意味のある独立変数とみなされてしまいます 僕としては、こんなに差がある母数を比較する時には、「差がある」ことには何の意味も無く、「差が無い」ということのみ証明できるのでは? と考えますが如何でしょうか?

Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitor, Angiotensin Receptor Blocker Use, and Mortality in Patients With Chronic Kidney Disease. Molnar MZ, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 53: 650-8.


CKD (慢性腎臓病)を有する患者さんに対して血圧コントロールのために、ACE-I (ACE阻害薬)や、ARB (アンギオテンシン受容体遮断薬)の投与が予後にどのように影響するかを調べたコホート研究です コホートとしては、アメリカ退役軍人で、これまで ACE-I/ARB治療を受けたことが無く、透析を受けていないCKD患者さん 141,413名が選ばれました
この中で、26,051名において ACE-I/ARB治療が開始されました もちろんACE-I/ARB治療が行われた群と、行われなかった群では、様々な背景因子で有意な差がありましたので、まず行われた解析が、「ACE-I/ARB治療実施」を従属変数として、ロジスティック回帰分析を実施し、いくつかの独立変数のオッズ比を求めました これにより、各背景因子の重みが分かりました
そして、それを用いて Propensity Matchingが行われ、結果的に ACI-I/ARB治療群 20,247例と、非治療群 20,247例が 1:1で抽出されました
この両群間には、様々な背景因子で多くの違いが個々にはありますが、全体として Propensity Scoreが同程度なので良いのでしょう
何れにしてもこの抽出群で、生存解析が行われ、結果としては ACE-i/ARB投与群では、死亡率が有意に低下した、という結果でした
この結果を持って、非透析CKD患者さんに対して ACE-I/ARB投与するとこにより死亡率を低下させることができる、と結論しています

しかしながら大きな疑問を呈します そもそもこの論文の Table 3で ORが示され、これにより Propensity Score Matchingが行われている筈です それなのに、そのようにして20,247例ずつ抽出されたマッチング群は Table 2に示されるごとく多数の背景因子で大きな有意な差があるのです ということは、マッチングが正しく行われていないことを意味しますので、その後の解析には何の学問的意義がありません まったく疫学研究のプロがデータをこねくり回しているだけです

正直昨今の、ARBにまつわる臨床研究のいかがわしさがありますので、本当かな? という思いです また、これまでに同等の患者群に対して行われた無作為比較試験では、ACE-I/ARB投与によって死亡率低下効果は認められない、というものですので、やはり簡単にこの研究結果を受け入れることは問題です
この研究は、10万例以上の母集団を用いたものすごく大きな研究ですので、その数で圧倒した力で攻めてきているのです そして、複雑な統計解析を用い、まあ、一般の臨床医が読んでも良く分からない、そのような論理展開をしているのです
でもやっていることは、大したことはなくって、本来であれば、「一年後生命予後」などを従属変数として、ロジスティック回帰分析を行えば良いのでは? と思います ああ 難しい

このアーカイブについて

このページには、過去に書かれたブログ記事のうちCKD (慢性腎臓病)カテゴリに属しているものが含まれています。

前のカテゴリはAMI (急性心筋梗塞)です。

次のカテゴリはDAPT (二重抗血小板療法)です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。