DAPT (二重抗血小板療法)の最近のブログ記事

Dual-antiplatelet treatment beyond 1 year after drug-eluting sent implantation (ARCTIC-Interruption): a randomized trial. Collet JP, et al. Lancet published online July 15, 2014.

現在ヨーロッパやアメリカでのガイドラインでは、薬剤溶出性ステント植え込み後の二重抗血小板療法期間は、通常一年間と言われています これに対して、一年間以上継続した方が良いのでは? とか あるいは特に日本国内ではダラダラと何年間も二重抗血小板療法が継続されることがあります 特に日本人の患者さんは服薬遵守率が欧米と比較して良い、と言われていますので、一年間以上継続の是非というのは大きな問題となります

この論文では、薬剤溶出性ステント植え込み後、一年間が経過した患者さをその時点で二重抗血小板療法継続と、非継続とに無作為化して、その後の経過を追ったものです

対象となったのは、2011/01/04から 2012/03/03の間に無作為化された患者さんで、二重抗血小板療法中止群 624例と、継続群 635例です これに対して、無作為化後 17ヶ月前後の追跡が行われました ITTで評価した主要評価項目である全死亡、心筋梗塞、脳梗塞や一過性脳虚血性発作、再血行再建術、ステント血栓症は、両群とも 4%の発生率であり、同等でしたが、主要安全性評価項目であるSTEEPLE主要出血性事故(この定義については後述)発症率は、継続群 1%、中止群 <0.5% (HR = 0.15, p = 0.073)と継続群で多く、また、STEEPLE主要および非主要出血性事故は、継続群 2%、中止群1% (HR = 0.26, p = 0.04)と継続群で多く認められました

この結果を受けて、薬剤溶出性ステント植え込み後、一年間心事故が無かった患者さんに対して、二重抗血小板療法期間を一年間以上継続することには、明らかな利益は無い、と主張しています

さて、STEEPLE出血とは何でしょうか?
これは低分子ヘパリンである EnoxapainをPCIにおいて使用することの有効性を評価した試験である Montalescot G, et al. Enoxaparin versus unfractional heparin in elective percutaneous coronary intervention. N Engl J Med 2006; 355: 1006-17. において用いられた定義であり、"Safety and Efficacy of Enoxaparin in Percutaneous Coronary Intervention Patients, an International Randomized Eval" の頭文字をとったものだと思います (確信無し!!)
ちなみに、ここより引用すれば

●大出血
致死的出血 後腹膜,頭蓋内,眼内出血 特別な治療を要する血行動態の悪化を引き起こす出血 止血または出血のコントロールのためにインターベンション(外科的/内視鏡的)または閉鎖空間の減圧を要する出血 濃厚赤血球または全血1単位以上の輸血を要する臨床的に明白な出血 ヘモグロビン3g/dL以上の低下をもたらす臨床的に明白な出血(ヘモグロビン値不明の場合は,10%以上のヘマトクリット値の低下)
 ●小出血
外傷に関連しない肉眼的血尿(例:器具による) 長引く,繰り返される,栓もしくはインターベンションを要する鼻出血 消化管出血 喀血 結膜下出血 >5cmの血腫,または入院/入院期間の延長を要する出血 ヘモグロビン2-3g/dLの低下をもたらす臨床的に明白な出血 硫酸プロタミン投与を要するコントロール不良の出血  

大出血基準の1つ以上に該当する場合は大出血とする
大出血基準には合致せず,小出血基準の1つ以上に該当する場合は小出血とする

さて、この中で面白い記述があります 実は二重抗血小板療法継続群でも 30%の人が実際には二重抗血小板療法を止めていたのです まあそれはそれとして、実は薬剤溶出性ステント植え込み後最初の一年間の二重抗血小板療法中の人の全例に対して VerifyNowによる血小板凝集能測定が行われてました その結果は、二重抗血小板療法一年以上継続あるいは中止に関する無作為化には影響しなかったそうですが、実は血小板凝集能が高かった症例では、死亡率が高かったそうです (3% vs 1%; HR 5.07, p = 0.005) さらに、血小板凝集能と、チエノピリジンの中止あるいは継続との関連は、主要評価項目などとの間には関連が認められなかったそうです このことは、割りとさらりと書かれています

これはどういうことでしょうか? 日本人では特に Plavixでは遺伝子多型により実はあまり効かない症例があり、その頻度は実は 50%近くにも達するということが判明していますが、実はこの試験が行われた欧米人でも結構存在する、ということではないでしょうか そして、そのような患者さんに関しては薬剤溶出性ステント植え込み後のリスクが多いので、他の抗血小板薬 たとえば Prasugrelを投与すべきではないのでしょうか? ちなみの本試験で用いられた チエノピリジンは 90%の症例で Plavixでした
Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials Comparing Short-Term Versus Long-Term Dual Antiplatelet Therapy Following Drug-Eluting Stents. El-Hayek G, et al. Am J Cardiol 2014; 114: 236-242.

冠動脈に対して薬剤溶出性ステント植え込みは標準的な治療として定着しています しかし、薬剤溶出性ステント(DES)を用いることにより 2006年以降、新たな「晩期ステント血栓症」という問題が浮上してきました これを受け、ACC/AHAあるいは ESCなどのガイドラインでは薬剤溶出性ステント植え込み後は 12ヶ月の二重抗血小板療法(DAPT)が推奨されています
しかしながら、二重抗血小板療法を不用意に続けると主要に出血性合併症(脳出血、消化管出血、輸血などなど)が増加することも明らかです 特に脳出血は重大な問題を引き起こします
これに対して、二重抗血小板療法を短くする試みが何度も行われてきておりますが、この論文では、これら発表された論文から主要なものを4つ選んで、Short DAPT(平均4ヶ月)と、Long DAPT(平均13ヶ月)について成績が比較されました
結論的には、Short DAPTは Long DAPTと比較して、主要心事故発生率に差は無かったが、主要出血性合併症発生頻度が低かった、というものです この結果は、不用意に二重抗血小板療法を続けることに対する警鐘ではありますが、何しろ 対象となっている母集団が大体は simple lesionなので成り立つ話だと思います
やはり症例に応じた tailored DAPTが必要なのかも知れませんね
まあ、現在 一ヶ月二重抗血小板療法を用いた臨床試験が走り、我々も参加しているので、その結果を待ちたいと思います
A Prospective Randomized Trial of Everolimus-Eluting Stents Versus Bare-Metal Stents in Octogenarians: The XIMA Trial (Xience or Vision Stents for the Management of Angina in the Elderly). Belder AD, et al. J Am Coll Cardiol 2013; 63: 1371-8.


この研究は、イギリスとスペインの二カ国共同で行われ、前向きに無作為に80歳以上のお年寄りに対して、Xience EESと Vision Bare-Metal Stentの効果を比較したものです 通常は、薬剤溶出性ステント植え込みを行うことによって、MACEが減少するため、理由が無ければBare-Metal Stentよりも薬剤溶出性ステントを植えこむ、というのが現在のPCIの主流です

しかしながら、もともと脳内出血などの重篤な出血を起こす危険性が若年者よりも高いと考えられる 80歳以上の方々に対しては、二重抗血小板療法を半年から一年間以上継続せねばならない薬剤溶出性ステント植え込みが本当に良いかどうかに関しては、これまで前向き無作為試験が行われてきませんでした

後ろ向き試験であれば、これまでも報告がありますし、特に日本人に関してのデータは、湘南鎌倉総合病院循環器科の松実君が報告した下記のものがあります

Risk of long-term dual antiplatelet therapy following drug-eluting stent implantation in octogenarians. Matsumi J, et al. J Interv Cardiol. 2013: 26; 114-22.

これによれば、日本人の患者さんでも、薬剤溶出性ステント植え込み後はBare-Metal Stent植え込み後よりも、二重抗血小板療法継続期間が有意に長く、植え込み後一年では、出血性合併症発症頻度に差は認められないものの、二年以降では薬剤溶出性ステント群で著明に出血性合併症発症頻度が増加する(2 years, 21.6% vs 9.6%, P = 0.02; 3 years, 29.4% vs 11.5%, P = 0.001; 4 years, 31.4% vs 15.4%, P = 0.007; major: 2 years, 12.7% vs 3.8%, P = 0.04; 3 years, 18.6% vs 5.8%, P = 0.005; 4 years, 19.6% vs 6.7%, P = 0.006) この結果主要出血性合併症は、薬剤溶出性ステント群でハザード比  4.324 (1.506-12.414; P = 0.007)で増加することが判明しています。それ故、日本人患者さんでは、80歳以上であれば、二重抗血小板療法は一年で打ち切りすることを考えねばならないとされました。

さて、英国とスペインで行われた本試験、そもそもこれは明らかに Xienceと Visionを販売している A社のスポンサー試験と思われるのですが、そんなことは論文中に一言も記載が無く、あの日本を舞台にした降圧剤の臨床試験で問題となったことは一体全体ヨーロッパではOKなのですね というのが最初の印象です

結論から言えば、この試験ではBare-Metal Stent群では一年後二重抗血小板療法率は32.2%、薬剤溶出性ステント群では94.0%と日本と同様に薬剤溶出性ステント群で二重抗血小板療法が長かったにもかかわらず、主要評価項目であり、一年後の死亡、心筋梗塞、脳血管障害、標的血管再治療そして、主要出血からなる複合評価項目では、両群で有意な差が認められませんでした (BMS: 18.7% vs DES: 14.3%, p = 0.09)

その内訳を分析すれば、死亡、主要出血、脳血管障害では発生率に差が無く、心筋梗塞と再血行再建術では、有意に薬剤溶出性ステント群で良かったという結果でした

このため、結論としては、80歳以上でも積極的に薬剤溶出性ステントを使用するのが良いと、暗黙に勧めているのです

しっかしだ~ 本当にそうなのか???

まず、その論文が前提にした仮説では、ARTS I/II試験の結果から、主要評価項目発生頻度を、Bare-Metal Stent群2では20%、薬剤溶出性ステント群では12%と仮定し、そこらか優越性試験を行った時に、α 5%、Power 80%で、658名の症例登録が必要と判断され、結果的に BMS 400/DES 399例という十分な症例数が登録されました それなのにああそれなのに、主要評価項目で有意な差が認められなかった、ということは、そもそもそれ以降の推論が全てだめなのだ、と思います もちろん非劣性評価はされていません

それに松実くんの論文では、出血が問題となるのは、この主要評価項目以降の話であり、本当にこのまま二重抗血小板療法を継続するのが良いか否かについては何も言えません そもそも、主要評価項目で有意な差が出なかったのであれば、何も薬剤溶出性ステントを使用する必要が無いと思われますよね

Risk of Major Adverse Cardiac Events Following Noncardiac Surgery in Patients With Coronary Stent. Hawn MT, et al. JAMA 2013; 310: 1462-1672.

循環器科がしっかりしている病院において、心臓以外の手術を行う場合には、かならず心電図や病歴でスクリーニングされた後、虚血性心疾患の有無について何らかの詳しい検査が必要に応じて行われます

この時に問題となるのが、もしも冠動脈有意病変が発見された場合、その手術を先に行って良いものか、あるいはPCIやCABGで心臓の状況を改善させてから、その手術を行うべきか? という点です

この問題に関して参考となるのが AHA/ACC 2007 Guidelineです その日本語訳は以下の通りです

術前のCABGあるいはPCIによる冠動脈再潅流の推奨 
Class I 
1. 有意な左冠動脈主幹部の狭窄をもつ安定した狭心症患者で,非心臓手術前に冠動脈再潅流手技
を行うことは有用である.(Level of Evidence: A) 
2. 3枝病変をもつ安定した狭心症患者で,非心臓手術前に冠動脈再潅流手技を行うことは有用で
ある(LVEF<0.50の時生存の利益が大きい).(Level of Evidence: A) 
3. 有意な近位左前下行枝の狭窄があり,LVEF<0.50あるいは非侵襲的ストレス試験で陽性な2
枝病変をもつ安定した狭心症患者で,非心臓手術前に冠動脈再潅流手技を行うことは有用であ
る.(Level of Evidence: A) 
4. 高リスク不安定狭心症患者あるいは非ST上昇心筋梗塞患者では,非心臓手術前に冠動脈再潅
流手技を行うことが推奨される.(Level of Evidence: A) 
5. 急性ST上昇型心筋梗塞患者では,非心臓手術前の冠動脈再潅流手技が推奨される.(Level of 
Evidence: A) 
 
Class IIa 
1.心症状を緩和するためにPCIによる冠動脈再潅流が適当な患者や,待期的非心臓手術を12カ
月以内に必要とする患者では,①バルーン血管形成術あるいは,②ベアメタルステントとその
後の4-6カ月の二重抗血小板療法が望ましい.(Level of Evidence B) 
2. 薬剤溶出ステントを挿入されていて,緊急手術のためチエノピリジン療法を中止しなければな
らない患者では,可能ならばアスピリンを続行し,可能な限り早期にチエノピリジン療法を再
開するのが妥当である.(Level of Evidence: C)
Class IIb 
1. 高リスク虚血患者(例えば,ドブタミン負荷エコー検査で少なくとも5セグメント以上の壁運
動異常)における術前の冠動脈再潅流療法の意義は確立されていない.(Level of Evidence: C) 
2. ドブタミン負荷エコー検査で異常(1から4セグメント)を呈する低リスク虚血患者に対する
術前の冠動脈再潅流療法の意義は確立されていない.(Level of Evidence: B) 
 
Class III 
1. 非心臓手術前に安定した冠動脈疾患患者にルーチンに冠動脈再潅流療法を行うことは推奨さ
れない.(Level of Evidence: B) 
2. チエノピリジン療法あるいはアスピリン療法,あるいは両者の投与を周術期に中止する必要が
ある以下の患者で待期的非心臓手術は推奨されない:ベアメタルステント植え込みが4から6
週間以内に行われている患者,薬剤溶出ステント植え込みが12カ月以内に行われている患者.
(Level of Evidence: B) 
3. 4週間以内にバルーン冠血管形成術を受けた患者に待期的非心臓手術を行うことは推奨され
ない.(Level of Evidence: B)

このガイドラインに書かれていることは、我々の日常診療感覚と全く同じであり、受け入れやすいものだと思います

さて、本日の抄読会論文ですが、2007年当時より薬剤溶出性ステントの使用がさらに一般化さている現在においても、このガイドラインのままで良いのかどうかということに挑んだ意欲的な論文です
対象としたのは、2000年から2010年のアメリカ退役軍人病院 (VA)データベースであり、ここには124,844のステント植え込みが行われ (DES 47.6%, BMS 52.4%)、その中の 28,029人の患者さんがステント植え込み後 24ヶ月以内に何らかの心臓以外の手術が行われました
この中の 1980人が MACEを発症しました このMACEを起こした患者さんについて解析した結果 以下の3つの因子が重要と判明しました

  1. 緊急での非心臓手術 (OR: 4.77)
  2. 心筋梗塞発症から6ヶ月以内の非心臓手術 (OR: 2.63)
  3. 改良した心危険因子が2以上 (OR: 2.13)
さらに興味深いことには、非心臓手術の後に、薬剤溶出性ステントを用いた方が、金属製ステントを使用するよりも、有意にMACEが少く(OR: 0.91)、また二重抗血小板療法休薬しようが継続しようが、MACE発生率には影響しなかったということです

ちなみに改良された心危険因子 (Revised Cardiac Risk Index: rCRI)とは

  • 心不全
  • 脳卒中
  • 心筋梗塞
  • インスリン使用糖尿病
  • 手術CPT code分類でのhigh-risk手術
  • 術前一年以内のクレアチニン 2mg/dL超
の存在で点数付けし、1点: 低リスク、2点: 中等度リスク、3点以上: ハイリスク とするものだそうです

ちなみに、ステント植え込みから手術までのタイミングでは MACE発生率が
  • < 6wk                                    11.6%
  • 6 wk to <  6 mo                      6.4%
  • 6 mo to < 12 mo     4.2%
  • 12 mo to 24 mo      3.5%
ということであり、6週間過ぎた後の MACE発生率にはそれほど大きな差が無かったのです
 

何れにしてもこの論文の結論は、ガイドラインで推奨されている、「金属製ステントの使用」と、「六ヶ月を越えてから手術すべきだ」ということは、改めるべきだ、と提唱しています

Use of clopidogrel with or without aspirin in patients taking oral anticoagulant therapy and undergoing percutaneous coronary intervention: an open-label, randomized, controlled trial. Dewilde W. et al,. Lancet 2013; 381: 1107-15.


経皮的冠動脈インターベンションにより冠動脈ステント植え込みする患者さんの中には、心房細動のため、あるいは人工弁を植え込んでいたり、あるいは左室内血栓のために、ビタミンL拮抗薬(VKA)であるワーファリン投与による抗凝固療法を受けておられる患者さんが少なからずおられます このような患者さんに薬剤溶出性ステントなどを植える時には、その標準的併用療法である二重抗血小板療法 (DAPT) を続けるか否かが問題となります

何故ならば二重抗血小板療法をむやみに続けることは、その後の脳内出血などの重篤な出血性合併症を起こす可能性が高くなります さらには、アスピリン投与により、胃からの出血のリスクも高まります

しかしながら現在の各種学会(日本国内のみならずヨーロッパ、アメリカなど)のガイドラインでは、未だにこの点に関しては二重抗血小板療法継続のままとなっているようです

この論文では前向きに二重抗血小板療法群と、Clopidogrel群を無作為化して、PROBE法による解析が行われました 579人の患者さんが、279例のClopidogrel + VKA (二重療法)、そして 284例の Aspirin + Clopidogrel + VKA (三重療法)の2群に無作為化され、主要評価項目としては経皮的冠動脈インターベンション後1年間の出血性合併症と定められました もちろん出血といっても穿刺部からの軽度出血から、輸血や外科的修復を要する大出血や、致命的な脳内出血などの重篤な出血までありますが、今回用いられたのは全てをひっくるめた出血性合併症でした

結果としては、一年間で、二重療法群では 19.4%、三重療法群では 44.4%の症例で出血性合併症が発生し、これは当然のことながら p<0.0001であり、二重療法とすれば、Hazard Ration 0.36で出血性合併症発生が少なかったのです しかし、重篤な出血に限定すれば差は認められませんでした

そして、副次評価項目であった死亡、心筋梗塞、脳卒中、再血行再建術そしてステント血栓症に関しては、二重療法群で 11.1%、三重療法群で 17.6%と、これも二重療法群の方が HR 0.60, p=0.025と若干優れていました

そして、結論としては、ワーファリン投与患者さんに対しては、二重療法の方が圧倒的に少ない出血性合併症発症率であり、アスピリンを投与しないことによってステント血栓症が増加することは無かった というものでした

なお、この研究はOpen-sourceのプロジェクトである Rを統計解析に用いています
Impact of Intraprocedural Stent Thrombosis During Percutaneous Coronary Intervention. Genereux P, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 63: 619-29.

一時期 JACCも CirculationもこぞってInterventionを分離し、それぞれ JACC Interventionとか Circulation Interventionとか新たに雑誌を立ち上げ、Intervention関係をそちらに誘導し、JACC本体などに PCI関係の論文を投稿しても、そもそも受け付けない、そんな状況が数年続きました しかし、最近 PCIは一時程の勢いは無く、その関係だと思いますが、最近は JACCや Circulation本体にも PCI関係の論文が掲載されるようになってきました そんな印象持っているのは私だけでしょうか???

この論文は、CAMPION PHOENIX試験という、新しい静脈内投与用の抗血小板薬である、Cangrelorと、内服のスタンダード抗血小板薬である Clopidogrel (プラビックス)のPCIにおける効果を比較した試験からの副次解析結果です
Cangrelorというのは現在開発中の薬剤であり、血小板ADP受容体であるP2Y12受容体拮抗薬ですが、Clopidogrelとの違いは、Clopidogrelが Prodrugであり、体内で代謝されて初めて作用を発揮する内服薬であるのに、Cangrelorはそれ自体が作用を発揮する徐脈内投与薬だという点です

観察項目として、「PCI手技中のステント血栓症 (IPST: IntroProcedural Stnet Thrombosis)」という今までにあまり無い項目を選択しています。

IPST予測因子として単離されたのは、STEMI (HR 1.87, p=0.04), NSTEMI-ACS (HR 2.07, p=0.004), Baseline Thrombus (HR 1.79, p=0.01), Total Stent Length/mm (HR 1.03, p<0.0001), Cangrelor instead of Clopidogrel (HR 0.65, p=0.048)でした かろうじてCangrelorの方がClopidogrelよりも IPST抑制効果が高かった、ということになりました

さらに、IPSTが起これば術後48時間および、30日での死亡率に有意な重大な影響を与えました (IPST+: 10.1%, IPST-; 1.0%の30日死亡率, p<0.0001)

このことから結論として
  1. IPSTは比較的希な事象である(<1%)
  2. しかしながら、IPSTが起こればカテ室を出た後の重大有害事象と結びつく
  3. Cangrelorは IPSTの発症を抑制する
としています

正直、僕の印象は、日本人患者さんに対してそのような強力な血小板ADP受容体P2Y12に対する拮抗薬を使用して本当に大丈夫か? と思います きっと、出血性合併症が多数発生し、かえって悪い結果が出るのではないでしょうか?

それと、このような PCIに直接関係した論文を再び JACCが掲載するようになったのは時代の変化を感じます
Should duration of dual anti platelet therapy depend on the type and/or potency of implanted stent? A pre-specified analysis from the PROlonging Dual anti platelet treatment after Grading stent-induced Intimal hyperplasia studY (PRODIGY). Valgimigle M., et al. Eur Heart J 2013; 34: 909-19.


この論文は正直面白い内容のものではありませんでしたし、本当に統計学的に正しい解析なのかどうか疑わしく思いました イタリアからの論文です
2,013例のBMS(金属製ステント), ZES-S(Endeavor Sprint), PESあるいはEESを植えた患者さんを植込み後 30日の時点で、二重抗血小板療法継続期間を6ヶ月で中止するのか、あるいは24ヶ月継続するのかを無作為化し、死亡・心筋梗塞・脳血管障害からなる composite endpointが、主要評価項目とされました
PESが加わっているので想像できるように、登録期間は 2006/12月から2008/12月と比較的古いものです
結果としては、この主要評価項目発現頻度は、ステント間で優位な差は認められませんでしたが、ZES-S群においては、24ヶ月DAPT継続よりも、6ヶ月継続の方が有意に少ない結果だったのです
論文中では、何故 ZES-S群において、このようなあり得ないような結果となったかについての考察はありませんが、結論として 「DAPTの最適期間については、個々の薬剤溶出性ステント毎に決定されるべきであり、晩期内径損失(Late Intimal Loss)抑制効果とは無関係である」と述べています
本当にこんな結論が引き出せるのかどうか僕としては甚だ不同意です そもそもステント植え込み患者を最初に4群に無作為化し、その後 DAPT投与期間にもとづき2群に無作為化していますので、少なくとも Bonferroni's Correctionに従って、まず優位水準を 0.05/4 = 0.0125にすべきであり、更にそれを2群に無作為化しているので、ここからは自信ありませんが、多分 p * p = 0.00015625が有意水準となるように考えます だとすれば、この論文は何の結果も出なかったことになります
そもそも、統計検定の部分で、症例数設定根拠が示されておりませんし、常識的に考えれば、一律に6ヶ月投与に短縮することの倫理性や合理性が示されていませんので、よくぞ倫理委員会承認が得られたものと驚愕します ということで本論文は面白くないっ!
Platelet reactivitiy and clinical outcomes after coronary artery implantation of drug-eluting stent (ADAPT-DES): a prospective multi center registry study. Stone GW, et al. Lancet Published online July 26, 2013.

薬剤溶出性ステント植込み後の二重抗血小板療法 (DAPT)はステント血栓症抑制のために、非常に重要です。しかしながら、不必要に二重抗血小板療法を継続すれば、重篤な出血性合併症を併発するリスクが高まります。
また、DAPTとしては、アスピリン+クロピドグレル (Plavix)の組み合わせが一般的ですが、クロピドグレルは、体内で代謝を受け、それにより血小板凝集能を低下させます。この代謝において銃用な役割を演じるのが肝臓にあるCYP2C19という酵素なのですが、アジア系人種、特に日本人には、遺伝的にこの活性が低い人が多く(20%ぐらいの人)、この結果クロピドグレルを服薬していても、実際には血小板凝集能の抑制がかからないことが問題となっています。これに対して、近々発売される日本で開発されたプラスグレルは、作用発現に、CYP2C19を必要としないので、このような作用変動が無い、とも言われており期待されています。
さて、この論文では、8,500人余りの薬剤溶出性ステント植え込み患者さんを前向きに登録し、実際にアスピリンによる血小板凝集能抑制の程度と、クロピドグレルによる血小板凝集能抑制程度を VerifyNowという測定器で測定し、それとステント血栓症/出血性合併症の発現を1年間追跡調査したのです。
結果は、明らかにクロピドグレル耐性の人において、2倍から3倍 ステント血栓症が発現しやすく、しかもステント血栓症を起こせば、生命予後も悪化することが分かりました。しかし、同時にクロピドグレルが有効な症例において、多く出血性合併症が発生していました。このことから、筆者達は、決めの細かい症例ごとの管理を行い、出血性合併症が少く、しかもステント血栓症を起こさないように、二重抗血小板療法を管理せねばならない、と主張しています。

しかしながら、データを良く見れば、ステント血栓症のほとんどは、植込み後2ヶ月以内に、出血性合併症は植え込み時にほとんどが発生しているのです。ということは、ここでの結果は、二重抗血小板療法云々よりも、経皮的冠動脈インターベンションにテクニックにより依存している可能性が高いのです。明らかにされているデータでは、経大腿動脈的冠動脈インターベンションが 95.4%で用いられ、経橈骨動脈的冠動脈インターベンションに至っては、たった4.4%の症例でしか用いられていないのです。流石に後進国アメリカですね。良くも堂々とこんな結果をLancetに掲載できたものです。

このアーカイブについて

このページには、過去に書かれたブログ記事のうちDAPT (二重抗血小板療法)カテゴリに属しているものが含まれています。

前のカテゴリはCKD (慢性腎臓病)です。

次のカテゴリはDEB (薬剤溶出性バルーン)です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。