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A Prospective Randomized Trial of Everolimus-Eluting Stents Versus Bare-Metal Stents in Octogenarians: The XIMA Trial (Xience or Vision Stents for the Management of Angina in the Elderly). Belder AD, et al. J Am Coll Cardiol 2013; 63: 1371-8.


この研究は、イギリスとスペインの二カ国共同で行われ、前向きに無作為に80歳以上のお年寄りに対して、Xience EESと Vision Bare-Metal Stentの効果を比較したものです 通常は、薬剤溶出性ステント植え込みを行うことによって、MACEが減少するため、理由が無ければBare-Metal Stentよりも薬剤溶出性ステントを植えこむ、というのが現在のPCIの主流です

しかしながら、もともと脳内出血などの重篤な出血を起こす危険性が若年者よりも高いと考えられる 80歳以上の方々に対しては、二重抗血小板療法を半年から一年間以上継続せねばならない薬剤溶出性ステント植え込みが本当に良いかどうかに関しては、これまで前向き無作為試験が行われてきませんでした

後ろ向き試験であれば、これまでも報告がありますし、特に日本人に関してのデータは、湘南鎌倉総合病院循環器科の松実君が報告した下記のものがあります

Risk of long-term dual antiplatelet therapy following drug-eluting stent implantation in octogenarians. Matsumi J, et al. J Interv Cardiol. 2013: 26; 114-22.

これによれば、日本人の患者さんでも、薬剤溶出性ステント植え込み後はBare-Metal Stent植え込み後よりも、二重抗血小板療法継続期間が有意に長く、植え込み後一年では、出血性合併症発症頻度に差は認められないものの、二年以降では薬剤溶出性ステント群で著明に出血性合併症発症頻度が増加する(2 years, 21.6% vs 9.6%, P = 0.02; 3 years, 29.4% vs 11.5%, P = 0.001; 4 years, 31.4% vs 15.4%, P = 0.007; major: 2 years, 12.7% vs 3.8%, P = 0.04; 3 years, 18.6% vs 5.8%, P = 0.005; 4 years, 19.6% vs 6.7%, P = 0.006) この結果主要出血性合併症は、薬剤溶出性ステント群でハザード比  4.324 (1.506-12.414; P = 0.007)で増加することが判明しています。それ故、日本人患者さんでは、80歳以上であれば、二重抗血小板療法は一年で打ち切りすることを考えねばならないとされました。

さて、英国とスペインで行われた本試験、そもそもこれは明らかに Xienceと Visionを販売している A社のスポンサー試験と思われるのですが、そんなことは論文中に一言も記載が無く、あの日本を舞台にした降圧剤の臨床試験で問題となったことは一体全体ヨーロッパではOKなのですね というのが最初の印象です

結論から言えば、この試験ではBare-Metal Stent群では一年後二重抗血小板療法率は32.2%、薬剤溶出性ステント群では94.0%と日本と同様に薬剤溶出性ステント群で二重抗血小板療法が長かったにもかかわらず、主要評価項目であり、一年後の死亡、心筋梗塞、脳血管障害、標的血管再治療そして、主要出血からなる複合評価項目では、両群で有意な差が認められませんでした (BMS: 18.7% vs DES: 14.3%, p = 0.09)

その内訳を分析すれば、死亡、主要出血、脳血管障害では発生率に差が無く、心筋梗塞と再血行再建術では、有意に薬剤溶出性ステント群で良かったという結果でした

このため、結論としては、80歳以上でも積極的に薬剤溶出性ステントを使用するのが良いと、暗黙に勧めているのです

しっかしだ~ 本当にそうなのか???

まず、その論文が前提にした仮説では、ARTS I/II試験の結果から、主要評価項目発生頻度を、Bare-Metal Stent群2では20%、薬剤溶出性ステント群では12%と仮定し、そこらか優越性試験を行った時に、α 5%、Power 80%で、658名の症例登録が必要と判断され、結果的に BMS 400/DES 399例という十分な症例数が登録されました それなのにああそれなのに、主要評価項目で有意な差が認められなかった、ということは、そもそもそれ以降の推論が全てだめなのだ、と思います もちろん非劣性評価はされていません

それに松実くんの論文では、出血が問題となるのは、この主要評価項目以降の話であり、本当にこのまま二重抗血小板療法を継続するのが良いか否かについては何も言えません そもそも、主要評価項目で有意な差が出なかったのであれば、何も薬剤溶出性ステントを使用する必要が無いと思われますよね

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