RAS (腎動脈ステント植え込み術)の最近のブログ記事

"The Impact of Renal Artery Stenosis on Outcomes After Open-Heart Surgery". Philip F, et al. J Am Coll Cardiol. 2014; 63: 310-6.

再び RAS (腎動脈ステント植え込み術)に関連する話題です。開心術術後の予後に、術前腎機能が悪影響を及ぼすことは分かっています。しかし、術前に動脈硬化性腎動脈狭窄症 (Atherosclerotic Renal Artery Stenosis: ARAS)がある場合、ほとんどの場合には腎機能に悪影響を及ぼしていない訳ですが、そのような場合に、ARAの存在そのものが開心術術後予後に悪影響を及ぼすか否か、について検討した論文です。Cleaveland Clinicからの、2000/JANから2010/APRまでに、術前腎動脈エコーを受けた 714例の開心術患者さんを対象としています。ARAの定義は、ドップラーで、 >200cm/secの方です。
29%の方が ARASを保持し、その内の 79%が片側、残りが両側の ARASでした。 ARASを有すれば PAD (Peripheral Artery Disease: 末梢動脈疾患)を合併する率が高く (P = 0.004)、LDLも高値 (p = 0.04)でありましたが、術後の GFR変化、透析の必要性、在院日数、死亡率とは関係ありませんでした。
こうなってくると、やはり無闇に RAS(腎動脈ステント植え込み術)を行うべきではやはりありませんね。
腎動脈ステント植え込み術 (RAS: Renal Artery Stenting) に関する重大な成績

世界で最も権威がある臨床医学に関しての学術雑誌は、New England Journal of Medicine (俗称 NEJM) ですが、その最新号 (NEJM 2014; 370: 13 - 22)に「動脈硬化性腎動脈狭窄症に対するステント植え込み術と、内科的治療法の比較」という論文が掲載されました。
これは 947名の患者さんを対象として無作為化して比較されました。対象患者さんは、以下の通りです

*動脈硬化性の高度腎動脈狭窄が存在する (その定義は、狭窄度が80%以上かつ完全閉塞ではない、あるいは 狭窄度 60%から80%であるが、圧格差が 20mmHg以上であるもの)
*二剤以上の降圧剤を服薬しても収縮期高血圧を示すか、あるいは体表面積 1.73 m<sup>2</sup>換算でGFR < 60mlで定義される慢性腎臓病がある
*高度腎動脈狭窄の診断は、超音波/MRI/CT血管造影が用いられた

結果はある意味驚くべきもので、腎動脈ステント植え込み術は、内科的治療群と比較して、何の有効性も示さなかったのです。現在、本邦では腎動脈ステント植え込み術が健康保険診療でカバーされることもあり、少しでも腎動脈狭窄が発見されれば、ステント植え込みが行われる傾向にあります。この安易な腎動脈ステント植え込み術実施に対する大きな警鐘となるでしょう。以前より問題となっていましたが、北海道のある診療機関においては、「世界で最大数の腎動脈ステント植え込み術」が行われてきました。このようなことは厳しくチェックされるべきでしょう。

当科においては、これまでも安易な腎動脈ステント植え込み術は実施してきませんでした。あくまでも、他剤降圧剤治療によっても、血圧コントロールがされず、高血圧症の程度がひどい高度腎動脈狭窄症、あるいは進行する腎機能低下を伴う高度腎動脈狭窄症の患者さんのみ治療対象としてきましたので、今回の NEJM論文において対象とされた患者さんよりも厳しい患者さんということになります。

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