STAP/iPS細胞の最近のブログ記事

本日は毛色が代わり、ここ最近マスコミ科学記事で一番の話題の STAP細胞の話です 世界を驚かせた論文がこれです

Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency. Obokata H, Wakayama T, et al. NATURE 2014; 505: 641-7.

現在京都大学在籍の中山先生がノーベル賞を受賞したきっかけの、iPS細胞とは、induced pluripotent stem cellsのことであり、直訳すると 「万能性を誘発された幹細胞」のことです。動物の体細胞は特に、神経細胞や心筋細胞では分化の頂点に達してしまっており、それ以上変化していくことはありません。しかし、幹細胞は、体のどの組織にもなり得る能力(これを万能性、英語では pluripotencyと称する)と自己増殖能力の両者を持っています。
これまで、人参などの植物では分化した細胞が幹細胞になることは確認されていたのですが、動物細胞ではこれまでそんなことは起こらない、とされてきたのです。このため、中山先生は 4種類(その後実はこの中の3種類のみで良いことが証明された)の遺伝子(中山4因子 と呼ばれます)を細胞に組み込めば、その細胞が幹細胞となり得ることを発見したのです。この意味で革命的であり、実際の治療にも応用できる可能性が示されました。しかし、このiPS細胞の問題点として指摘されているのは、体細胞からiPS細胞に変化するには、3週間以上かかり、実際の治療で用いる場合には、予め作成しておかない限り困難である、ということと、遺伝子組み込みのために、ベクター・ビールスが必要であり、将来発癌化しない保証が無い、さらには、iPS細胞となる確率が低く、膨大な手間がかかる、などです。
これに対して今回の STAP細胞は、根本的に、「獅子は我が個を千尋の谷に落とす」という諺を地で行くようなものなのです。分化の頂点に達した細胞も、甘やかさず痛めつければ、その本来の能力を発揮し、幹細胞になり得る、これを複雑な複数の実験の末に証明したのです。しかも、このSTAP細胞への変化は、刺激後2日間もあれば十分であり、その過程で、ACTH (副腎皮質刺激ホルモン)を培地に加えると、自己増殖し爆発的にその数を増加することが出来、また、奇形腫をモデルに行った実験でも、50のサンプルで全く癌化しなかったことも確認され、培養条件を変化させることにより、内胚葉にも外胚葉にも分化し、どのような組織にも分化し得ることが証明され、それがこの論文に全て記載されているのです。
いわばこの論文は、これまでの生命の秘密を全て解き明かすような論文、いわば聖書のような論文なのです。
しかも、この研究の最初から、普通の人では思いつかないような工夫、たとえば、幹細胞になった可能性がある、というシグナルとして、Oct4という遺伝子発現をマーカーにしているのです。正直論文の中身は、その道の専門家でないと、理解するのは困難です。しかし、その本質は、分化した体細胞と言えど、ある程度痛めつければその本質を発揮し、万能細胞となり得るということです。実際に使われた「痛めつけ条件」は、pH 5.7という弱酸性培養条件でした。この条件では脾臓から採取したリンパ球の4/5は死滅してしまいます。しかし、生き延びた細胞の半数が STAP細胞に変化するのです。これ以外にも、細胞膜に穴を開けたり、色々な痛めつけ方法が試されて、そのほとんどが有効であることが示されています。だから、STAP (Stimulus-triggeredacquisition of pluripotency: 刺激により誘発され獲得された万能能力)と命名されたのです。
これらのことから、僕が学んだのは、生命というのは、とても強い、そして、過酷な環境にいなければその本来の能力を決して発揮できない、というものです。これはまさしく、「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」というものではないでしょうか?
日本人はかねてより本番に弱い、とも言われています。予め想定内の練習ばかりして、結局本番では全く力を発揮しないのです。僕は破天荒な人生が好きです。




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