SirolimusかPaclitaxelか

昔は良く、SES (Sirolimus-Eluting Stent)か PES (Paclitaxel-Eluting Stent)か? なんて論争をやりましたよね 大抵は、そのどちらかの会社 具体的には前者は Johnson & Johnson Cordis、そのして後者は Boston Scientific の2つの DES大会社が後ろについて、色々な資料を準備すると共に、せんのう いや 失礼 言葉が悪く不適切、 丁寧な説明をしてくれて、その膨大なデータをもとに、「いやこちらのDESがいい」とか、「いやこちらのDESも決して悪くない」とか、「糖尿病患者さんにはこちらのDESが良いのだ」とかいう主張を高らかにする、その debateで時間が過ぎていき、簡単に一時間の講演が終わるのでした

かく言う私もそのような論争に加わっていましたね まあ実際にどちらのDESを実際の患者さんに植え込むかは、臨床試験の結果のみでは決まらず、色々な難しい判断がある訳ですが、医師たるもの、基本はその目の前の患者さんに対してはどちらが良いか、という判断を行っているものであり、臨床試験の結果には必ずしも左右されないものなのです

それに色々な臨床試験の結果は決して一律的ではなく、どちらのDESもサポートしてしかるべき結果なのです こうなると、何を信用して良いのか分かりません

さて、

 J Am Coll Cardiol. 2017 Feb 14;69(6):616-624.
10-Year Clinical Outcome After Randomization to Treatment by Sirolimus- or Paclitaxel-Eluting Coronary Stents.

Galløe AM, Kelbæk H, Thuesen L, Hansen HS, Ravkilde J, Hansen PR, Christiansen EH, Abildgaard U, Stephansen G, Lassen JF, Engstrøm T, Jensen JS, Jeppesen JL, Bligaard N; SORT OUT II Investigators.

という論文、実は今朝の循環器内科毎朝抄読会のネタだったのですが、まあこれによれば、SES or PES (具体的な商品名としては、CYPHER or TAXUSなのですよ、念のため)を植え込んだ後、年率 1.3%で両者ともステント血栓症が 10年まで一定の頻度で発生し、見方によれば、 CYPHERの方が TAXUSよりもその発症頻度が高い場合もある、という結果でした

うーん 何と言うか予想通りですが、これまで僕達が漠然と抱いたいた DES後のステント血栓症発生率は 年率 0.5%である、というイメージよりは大分悪いことになります

もちろん、CYPHERも TAXUSもDESとしてはポリマーが完全に残る第一世代DESであり、しかも、CYPHERは非常に固く、その力学的特性から慢性期には悪影響を及ぼしやすいだろう、という人もいたくらいです ですから結果に関してはそれほど驚きではないのですし、まあ10年もすれば、動脈硬化も進行するので、どこまでが植え込まれたDESによるものか分からないとも思うのです

実はそんなことを話すためにこの論文を引用した訳ではありません これは生き方の問題なのです

この論文・研究は 世界で住民が一番幸せ、とも言われている Denmarkで行われたものなのですが、著者リストの三番目に注目して下さい Dr. Leif Thuesenという名前があります 日本に SAPIEN-XT導入時 一年間に渡り日本国内に滞在され、Proctorとして日本全国を回られた先生です 実は彼は、もともとが Coronary Interventionalistであり、あの Bifurcation trialとして有名な Nordic Studyの中心人物なのです

彼は、Nordic Countries = (Denmark, Norway, Finlandというバルト海を囲んだ三カ国)を度々周り、カテ室を訪問して、このような studyの重要性を説き、そして臨床試験や臨床研究を次々と成功させてきたのです 何故この中に Swedenが入らないか? ですって 良い質問です Swedenには SCAR Registryという大掛かりなDESレジストリが存在するのと、とにかく一国で経済的にも人工的にも大きすぎ、あまり三カ国と一緒にできないのだそうです

思い出せば 2016年1月後半、Thuesen先生と一緒に僕も Baltic Countriesを周り 慢性完全閉塞PCIをしたり、SAPIEN3の植え込みをさせて頂いたりしたのです とても楽しく有意義でした その時のことはブログのここにあります

ココらへんのブログにも書きましたが、実は Thuesen先生は僕よりも5歳ぐらい年上の先生なのです その先生がPCIのみならずTAVIの世界にも入っており、現在なお第一線で臨床医として活躍されている姿 それを見て奮い立ったのです 素晴らしい

フィンランドでの土日

流石に鎌倉と異なり、フィンランドでは土日は完全に offです Ouluのような北フィンランドでは冬は皆 スキーをして楽しみます スキーと言っても高低差のあまり無いフィンランドですから、クロスカントリースキーであり、そのための道は自転車道と共にきちんと整備されています もちろん自動車も普及していますが、学生や医者は病院に通うのにはだいたい自転車です 雪ですが、スパイクタイヤの自転車を乗り回しています でも病院に置いておくとよく盗まれるため、あまり良い自転車には乗らないのだそうですよっ

さて、先週金曜日夜に Tromsoから Ouluに到着し、土曜日は 11:00AMホテル集合でフィンランドの先生方が Excursionを準備して下さいました この日は、ホテルから30Kmぐらい離れた場所にある民間の Racing Courseに行きました 経営者はもちろん Racerということでした 最初 「うん? レース? 何それ? Snowmobile?」と訝りましたが、現地に着くと何と BMWをレーシング用に改造した車両がズラリと並んでいるのです そして、コースは一周 750mの少し高低差のあるコースなのでした

Before starting
Before starting
BMW
BMW

そんなこと言われても僕は自分で自動車を運転するの辞めてから既に16年間経過しています、しかも Racing Carですので当然のことながら五段片側のマニュアル車です、しかもしかもハンドルは左であり、右手でギア操作し、しかも何と忘れていたクラッチを足で踏まねばならないのです

このことに気づき、自分は徐々に寡黙となり、不安になっていきました 当然です まずは、レーシング用の服 (例の Racer達が着るやつです)に着替え、完全装備のヘルメット着用し、首には首保護用の厚いスポンジを巻くのです もうこれだけで 「やめてやめて逃げ出したい」です

Racing in the snow
Racing in the snow

まずは三周練習用にそれぞれで周回するのですが、僕は怖くて怖くて一周回って逃げ出しました しかも、最初にギアを lowにいれた途端にエンスト、二回目もエンスト、ようやく走りだして 2nd -> 3rdにギアをシフトし、カーブでハンドル切ると見事にスリップ そりゃあ当たり前です コースには雪が凍結して積もっているのです 雪道なんて走ったことありません しかもレーシング仕様ですので、何と後輪駆動の BMWです 滑るすべる 少しブレーキを踏むと 大きく車は回り込み道端のガードに激突寸前で停止しました 何とかギアをバックに入れようとしたのですが何度もエンスト かろうじてバックして最後まで周回したのですが、懲り懲りとなり一周で出発点に戻りました

その次は三周まわるタイムトライアルです これは二台で同時スタートするのです コースは一緒です 僕も段々慣れてきました でも皆 (お医者さんたち7名ぐらい)の中でダントツのビリです それでも何とか楽しみながら、また時にはスリップさせながら回ることが出来るほどに慣れてきました そして最後は 4台と 3台ずつでの用意ドンのレースです これを二回繰り返しましたが僕はビリから二番目でした まずまず

Champion
Champion

そして最後はプロドライバーが助手席に乗せて下さり、最速でその雪道コースを三回回ってくれました 信じられない運転です わざとスリップさせながらコースぎりぎりを通り抜けていくのです 僕が2分近くかかったコースを30秒ぐらいで通過です すごいですねえ

この後は、疲れた体を休めるためにフィンランド伝統の Smoke Saunaで汗を出しました サウナの真ん中には大きな石というか岩があり、薪を燃やして加熱してあるのです その加熱された岩に水をかけ、蒸気にしてそれにあたるのですが 気温は 80度であり、暑い 汗ダラダラです

Smoke Sauna House
Smoke Sauna House
With Dr. Leif Thussen
With Dr. Leif Thussen

そして翌日日曜日には 10:00AMホテル出発し、まずは Ouluが接するボスニア海に出ました ボスニア海は、Ouluあたりでは水深が 1m程度しか無いのだそうです 冬はマイナス30度ですので、その海ですら凍ります そして、Oulu近郊では5Km沖にある島まで 50CMの厚さに凍結するため、自動車が渡れる橋が自然にできます それを渡ってきました 完全に氷の橋なのです

Ice Road of the Sea
Ice Road of the Sea

それから、今度は Oulu近郊の農園に向かいました Oulu近郊にはこのような農園が5つだけあるそうです それよりも北の Laplandにはもっとあるのでしょうが 農園といっても畑を耕す訳ではなく、トナカイを放牧しているのです そのトナカイに会いに行きました 既に Laplandには本当の意味の野生のトナカイというものは存在せず、どのトナカイも誰か農園の所属なのです その見分けのために、生まれてすぐに耳に固有の印の傷をつけ、また毎年胴体に一本ずつ筋傷を入れて、そのトナカイが誰のもので何歳で、何時出荷すれば良いか (トナカイの肉は高級な食材で、高価なのです)が分かるようにしています

Reardear (トナカイ)
Reardear (トナカイ)
トナカイそり
トナカイそり

我々もトナカイと戯れ、その後 トナカイにソリをひいてもらい、そしてトナカイの肉を食べました

美しいフィンランドの雪景色 (それと一人ダサい男立つ)
美しいフィンランドの雪景色 (それと一人ダサい男立つ)
寒いっ
寒いっ

まあそんなことであっという間に土日が過ぎました 残念ながら今回はオーロラを見ることができませんでしたが、本当に Ouluの先生方には、たいへんお世話になりました 楽しかったです

フィンランドの病院

フィンランドの病院、と言ってもOulu University Hospitalしか知らないのですが、建物はそれこそ 50年ものでありますが、とにかく豊な印象がありました 心臓カテ室は全部で 5室ですが、Philips 4と Siemens 1でした それらは全て最新型であり、患者さんの情報は全て電子化されています カテ室で看護師さんが記録するのも keyboardを叩いていました 看護師さんの組合が強く、大学病院のように国立のものでは、カテ室に 3名が配置されていました でもニコニコと良く働かれます 愛想もとても良く、また英語は普通に話されます

医療費に関しては基本的に公的保険で賄われており、現時点ではノルウェーやデンマークのような国家による症例数制限は行われていないそうです ちなみに、Oulu University Hospitalの昨年の症例数は、CAG 2,500、PCI 1,100、Catheter Ablation 400、そしてTAVI 80例ということであり、まあ湘南鎌倉総合病院循環器内科と遜色ない数字だと思います

最大の違いは、何事につけても余裕が漂っている、という点でしょうか やはり鎌倉は朝から晩までせかせかしています そうしないと業務が回らないのです 特に外来診療に時間がとられます そうしないとカテの患者さんも減少する そんな悩みがありますね

また、デンマーク、ノルウェー、フィンランド何れの国にも基本的に医師に関しては、「この年齢で終了」というようなドイツあるいはオランダのような制度は無く、基本的にやれる歳まではそのまま、ということだそうです

さて、僕の場合には何歳までかな?

何と、TAVIの概念変わりますね

昨日は Oulu University Hospitalでの2日目でしたが、かねてより約束して頂いたTAVIをさせていただく機会がありました 実際には、9:30 – 10:30に一例、11:00 – 12:00次の一例、そして 13:00 – 14:00に最後の一例という順番に進みました

病院に 8:00AMカテ室到着、それから皆で朝のコーヒーとおやつを食べ、8:40AM頃より本日のTAVI症例一例目のみCT、アンギオ、エコーそして病歴など見せて頂き、検討しました とは言うもののいわゆる症例検討会ではなく、画面の前で僕を含めた数名でCTなどを見る、というその程度のものでした そして、彼らの通常のTAVIのやり方を教えて頂きました

  1. SAPIEN3がスタンダードである
  2. 基本的に (99%)は局所麻酔で行うが、麻酔医は傍に存在する – この局所麻酔ではごく軽い鎮静をかけるのみ
  3. 99%は大腿動脈よりの経皮的アプローチで行い、Proglide x 2で止血する
  4. 植え込みそのものは pacing下で行うが、ものすごくゆっくりとバルーンを拡張する
  5. 手技を行う場所はその前日CTOを行った通常のカテ室である
  6. 外科医は遠く離れた場所で「TAVIがある」という情報のみ共有している
  7. いわゆる Hybridテーブルは用いていないで、通常のしかし良い性能のカテマシンで行っている (具体的には Siemens ARTIS-Q)

というものでした まあ僕にとっても違和感ありませんよね そんな訳で一例目は 80数際の女の方でした この患者さんが一番 straightfowardな症例でしたが、14Fr e-sheathを用いて 26mm SAPIEN3を植え込みました この患者さんの時には僕は第三術者として入り、彼らの通常のやり方を教えて頂きました

TAVIカテ室
TAVIカテ室

患者さんとは適宜会話しながら、そして日本から来た医師と一緒にやるよ、と告知して行われましたが、何しろあっという間に終了し、患者さんはもともと意識がほとんどクリアですので、何事も無かったかの如くカテ室から出て行かれました

この後また喫茶店にコーヒーとおやつをして、その間に看護師さん達が、患者さんを入れ替え、準備され、麻酔医師がルート確保と、経静脈からのペーシング挿入をします そしてコーヒーの後、いよいよ二例目の患者さんの検討を三名ぐらいでしました この患者さんは 80何歳かの男性で、流速が゛5 m/secぐらいの高度大動脈弁狭窄症で、石灰化も強い患者さんでした 弁輪は大きく、通常であれば 29mm THVを選択するであろう大きさでした しかも、左冠動脈前下行枝領域の陳旧性心筋梗塞であり、心尖部は akineticで左室駆出率は 20%という症例でした まあとても重症ですよね しかも、もっと大きな問題点としては両側の総大腿動脈から浅大腿動脈にかけて内幕摘除術が行われていて、まだましな右外腸骨動脈のもっとも細い部分は 5mm程度しか無い、そのような患者さんでした そもそも何処からアプローチするのか、そして全身麻酔で良いのか? そのようなことが問題点と考えましたが、合議の上の決断は

  • 何時も通り局所麻酔で行う
  • 18Frでは通過できないであろうから、14Fr e-sheathで適応可能な 26mm SAPIEN3を用いる
  • それ以外は通常通り行う

というものでした そしていよいよ僕の手技の番でした 僕はそれでも外腸骨動脈通過は困難であり、また破裂の危険がある、と考えそれなりに対処しました やはりe-sheath内を SAPIEN3を通過させるには最大限の押す力が必要でした しかし、その後は大変スムーズに植え込み終わり、全く para-valvular leakも認められませんでした そしてシース抜去の時には、このような危険が予想される時に何時もやっているシースから造影しながら抜去する、とう方法を披露したのですが、これには皆感心しておられました 患者さんはすっかりお元気となられ、そこで我々は食堂に出かけゆっくりと昼食を食べました

ちなみに 40Kmの総延長がある病院の廊下は歩くと遠いのでこのような自転車を使っています

In-house Bicycle
In-house Bicycle

そして、最後の症例は女性の方でしたが、特にリスクの無い方です PCIぐらい過去に行われていたかも知れません いやいや思い出しました リスクがあるのです この方の問題点は ST junctionが細く石灰化している、という点でした その最小経は 23mmを切るのです そこでこの方に対しては 26mm valveを1 .5 cc downで植え込みしました 何事も無かったかの如く終了したのです 終わって皆で写真を撮ると共に、患者さんとも握手です

With Everybody
With Everybody
After finishing TAVI
After finishing TAVI

ホテルには一人早めに戻りました 先生方は一緒に自宅で夕食でも、とお誘いくださったのですが、時差ボケのため眠いのと、一人で街をぶらつきたいため丁重にお断りして、一人となりました

Oulu City
Oulu City

これでフィンランドを本日発ち、コペンハーゲンに向かいことになりました 本当にフィンランドの方々の温かみに触れることが出来ました でも予想よりもはるかに暖かく、たくさんの防寒服を持ち込んだのが全く無駄となったのです

フィンランドでのPCI

昨日はフィンランド第三の都市 Oulu (オウル)の大学病院でPCIを行いました この大学病院は北フィンランドの中心であり、広大な土地に三層の建物で広がった病院です もちろん寒いので建物は全て気密性のある廊下でつながっています その廊下の総延長は何と 40Kmということであり、実際職員は移動や搬送に電気式自転車や、通常の自転車、あるいは子供が使うようなスライダーを使っています

第一例目は冠動脈バイパス手術後の女性であり、1999年に冠動脈バイパス手術を行い現在はLITA-LADのみ開存していました LITA先の左冠動脈前下行枝に新たに狭窄、左回旋枝にはOsからと #12に高度狭窄があり、右冠動脈は起始部かから末梢分岐まで閉塞し、しかも右冠動脈は異所性でした 右冠動脈へのバイパスは 2007年時点で閉塞、左回旋枝へのバイパスは 2013年時点で閉塞し、現在の狭心症は左冠動脈前下行枝の病変と思われている患者さんです

まずLIMA経由で左冠動脈前下行枝を治療し、蛇行の強い左冠動脈にもステントを植え込み、右冠動脈に対しては逆行性ルートが全く無いため、順行性にアンカーをかけて固定して行いましたが全く不通過で終了

ついで早めの昼食をとってから、Lapland出身の漁師さんでしょうか その方の左冠動脈前下行枝起始部からのCTOに移りました この方は冠動脈バイパス手術を受けていないのですが、10年前から徐々に心機能が悪化し、現在は僧帽弁閉鎖不全も伴い心不全となっている患者さんでした 右冠動脈より中隔枝経由で両側性アプローチで入り、綺麗に仕上げました

Ouluの先生方と
Ouluの先生方と

そして、最後の症例はやはり冠動脈バイパス手術後で、静脈グラフトは全て閉塞、左主幹部部分で以前のPCIにより解離形成し、左冠動脈前下行枝は近位部で閉塞、LITA-LADのみで保っているような患者さんでした 右冠動脈は入口部から末梢までCTOでした

まず、解離した左主幹部から左冠動脈前下行枝近位部に何とかワイヤーを通し、石灰化のためバルーンを二つ破裂させながら左主幹部を拡張し、ステントを植え込みました 当初よりLIMA-LADに対してはガイディング・カテーテルの長さが足りないと考え、6Fr IMを切断し、5Fr sheathにより連結して入りました そしてCorsairをLIMA-D1-Apical経由で#4PDまで通過させましたが、到底Microcatheterの長さが足りず、また右冠動脈の解剖見ればまったく不可能そうであったため、この時点で中止しました

SUSHI bar
SUSHI bar

ホテルには 4:30PMに戻り、ホテル近くに SUSHI barを見つけましたのでそこで早めの夕食を食べました 鮨はまずまず ラーメンは全くの別物でした

SUSHI
SUSHI
味噌?ラーメン
味噌?ラーメン

TromsoでのPCI

Tromsoに到着し、20:00頃より、Tromsoで一番有名な現地料理のレストラン Mamaに現地の先生方そしてカテ室看護師さん達と繰り出しました

Restaurant Mama
Restaurant Mama

北極圏の名物料理といえばトナカイの肉です でも自分は魚派なのでタラを頼みましたが、トナカイも分けて頂きました その味は牛肉赤身と代わりませんでした

Reindeer (トナカイ)
Reindeer (トナカイ)
Cod (タラ)
Cod (タラ)

昨日は Tromsoによる University Hospital of North Norway (UNN)という大学病院でPCIを行いました この病院は半径 500Km以上の圏内で唯一のカテラボであり、心臓発作が世界の中でも際立って多い北ノルウェーでの生命線でもある病院です 病院は大きく綺麗であり、ヘリポートには毎日何回もヘルコプターが患者さんの搬送に稼働しています

Helicopter at UNN
Helicopter at UNN

この病院の年間PCI症例数は 1,100例、その内CTO症例が 75例、TAVIが年間 40例ぐらいとのことでした Tromso(トロムソ)は比較的温かい海流が接する場所なので完全に北極圏で年間2ヶ月間は太陽が一瞬足りとも登らない最北の都市ですが、フィヨルド海岸の海は絶対に凍結しないのです

フィヨルド観光船
フィヨルド観光船

あいにくと朝から氷雨が降り、気温はプラスでした ホテル Scandicからタクシーに乗り 15分ぐらいで UNNに到着しました タクシーはみなスパイク・タイヤを履いています

この日は二例のCTOが準備されていました 一例目は過去二回逆行性にトライされ不成功に終わった右冠動脈近位部から末梢分岐部までの長い 20年以上もののCTOでした 過去に冠動脈バイパス手術を受けていましたが、残っているのは左冠動脈前下行枝へのLITAグラフトと左回旋枝末梢へのRITAグラフトのみであり、右冠動脈へのSVGは閉塞しており、ICD挿入し、EF 20%という症例でした 患者さん(漁師さん)の症状は息切れという心不全のものであり、狭心症はありませんでした これまでに行われた手技で右冠動脈は入口部から末梢まで長い解離となっておりましたが、それは逆行性および順行性に形成された解離のためでした また、左冠動脈前下行枝からの中隔枝ではFielder-XTが中隔枝の中でトラップされ断裂して残っていました 右冠動脈#3はひどい石灰化があり、何しろ末梢もあまり造影されず、「これは無理でしょ」という症例でした

9:00AM頃よりスタートし、12:30まで両側性にねばり、逆行性にも#3末梢には何とか Conquest-Proを到達させ、順行性にも解離腔の中を進め Ultimate/Conquest-Proで両側性に攻めましたがガチガチであり、これ以上のトライは無理と判断し、撤退しました

二例目は 13:00より開始となりました 問題は 15:00にはこの病院を出て Tromso空港に向かい、フィンランドの Oulu (オウル)に飛びねばならない、ということでした そう二時間しか無いのです

二例はやはり逆行性アプローチ不成功例であり、左冠動脈前下行枝近位部からのCTOでした 左冠動脈前下行枝には高度石灰化がありましたが、一例目よりも成功する可能性は高いと考えられました 副血行路としては中隔枝一本と、左回旋枝から対角枝へのもののあわせて二本ありましたが、両者とも cork screw状であり、前回トライされた時には、この二本とも造影剤がにじみだしたり、解離のため閉塞してしまっていました そのトライは去年の10月でした これらが使い物にならないとまず成功のチャンスは無い、そう考えながら手技に入りました

慎重に造影し、中隔枝一本を狙いました ひどくcork screwとなっている中隔枝を巧みにSUOH03でうまいこと通過させました そして Corsairを左冠動脈前下行枝まで持ち込んだのですが ここまでは10分もかかりませんでした 「さあ、これで空港に向かえる」と、思ったのですが ここからが大変でした

左冠動脈前下行枝近位部では中隔枝と、対角枝を出した部分でつるつるにCTOであり、石灰化もひどく順行性にはどう考えても無理でした もちろん試しましたがつるつるでした 逆行性にも二番目の対角枝を分岐した部分で石灰化閉塞しておりワイヤーは簡単にその二番目対角枝に向かい、どうしても閉塞近位には向けられないのです

そこを何とか Ultimate/Conquest-Proで左冠動脈前下行枝近位の方向に無理やり向けて、第一対角枝にIVUSをつっこみながらワイヤーを近位に導きましたが当然のことながら解離腔を進みます あまり解離腔を進めば閉塞近位端が左主幹部に近いため、この段階で左回旋枝にワイヤーを挿入し、いざという事態に備えました

ワイヤーをConquest-Proにして何回もトライしてようやく左冠動脈前下行枝真腔に抜けました しかし、CorsairはCTO部分には全く入りません バルーン・アンカーをかけようにも左主幹部でバルーンを膨らまさざるを得ませんのでそれは無理な相談です 順行性ガイディングの中に逆行性Conqeust-Proはどうしても入りません

さらに問題はこのような操作の段階で Corsairと中を通しているワイヤーとの滑りが急速に悪化してきたのです 結局4mm snairがあったのでそれで捕獲し、何とか順行性ガイディング内に Conquest-Proを持込、スネアで引っ張りながら無理やり 逆行性Corsairを順行性ガイディング内に導入しました

ここからはワイヤーを抜いて RG-3に交換すれば簡単なはずでしたが、何と今度はガイディング・カテーテルの中で Snairにより捕獲された Conquest-Proが開放されないのです 全く抜けなくなったのです 順行性ガイディング・カテーテルは左冠動脈前下行枝内に深く入ろうとします そこで、Corsair内の Conqeust-Proを延長してCorsairのみを引き抜こうとしたところ、何と Extension-wiereの接合部が、Corsair遠位端から20CMぐらいの部分で全く通過できないのです 要するに Corsairの内腔が破壊されているのです これは大変な事態です 順行性 Snairと逆行性 Corsairを互いに押したり引いたりして何とか Snairが逆行性 Conquest-Proを解き放つことに成功したのですが、それと共に折角CTO部分を通過していた CorsairはCTO遠位まですっぽり抜けてしまったのです それでもワイヤーを入れなおせば良いのですが、さっきも言いましたように今度はその 20CM部分でいかなるワイヤーも通過しなくなったのです 完全 Corsair内腔が破壊されているのです

この事態にはカテ室の皆が「あー」とがっかりしたのです 順行性に造影してもCTO部分で全く造影されないのです せっかく Corsairが通過したにもかかわらず その腔は閉塞しているのです どうしようもありません でも僕はそんことでは負けません、順行性ガイディングから Ultimateを持込み、信念で順行性に通過させました そして順行性 Corsairを用いて Sionに変更しこれは左冠動脈前下行枝末梢まで綺麗に通過し、 2.0 x 20mm balloonを順行性に持込み、CTO部分を拡張しました そして順行性ガイディングより造影すると綺麗に左冠動脈前下行枝が写ったのです

Tromsoの先生方と
Tromsoの先生方と

この段階で既に空港に向かう時間となりましたので、あとのステント植え込みは病院の先生方に任せ 僕は Tromso空港に向かいました

何とか困難を打開してやりきった充実感がありました Tromsoから Ouluまでは一日一便平日のみ飛行機が飛んでいます これを逃すと 12時間かけて Tromso -> Oslo -> Helsinki -> Ouluと飛行機を乗り継がねばならないのです Ouluは以前携帯電話で世界を席巻していた Nokiaがあり、世界の無線通信技術の中心です とは言うものの Tromso -> Ouluを飛ぶ人はほとんどおらず、小さな飛行機はガラガラでした

充実感
充実感

実はこの飛行機は、Swedenの Luleo (ルーレオ)という海岸沿いの街に一旦おり、そこで乗客を乗り降りしてから、再び Ouluに向けて飛び立ったのです 結局この飛行機は何と Norway -> Sweden -> Finlandと三カ国を股にかけて飛んだのですね 何れにしてもついにこうしてフィンランドに足を踏み入れました

Map of Tromso, Lulea and Oulu
Map of Tromso, Lulea and Oulu