昨日のバンケット (Banquet)

昨日症例を 2時間ぐらい終えて、Welcome Dinner Party (Banquet)の会場に急ぎました。会場はオリンピック競技場のすぐ近くに作られた国家会議中心の4階でした。僕は、事前にその席上で挨拶のスピーチをするように言われていましたが、それがそんなに大きなパーティーだとは予想だにしていなかったのです。

昨日のパーティーは、僕が今まで経験したどんなパーティーよりも大きなものでした。丸テーブルが何と 130卓あり、それぞれに 10名超の参加者が着席したのです。そして、前列には大きな長方形のテーブルがあり、僕は Goa Runlin先生と、Hu Dayi先生に挟まれ、真ん中に正面を向いて座らされたのです。その長方形のテーブルには、アメリカ、ヨーロッパなどから著名な心臓外科の先生が、そして、世界麻酔学会会長とか、日本からは東京医科歯科大学教授が、世界心電図学会会長として参列しています。このテーブルには総勢60名ぐらいか座りました。

そして、挨拶は最初に中国心臓病学会会長が、次にいきなり僕が指名されたのです。もう全くのぶっつけ本番です。インターベンションを代表し、しかもアジアを代表して話をしました。昨日のライブ症例を例に挙げ、ヨーロッパやアメリカとは異なる現状、だからこそ互いの友好と交流が必要であることをはなししました。その中では、漫然たる心臓外科に大して批判的なことも話しました。

いやー 汗が出ましたね。こんな大きな会でいきなりスピーチできる日本人ってそんなにいないですよね。何しろ日本人は本番に極端に弱いのです。精神力というか胆力が足らないです。甘えた日本人ばかりです。

本日午前中にあった TRI Compititionは中国、台湾、香港の先生方が発表されました。全てTRIによるCTOばかりで、食傷気味でした。そしていま、BCIA (Beijing Capital International Airport)にいます。これから暫くして羽田行きの便で帰国します。

本日の予定

本日はもうかれこれ5年以上この中国で継続している TRI Competitionというのを開催し、その主催者として座長をずっと午前中します。

中国では僕が1997年頃TRIを導入してから、現在では全症例の 80%近くが行われているのです。大病院のみならず小病院でも行われており、そこでの優秀な医師を発掘する試みとして行ってきました。基本的に自分で行ったTRI症例の中で優れたものを呈示して頂き、それを複数の審査員が採点して集計し、トップを毎年選ぶ、というものです。事前にインターネットで一次審査がされています。

その後は、DRAGON Trialの最終打ち合わせを行い、そして羽田に戻ります。北京で困るのは、インターネット接続が制限される場合がある、ということです。時には Google検索そのものがブロックされたりします。今朝もそのために必要なページにアクセスできない状況です。帰国してからアクセスするしかありません。

昨日のライブデモンストレーション

昨日は一例慢性完全閉塞の治療をライブデモンストレーションで行いました。

症例は75歳くらいの男性で、CCS class 2の労作性狭心症患者さんでした。これまで、心筋梗塞の既往や、PCIあるいはCABGの既往はありませんでした。診断造影では、左主幹部遠位三分岐の病変+左冠動脈前下行枝入口部からの石灰化した慢性完全閉塞でした。

通常であれば、CABGに決まっていますが、患者さんが手術を拒否された、という理由でPCIになりました。

そのような状況ですので、順行性に行くにはあまりにも危険ですし、もちろん慢性完全閉塞部分はつるつるであり、何のとっかかりもありません。右冠動脈から良好な副血行が、conus branchを介して前下行枝心尖部に行っているのですが、これは蛇行がひどくとても使えません。PCIの時に造影して良く見ると中隔枝が使えそうです。一番遠位の中隔枝が比較的太いのですが、右冠動脈から分かれてすぐにhair-pin curveがありました。まずはそれから試みたのですが、案の定このヘアピンを越えません。その一つ手前の中隔枝を狙いました。ワイヤーは途中心室性期外収縮を出しながら何とか前下行枝近くまで行くのですが、前下行枝の中に入りません。そこでCorsairを進めるのですが、右冠動脈から中隔枝に入ったところで全く進みません。延長して、Finecrossに置換したのですが、同様に進みません。1.25mm balloonに交換しましたが同様でした。そうこうする内にワイヤーは中隔枝から抜けてしまいます。慌てずワイヤーをplastic-jacket hydrophilic wireに交換し、再度その中隔枝通過を狙いますが、今度は途中で行きません。そこで、先端造影して、ぐちゃぐちゃに既になっている中隔枝を造影で確認し、再度狙って今度はワイヤーを通過させました。しかし、そうは言っても同様にCorsiarなどが通過できないことは目に見えていたので、今度はワイヤー交換の時に思い切って7Fr guiding catheterの中に5Fr 子カテを入れて臨んだのです。もちろんこの時の予想される問題点は、Corsaiの長さが足りるか? というものですよね。可能な限り右冠動脈の中に子カテを進め、Corsairを押しこんだところ、今度は通過できなかった部分を越えていきました。しかし、もうCorsairがお尻にきいてます。そこで、メインの7Fr GCを右冠動脈内に深く挿入し、5Fr子カテも#4PD入口部まで進めました。もちろん患者さんは胸痛を訴え、ST II, III, aVFは上昇しました。それでも続けざるを得ませんでしたので、Corsairを押しこんでようやくCorsiarは前下行枝に抜けました。それから子カテをぎりぎりまで引いて虚血を解除し、Miracle 3により慢性完全閉塞部分の遠位から左主幹部への穿通をこ試みました。案の定慢性完全閉塞は固かったのですが、一か所通りやすい部分があり、その部分を通過して、左主幹部そして大動脈に抜けました。

問題はそれからです、順行性ガイディング・カテーテルからIVUSを入れて、逆行性ワイヤー (Miracle 3)が真腔を通過して大動脈に抜けていることを確認したのですが、何しろ長さが足りず、Corsairで慢性完全閉塞部分を通過することができないのです。従って、やわらかいワイヤーに置換して、順行性ガイディング・カテーテル内への逆行性ワイヤー挿入を試みるのは危険です。色々考えた末、順行性ガイディング・カテーテルから鈍角枝にワイヤーを挿入し、そのワイヤーを深く押しこんで順行性ガイディング・カテーテルを左主幹部で浮かし気味にして、ガイディング・カテーテルの向きを調整しながら逆行性Miracle 3を何とか順行性ガイディング・カテーテル内に回収しました。こうなればしめたものです。順行性ガイディング・カテーテル内で3.0mm balloonを拡張することによって traction anchoringを行い無理やりCorsairを順行性ガイディング・カテーテル内に引き込みました。それからは、300CMワイヤーを用いて型の通り行い、左主幹部から前下行枝にかけて Xience-Vを三本植え込み最終的には綺麗な仕上がりで終了しました。

みんな大喜びで、助手の先生からは、その時メインの助手と、それ以外に2名の助手、合計3名の中国人医師が助手について下さったのですが、「またファンが増えました」と、言われました。

僕の手技が放映される前に日本人のある医師が講演していました。術者として当然マイクとイヤフォンをつけているので、その内容が聞こえます。最初は慢性完全閉塞に対するTRIの効用について、続けて慢性完全閉塞に対する逆行性アプローチについての講演だったようです。内容は問題ありません。しかし、その医師の普段の診療に対する姿勢を伝え聞いていましたのでとても評価できませんでした。そんなことを思いながら黙々とPCIを続けました。最後にその患者さんが、とても嬉しそうに「ありがとうありがとう」と言って下さったことが良かったな、と思いました。