いやあ大変でしたねー

昨日は一回延期した患者さんのTAVIを行いました この患者さんは体全体が小さく当初より 20mm径の SAPIEN-XTによる治療を予定していましたが、色々な事情で 2週間延期となっていた患者さんです この間にも大動脈弁狭窄症の程度は進行し、大動脈弁最大流速は 5m/Secを優に超えていました 要するにあまり時間の猶予は無い、そんな状況に追い込まれていたのです

狭心症もありそれに対しては他院でDESによる治療されていました 年齢は 90歳に近いのですが、患者さんはとてもしっかりした方で本来自立されていました 年齢や慢性腎臓病の存在、そして呼吸機能の低下から外科的大動脈弁置換術のリスクは extremely highと判断され、TAVIでしか治療の道は無い方でした

しかし、TAVIで治療する上では色々な問題点が事前から予想されました

  1. 体が非常に小さい 実際体表面積は 1.08平方メートルしかありませんでした これまで当院で治療させて頂いたTAVI患者さんの中でも極めて小さな方です
  2. 慢性腎臓病がある (eGFR < 30 ml/min)
  3. 呼吸機能の低下(これはあまり大したことない)
  4. 弁尖の高度石灰化
  5. 冠動脈 特に左冠動脈の高さが低い (10.3mm)
  6. バルサルバ洞が小さく寸胴な大動脈基部
  7. 何より一番の問題は太い方の右総腸骨動脈内径が 4.6 x 4.7mmしか無い そして腹部大動脈も下では 6mmぐらいしか無い
  8. 左室内腔がほとんど収縮期に無くなるし、中隔肥厚も強い

これらのことが大きな問題点でした 特に総腸骨動脈の径が小さく、これが一番大きな問題点でした

何故ならば SAPIEN-XT 20mmというのは、TF(経大腿動脈アプローチ)でしか用いることができず、TA(経左室心尖アプローチ)などでは挿入することができないのです そしてTFのシースは e-Sheath 18Frつまり拡張した時の外径は 22Fr  – 24Frということで 7mm以上になるのです

経験豊かな血管外科の先生方を含め当院ハートチームで戦略を練りました そして、経皮的に TFで行くことを決定し、また弁が植え込み時に弾き出されないように、敢えて pacing rateを 200/minで行うことに決めました 実際にTFでこの太い deviceを持ち込もうとしても何しろ物理的に通る訳が無く、大変な苦労をしましたが、血管外科医の口助けもあり、皆で力を併せようやくディバイスを大動脈に持ち込むことに成功 そして 200/minの rapid pacingを行い無事絶妙の位置に 20mm THVを植えこむことに成功しました

弁を大動脈弁に通過させた時から患者さんは血圧 40mmHg以下のショックが遷延しました これに対して麻酔科の先生と協議しながらそのまま続行しました 植込み後暫く低血圧ショック遷延し、一時は PCPS(経皮的人工心肺)の準備に入ろうとしましたが、ようやく血圧戻りその必要はありませんでした

そして、シースの抜去でしたが、これも造影しながら慎重に総腸骨動脈破裂を警戒したのですが、大丈夫、そして今朝は患者さんとてもお元気で本当に本当に良かったなあ