New Yorkから時差ボケ

先週末は AIM-Radialという学会で New York University Hospitalからライブデモンストレーションを飛ばしました

NYUというのは非常に大きな大学病院であり、30階建ぐらいの巨大なmain buildingの上層階にカテ室もありました この建物はまだできて数年の新しい建物ですが、昨年のハリケーン・カトリーヌで高潮被害に遭い、今でも地下の救急セクションは閉鎖されたままだということです NYUは East River沿いにあるので被害が大きかったのでしょう

ライブデモンストレーションでは、鎖骨下動脈が変形していたため、苦労しましたがきちんとやり遂げました

その後、AIM-Radialでは、僕がかれまでTRIの世界での普及に尽くしてきた功績に対して表彰が行われました

帰国してからも、忙しい日々が続き、おまけにひどい時差ボケでした そして、金曜日には八代に出かけ、土曜日の第七回日韓友好TRIセミナー in 八代を行いました 今回は熊本労災病院松村先生はじめ熊本労災病院の全面的なご協力の下で、韓国から若手循環器医師20名をお招きして開催しました。

この会も既に第七回となり、日中友好TRIと併せて、僕のライフワークの一つとなっています

今回は、慢性完全閉塞二例を含め、3例の治療を行わせて頂きました 慢性完全閉塞は難しいものでしたが、成功裏に終わり満足です いよいよ明日から保険診療下でのTAVIを行うことになります どんどん世界は進んでいます

PCR London Valve

日曜日に成田を出て、当日夕方ロンドンに着きました PCR London ValveというTAVIなどについての最大の学会・ライブに参加するためです

いよいよ日本でもこの10月よりTAVIが保険償還され、この画期的な治療法を日本の大動脈弁狭窄症で苦しんでいる患者さんが受けられるようになるのです

学会では多数のライブデモンストレーション治療が行われました 日本よりも10年以上先を行っているような気がしました

それにしても25年ぶりのロンドンでしたが、寒くて驚きました また、その物価が高いことも驚きです インスタントに近いうどんが何と10ポンドもするのです 1,700円ぐらいです 日本の物価が高いなんて、それよりも随分と高いですよね 驚きです

まあ今は再びヒースロー空港でこれから帰国の途に着きます

今香港です

木曜日の羽田発JAL便で香港に入りました 香港に入るのは2010年以来のことで久しぶり

何だか香港はすごく景気が良さそうで、あちこちで高層ビルが建設中でした

昨日金曜日は朝から Prince of Wales Hospitalに行き、冠動脈インターベンションをすることになっていたのです この病院にもこれまで何回か訪問したことがあり、かつて知ったる病院です ここは公立病院であり、アクティブに冠動脈インターベンションを行っており、最近はTAVIも開始した、とのことでした

Wu先生は香港の中で一番慢性完全閉塞を治療されている先生であり、これまでも僕だけでなく、土金先生などの直接的ご教授を頂いている先生です

朝ホテルを8:15AMに出発したのですが、その時に問題発生です 香港で医療手技を行うには厳しいライセンスが必要ですが、さらに保険に加入するためには、就労ビザが必要です 就労ビザをパスポートに貼って行ったのですが、何と入国管理官がそれを認識せず、Employment Entryというスタンプが押されていなかったのです この状況で手技をすれば大きな問題が発生します 何よりも香港の法律に違反するのです

そこで、病院に到着してから、その実情を Wu先生にお話し、午前中に予定されていた1例の慢性完全閉塞症例は、Wu先生にやって頂き、その間に一度香港を出国し、再入国して就労ビザを発効させることにしました

急遽香港フェリーターミナルに戻り、そこから 10:30AM発のマカオ行き Jet Ferryでマカオに向けて出航しました マカオまではこの高速艇で 40分でした

マカオに入国し、そのまま階段を昇って数分でマカオを出国し、戻りは11:30AM発のヘリコプターで香港に向けて飛び立ちました

香港フェリーターミナルにあるヘリポート到着は11:50AM そこから再度 Prince of Wales Hospitalに向かい、12:30には到着したのです

今度はきちんとライセンス取得した状態でしたので、それから Virtual 2Fr TRIにより三枝病変の女性の三枝を治療し、それから右冠動脈末梢の大きな#4AVの起始部からの慢性完全閉塞を治療しました この症例は心房枝から逆行性アプローチを行いましたが、とにかく難しかったのです それでも最終的にはきれいな仕上がりでとても嬉しかったですね

香港ではTAVIは保険償還されず、現在5つぐらいの病院で行われており、その内の公立病院は3箇所だそうです そして、公立病院では Hong Kong Hospital Authorityから年間10例しか許可されないのだそうです 若い循環器医師は新しい手技であるTAVIに皆興味を持っていて多くの若い先生方がヨーロッパなどに留学して戻って来られているそうですが、残念ながら香港ではそれを活かす機会が無い、とのことでした だから Wu先生はそのような若い先生たちと争って症例をとりたくないから、自分はTAVIをやらないんだ、とそのように仰られていました

本日はこれから Greater China TRI Seminarのライブデモンストレーションです それから深夜便で成田に帰国します

夜明けに立ち会う感激

僕が冠動脈造影を始めたのは、1976年です
そして、冠動脈インターベンションを初めて行ったのは1981年です
幸いその時に、日本のPCIの夜明けに立ち会うことができたのです これは僕の人生の中で一つの大きな記念すべきことであり、医者とてし治療の新たな局面に立ち会うことができて幸せでした
もうそんなことはあまり無い、そのように思ってきました
しかし、それから30年間以上経過した今、再び新たな夜明けに立ち会う感激に浸っています
本日湘南鎌倉総合病院に TAVI/TAVR (経カテーテル大動脈弁植え込み術)の施設認定証が送られてきました 今再び新たな治療法の開始に立ち会うことができるのです これは医者として本当に光栄なことです
これから多くの治療困難な患者さんのために、この困難な病気に立ち向かっていくつもりです

これから札幌

先週金曜日・木曜日と伝説の湘南TRIマニアック・カンファランスの第二回目を湘南国際村センターを舞台に開催しました これは世界にTRIを普及するきっかけとなった、1998年開催の第一回目から実に15年ぶりに開催されたものです オランダより Ferdinand Kiemeneij先生、フランスより Yves Louvard先生もお招きして開催しました

これまでのこのような研究会・学会とは少し違うコンセプトを目指しました まずはとくにかくコストの削減です、そして参加者全員でつくりあげていく会なのです その実現のために、Webサイトの活用と、電子メールの活用を行いました もちろんそれらに用いたプログラムは、僕自身で HTML + CSS + Javascript + jQuery + PHP + SQL を用いて書き挙げた膨大なプログラム群です

会は本当に成功したと思います 素晴らしい回でした 葉山の景色も素晴らしく、東南アジアから参加された先生方もすごく満足されたと思います 日本人の参加者は皆 英語が随分と達者となっておられ、日本という国家の今後に対して安堵を覚えました

そんなこんなで本日は早朝から札幌に向けて出発です 本日は夕方札幌東徳洲会病院で、院内職員向けに経大動脈的大動脈弁植え込み術(TAVI)についての講演を行います 経大動脈的大動脈弁植え込み術は単なる画期的な治療技術のみならず、もっと深いインパクトを医療機関に対して与えます それについての講演です

すさまじい心血管インターベンション

昨日は朝から夕方まで 3例の患者さんに対して TAVI (経大動脈的大動脈弁植え込み術)を行いました ものすごく重症の患者さん達でしたが、全て成功裏に終了し、あらためてTAVIのすごさ、劇的な効果を認識すると共に、手技の困難さ、心の強さの必要性を感じました。

インターベンションの術者としては、ものすごく遣り甲斐があり、また常に学ぶものが新たにある、という点で心を震わされる手技です これは、慢性完全閉塞に対する冠動脈インターベンションといえどもあまり体験できない感覚なのです どんどんTAVIに引き込まれていきます

昨日の患者さん達は、これまでの医療では救えなかったであろう方たちです 本当に良かったです、そのすさまじさは、先日の「激しいPCI」の比ではありませんでした それと共に自分の心もより強くなっていくのを感じます

早くこの素晴らしい治療が認可され、多くの患者さんに適用され、たくさんの人々に恩恵がもたらされることを祈ります

羽田空港ラウンジ

今朝も早く起きて羽田空港に向かいました これから札幌便 8:00AM発に搭乗する予定です この何時も使用している便はちょうど良い時刻で便利なのですが、例の 787騒動のお蔭で 4月からは運休となるらしいのです 困りました JALにしても 30分ずれますので もっと早く起きてもっと早く鎌倉の自宅を出ねばなりません
今日は 4:30PMの便で羽田にとんぼ返りし、今週末にある日本循環器学会総会発表の予行演習をする予定です 皆がんばってたくさんの演題が通りましたので、予行演習といっても膨大な時間が必要です
僕自身も、座長の役割はさておき、Late-breaking sessionでの発表と、Featured Sessionでの慢性完全閉塞についてのKeynote Lectureなど事前に準備せねばならないものがあります そりゃあ外国行けば何時も英語での講演ですが、日本国内でやるとなると少し違うものがあります まあ頑張りましょう
それにしても何の気なしに今週もそれなりに難しいCTOのPCIをいくつかこなしています やはり、時代はTAVIであり、以前ほどCTOに対する興奮は無く、最近はいたって冷静にPCIをするようになっています

本日は札幌

今朝札幌に入りました 千歳はこの冬一番の冷え込みでマイナス15度でした たくかんの外来患者さんが待たれておりました 今年最後の札幌での外来診療を終え、本日は日帰りします
昨日は二ヶ月ぶりの TAVIでした 最近 TAVIというものが体で分かってきたような気持ちがします でも相変わらず学ぶことばかりです
昨夜は竹下くんの送別会を開催しました 竹下くんには四年半に渡り、鎌倉でものすごくお世話になりました 彼が循環器科としての体裁を整えて下さいました これから郷里長崎に戻られ、より一層有意義な人生を送られることを願っています
人生は交差点のようなものですね 色々な人との出会いがあり、ともに同じ道を歩み、別の交差点で違う方向に歩む そんなことの繰り返しです ずっと一緒に歩めれば良いのですが、そんな訳にも行きません その運命を受け入れ、前に進まねばならないでしょう
なんだか美空ひばり的心境です

これから羽田空港

今 羽田空港に移動中です。途中病院に寄り、昨日の TAVIの患者さん達の具合を伺ってきました。お二人ともお元気で、この治療法のすばらしさがまたしても証明されました。

昨日技術的に学んだことですが、我々が使用しているシステムは Self-expandableのものです。もちろんシースによりプロテクトされており、体温により温まった Nitinol合金姓のステントが大動脈基部で自然に拡張することにより、固定されます。頭の中では、その部位でシースを抜けば良い、これだけです。簡単なことです。

しかし、患者さんの体内では話が異なります。

  1. 心臓が強く拍動している – これに対しては rapid pacingである程度対応します
  2. 大腿動脈アプローチの場合には、長い経路、しかも大動脈弓で強く屈曲しているため、その部位で保護シースと大動脈との摩擦抵抗が大きい、しかもこれも心拍動により変化する
  3. 同様の理由により保護シースとステントの間の摩擦抵抗も大きい
  4. 同様の理由によりシステムと、stiff wireとの間の抵抗も大きい

実際の植え込みでは、これらの相反するいくつもの効力に逆らって指摘部位で植え込みを行わねばならないのです。そながら作用反作用をうまいこと魔法のようにコントロールすることが必要なのです。これにはどうやらセンスと経験が必要な気がします。それにようやく気が付いたのです。これはPCIとは全く異なる世界です。術者として技術的な部分で非常に惹かれる部分がありますし、自分にとってのチャレンジでもあります。

ハートチーム (Heart Team)

最近、心臓領域の医学界において、ハートチーム (Heart Team)という言葉が声だかに叫ばれています。この言葉は、もともとヨーロッパ心臓病学会、ヨーロッパ心臓外科学会などが共同で提唱した言葉です。一人の心臓病で苦しんでおられる患者さんを治療するに際しては、循環器内科とか心臓外科とかの単科医師が治療方針を決めるのではなく、共同で最適な治療方針を決めねばならない、というものです。そして、拡大した概念としては、これらの診療科医師のみならず、例えば一般内科医、呼吸器内科医、リハビリ診療医師、地域のかかりつけ医師などのみならず、関連するコメディカル、あるいは在宅ケアチームなどがあわさって一人の患者さんのために治療方針を協議して、決定するというものです。

もちちろん、重要なのは患者さん自身の人生観であり、またそのご家族のご意向もあります。

このようにして治療方針を決定し、後はそれを実行する医師が粛々と全力で治療に当たるのです。これは素晴らしい、当たり前だ、そのように誰しも思われると思います。

もちろんそうです。しかし単純に考えて、それを実現するためには、社会が1名の患者さん : 10 – 100名の医療関係者、という関形式を受け入れ、そのシステム維持構築に対して、支出することを許容する必要があります。また、方針決定に関して、実際に治療に当たる医師が全責任を負う必要が無くなるかも知れません。

うーん こう考えると難しい問題ですね。確かに、個々の医師に治療方針決定を任せてしまえば、独善的な治療がまかり通ってしまいます。その中には医学的におかしい治療もなされることでしょう。これは問題です。

ですから、現実にはこれを提唱しだしたヨーロッパでも、全部の患者さんに対してこのハートチームという概念で運用することを主張している訳ではありません。実際の治療として、医学的に完全には立証されていない治療、たとえば左主幹部病変に対する薬剤溶出性ステント植え込み治療とか、糖尿病を有する三枝病変に対する経皮的冠動脈インターベンション治療とか、そのような患者さんに限定して、ハートチームによる意思決定を呼び掛けているのです。

そして、もう一つ重要な疾病治療として、重症大動脈弁狭窄症患者さんに対する TAVI (経カテーテル的大動脈弁植え込み術: 最近では、特に外科系から、TAVR: 経カテーテル的大動脈弁置換術 という呼び名も好んで用いられます)なのです。

当院で、TAVIの治験を開始することに決まった時、僕は色々なことを考えました。

  1. そのような先進的医療を治験で行えることは自分自身とても光栄である
  2. これまで治験に先進的に意欲的に取り組んできたことが生かされた
  3. 世界の最先端医療に乗り遅れることなく、自分のキャリアが追従できる
  4. 開院以来25年間も経たない当院が、このような先進的治療を率先して行える立場になったことは本当に素晴らしい

などのポジティブな感想、そしてその一方でネガティブな感想というか不安

  1. 当院のような純然たる民間病院、何の冠もついていない民間病院で、そのような先進的医療を行うことは概念的に可能だろうか?
  2. そもそも当院にはこのような先進医療を行うだけの様々なリソースがあるのか?
  3. 病院の姿勢として、このような先進医療遂行を受け入れるものだろうか?
  4. 対象となる患者さんが当院のような民間病院に集まるであろうか?

などなどです。そして、そのような不安の中から思った結論は一つ

このような先進的医療を当院のような無冠民間病院が、大学病院や、国立センターなどに伍して行っていくためには、それらの病院を上回る総合力が必要である

ということでした。そして自然に思いついた概念が ハートチームだったのです。

本日二例目はあっという間に治療が大成功に終了しました。そして、患者さんを手術場から ICUに搬送するまでの皆を 治療成功の余韻を味わいながら見ていました。この一人の患者さんの治療のために、循環器科医師4名、心臓外科医2名、血管外科医1名、麻酔科医2名、エコー指導医1名、エコー検査技師2名、レントゲン技師2名、臨床工学士2名、看護師2名、CRC(臨床試験コーディネーター) 2名、その他5名そして外国からの指導医1名、ざっと数えただけでも、これだけ多数の人々が協力して当たったのです。そして、驚くべきことに、皆が楽しみ喜びながら、その準備や後片付けに当たっているのです。チームという言葉で片付けてしまうにはあまりにも深い連帯感がそこにはあるのです。

TAVIを開始し、色々なことを学んでいます。そして、純粋に医学的、あるいは医療技術的なこと以外にも、このようなチームとは? とか そのようなことについても学んでいます。TAVIを開始して、患者さんに対してはとても良いのですが、それ以上に自分自身にとって、本当に素晴らしい体験です。

しかし、本日の二例目、僕の中では壁を越えた感覚があります。これまで数々の新しい医療技術を伴う手技を経験克服してきました。それらの中である時、壁を越えた感覚を味わうことができます。本日はそのような日でした。