これから羽田空港

今 羽田空港に移動中です。途中病院に寄り、昨日の TAVIの患者さん達の具合を伺ってきました。お二人ともお元気で、この治療法のすばらしさがまたしても証明されました。

昨日技術的に学んだことですが、我々が使用しているシステムは Self-expandableのものです。もちろんシースによりプロテクトされており、体温により温まった Nitinol合金姓のステントが大動脈基部で自然に拡張することにより、固定されます。頭の中では、その部位でシースを抜けば良い、これだけです。簡単なことです。

しかし、患者さんの体内では話が異なります。

  1. 心臓が強く拍動している – これに対しては rapid pacingである程度対応します
  2. 大腿動脈アプローチの場合には、長い経路、しかも大動脈弓で強く屈曲しているため、その部位で保護シースと大動脈との摩擦抵抗が大きい、しかもこれも心拍動により変化する
  3. 同様の理由により保護シースとステントの間の摩擦抵抗も大きい
  4. 同様の理由によりシステムと、stiff wireとの間の抵抗も大きい

実際の植え込みでは、これらの相反するいくつもの効力に逆らって指摘部位で植え込みを行わねばならないのです。そながら作用反作用をうまいこと魔法のようにコントロールすることが必要なのです。これにはどうやらセンスと経験が必要な気がします。それにようやく気が付いたのです。これはPCIとは全く異なる世界です。術者として技術的な部分で非常に惹かれる部分がありますし、自分にとってのチャレンジでもあります。

ハートチーム (Heart Team)

最近、心臓領域の医学界において、ハートチーム (Heart Team)という言葉が声だかに叫ばれています。この言葉は、もともとヨーロッパ心臓病学会、ヨーロッパ心臓外科学会などが共同で提唱した言葉です。一人の心臓病で苦しんでおられる患者さんを治療するに際しては、循環器内科とか心臓外科とかの単科医師が治療方針を決めるのではなく、共同で最適な治療方針を決めねばならない、というものです。そして、拡大した概念としては、これらの診療科医師のみならず、例えば一般内科医、呼吸器内科医、リハビリ診療医師、地域のかかりつけ医師などのみならず、関連するコメディカル、あるいは在宅ケアチームなどがあわさって一人の患者さんのために治療方針を協議して、決定するというものです。

もちちろん、重要なのは患者さん自身の人生観であり、またそのご家族のご意向もあります。

このようにして治療方針を決定し、後はそれを実行する医師が粛々と全力で治療に当たるのです。これは素晴らしい、当たり前だ、そのように誰しも思われると思います。

もちろんそうです。しかし単純に考えて、それを実現するためには、社会が1名の患者さん : 10 – 100名の医療関係者、という関形式を受け入れ、そのシステム維持構築に対して、支出することを許容する必要があります。また、方針決定に関して、実際に治療に当たる医師が全責任を負う必要が無くなるかも知れません。

うーん こう考えると難しい問題ですね。確かに、個々の医師に治療方針決定を任せてしまえば、独善的な治療がまかり通ってしまいます。その中には医学的におかしい治療もなされることでしょう。これは問題です。

ですから、現実にはこれを提唱しだしたヨーロッパでも、全部の患者さんに対してこのハートチームという概念で運用することを主張している訳ではありません。実際の治療として、医学的に完全には立証されていない治療、たとえば左主幹部病変に対する薬剤溶出性ステント植え込み治療とか、糖尿病を有する三枝病変に対する経皮的冠動脈インターベンション治療とか、そのような患者さんに限定して、ハートチームによる意思決定を呼び掛けているのです。

そして、もう一つ重要な疾病治療として、重症大動脈弁狭窄症患者さんに対する TAVI (経カテーテル的大動脈弁植え込み術: 最近では、特に外科系から、TAVR: 経カテーテル的大動脈弁置換術 という呼び名も好んで用いられます)なのです。

当院で、TAVIの治験を開始することに決まった時、僕は色々なことを考えました。

  1. そのような先進的医療を治験で行えることは自分自身とても光栄である
  2. これまで治験に先進的に意欲的に取り組んできたことが生かされた
  3. 世界の最先端医療に乗り遅れることなく、自分のキャリアが追従できる
  4. 開院以来25年間も経たない当院が、このような先進的治療を率先して行える立場になったことは本当に素晴らしい

などのポジティブな感想、そしてその一方でネガティブな感想というか不安

  1. 当院のような純然たる民間病院、何の冠もついていない民間病院で、そのような先進的医療を行うことは概念的に可能だろうか?
  2. そもそも当院にはこのような先進医療を行うだけの様々なリソースがあるのか?
  3. 病院の姿勢として、このような先進医療遂行を受け入れるものだろうか?
  4. 対象となる患者さんが当院のような民間病院に集まるであろうか?

などなどです。そして、そのような不安の中から思った結論は一つ

このような先進的医療を当院のような無冠民間病院が、大学病院や、国立センターなどに伍して行っていくためには、それらの病院を上回る総合力が必要である

ということでした。そして自然に思いついた概念が ハートチームだったのです。

本日二例目はあっという間に治療が大成功に終了しました。そして、患者さんを手術場から ICUに搬送するまでの皆を 治療成功の余韻を味わいながら見ていました。この一人の患者さんの治療のために、循環器科医師4名、心臓外科医2名、血管外科医1名、麻酔科医2名、エコー指導医1名、エコー検査技師2名、レントゲン技師2名、臨床工学士2名、看護師2名、CRC(臨床試験コーディネーター) 2名、その他5名そして外国からの指導医1名、ざっと数えただけでも、これだけ多数の人々が協力して当たったのです。そして、驚くべきことに、皆が楽しみ喜びながら、その準備や後片付けに当たっているのです。チームという言葉で片付けてしまうにはあまりにも深い連帯感がそこにはあるのです。

TAVIを開始し、色々なことを学んでいます。そして、純粋に医学的、あるいは医療技術的なこと以外にも、このようなチームとは? とか そのようなことについても学んでいます。TAVIを開始して、患者さんに対してはとても良いのですが、それ以上に自分自身にとって、本当に素晴らしい体験です。

しかし、本日の二例目、僕の中では壁を越えた感覚があります。これまで数々の新しい医療技術を伴う手技を経験克服してきました。それらの中である時、壁を越えた感覚を味わうことができます。本日はそのような日でした。

 

 

やはり Exciting!!

本日は朝から TAVIです。日本人の Intervetional Cardiologistとしてはトップ・レベルの経験を積みつつある私達ですが、毎回毎回学ぶことが多々あります。

そして何より思うのは、心の強さの必要性です。瞬時の判断力と、それを可能にする心の強さが一番重要な気がします。その次に必要なのは経験でしょう。もちろん、これらの前提には医師としての使命感とか、カテーテル技術の洗練度が必須条件としてあります。

昼の breakの後、また午後あります。最善を尽くし、多くの患者さんに役立てたいと思います。

これから羽田空港

昨日の患者さん達のご様子を ICUで診てから、今羽田空港に向かっています。始発 6:10AM発の長崎便に乗り、本日は島原に日帰り出張です。本日は泉川病院での院内ライブデモンストレーションがあり、その術者として出かけます。

きつい日程ではありますが、やはり TAVIを遂行する責務があり、このような日程となりました。

とても有意義な一日

:本日は朝から TAVIを行いました。とても難しい症例 3例でしたが、満足すべき結果でした。色々と勉強し、医師としての遣り甲斐もあり、また強い心の必要性を痛感しました。

それと共に、本当に今の湘南鎌倉総合病院Heart Teamは素晴らしい、そのように思いました。こんなに素晴らしいチームは他に無いのではないでしょうか

ものすごい重症の大動脈弁狭窄症が、 TAVIによる治療によって、瞬時に劇的に改善するのです。その劇的さに、時に患者さんの体が変化についていけないのです。さながら一週間ぐらい宇宙に滞在した宇宙飛行士が地球に帰還してもすぐには歩けないように、いや、逆ですね、これまで地球上に住んでいた人が宇宙に出て無重力状態の中で自分の体をコントロールできない、そんな感じでしょうか

それまでは極端に狭くなった大動脈弁に抗して無理やり血液を全身に送り出そうとしてきた左心室、そして、それでも全身の組織の血流は低下し、ぎりぎりでやっていた体に、急に TAVIにより大動脈弁の機能が正常化するため、突然後負荷が取れた心臓はより一層収縮し、また全身に豊富な血液が流れるため、これまで足りなかった部分にも血液が流れ、相対的に全身循環血液量が足りなくなるのです これらの急激な変化は Afterload Mismatchとも呼ばれています。実際に目の前でこれが起こる、その急激な生理変化は驚くべきものです。

もう今から35年も前のことですが、兵庫医科大学胸部外科で3ヶ月間心臓外科医としての研修を受けた時のことです。当時開心術の後、心臓外科医は泊まり込みで、患者さんの術後管理にあたりました。その術後管理では微妙に点滴の量を変えたり、数少ない薬剤投与量を微妙に変化させたり、それこそ大変な管理をしていたのです。その時、僕の指導医に聞きました、「どうして術後管理が必要なのですか? 手術がきちんとされれば、術後管理なんて必要無いのではないのですか? 術後管理が必要、ということは手術が不完全だからではないですか?」 これに対して、その指導医は、「いや違うんだ、術後管理をきちんとすれば、患者さんの立ち上がりが早いんだ」、そのように僕に答えました。

しかし、当時の僕は、「そんなことは無いだろう、体は良い手術をすれば自分で回復するだろう」と、思っていました。そして、その後も35年間ずっと心の中ではそのように信じてきました。

しかし、本日それが間違っていた、そのように理解できたのです。そもそも人間はそのような急激な変化には自分の力のみでは耐えられないのです。だからこそきちんとした管理が必要なのですね。まったく35年間にして初めて学んだことでした。

今日の症例はとても大変でしたが、本当に自分は医者だ、ということを実感した次第です。

新たな世界

昨日 TAVIを行いました これまで培ってきた心臓カテーテル検査そして、冠動脈インターベンションあるいは経皮的心臓弁治療の技術と知識、それら全部が必要ですが、それだけでは決して超えられない世界、それが TAVIの世界です そして僕にとっては、心から Heart Teamの必然性、そしてそれが具体的にどういうものか、それらを理解するに至らせるものでもあります

昨日はこれまで行なってきた TAVIとは違う新たなテクニックによる治療でした これまで治療できない方々に対する治療でした ある種の冷静な緊張の中で手技が行われました 緊張しすると共に冷静になり、的確な判断をできるようになるのです 患者さんたちがその結果良くなられ、一安心です

また明日 TAVIがあります 患者さんをこのように治療できる機会に恵まれ、医師としてとても幸せであります

TAVI無事終了

今日の患者さんもとても小柄な方であり、本当に難しく、かつ危険な状態でした。しかし、強い心と皆の協力で無事大成功に終了しました。その最中はとてもハイテンションです。ものすごいストレスと緊張ですが、そんな状況が好きな自分があります。

それにしてもTAVIはすごい治療です。あっという間に黒が白になるように病態が改善するのです。そして、素早く回復されるのです。PCIもすばらしい治療法ですが、そのレベルが格段に違うように思います。その治療法に徐々に自分自身が適応していくのが分かり、それが嬉しいと思います。