夜明けに立ち会う感激

僕が冠動脈造影を始めたのは、1976年です
そして、冠動脈インターベンションを初めて行ったのは1981年です
幸いその時に、日本のPCIの夜明けに立ち会うことができたのです これは僕の人生の中で一つの大きな記念すべきことであり、医者とてし治療の新たな局面に立ち会うことができて幸せでした
もうそんなことはあまり無い、そのように思ってきました
しかし、それから30年間以上経過した今、再び新たな夜明けに立ち会う感激に浸っています
本日湘南鎌倉総合病院に TAVI/TAVR (経カテーテル大動脈弁植え込み術)の施設認定証が送られてきました 今再び新たな治療法の開始に立ち会うことができるのです これは医者として本当に光栄なことです
これから多くの治療困難な患者さんのために、この困難な病気に立ち向かっていくつもりです

これから札幌

先週金曜日・木曜日と伝説の湘南TRIマニアック・カンファランスの第二回目を湘南国際村センターを舞台に開催しました これは世界にTRIを普及するきっかけとなった、1998年開催の第一回目から実に15年ぶりに開催されたものです オランダより Ferdinand Kiemeneij先生、フランスより Yves Louvard先生もお招きして開催しました

これまでのこのような研究会・学会とは少し違うコンセプトを目指しました まずはとくにかくコストの削減です、そして参加者全員でつくりあげていく会なのです その実現のために、Webサイトの活用と、電子メールの活用を行いました もちろんそれらに用いたプログラムは、僕自身で HTML + CSS + Javascript + jQuery + PHP + SQL を用いて書き挙げた膨大なプログラム群です

会は本当に成功したと思います 素晴らしい回でした 葉山の景色も素晴らしく、東南アジアから参加された先生方もすごく満足されたと思います 日本人の参加者は皆 英語が随分と達者となっておられ、日本という国家の今後に対して安堵を覚えました

そんなこんなで本日は早朝から札幌に向けて出発です 本日は夕方札幌東徳洲会病院で、院内職員向けに経大動脈的大動脈弁植え込み術(TAVI)についての講演を行います 経大動脈的大動脈弁植え込み術は単なる画期的な治療技術のみならず、もっと深いインパクトを医療機関に対して与えます それについての講演です

すさまじい心血管インターベンション

昨日は朝から夕方まで 3例の患者さんに対して TAVI (経大動脈的大動脈弁植え込み術)を行いました ものすごく重症の患者さん達でしたが、全て成功裏に終了し、あらためてTAVIのすごさ、劇的な効果を認識すると共に、手技の困難さ、心の強さの必要性を感じました。

インターベンションの術者としては、ものすごく遣り甲斐があり、また常に学ぶものが新たにある、という点で心を震わされる手技です これは、慢性完全閉塞に対する冠動脈インターベンションといえどもあまり体験できない感覚なのです どんどんTAVIに引き込まれていきます

昨日の患者さん達は、これまでの医療では救えなかったであろう方たちです 本当に良かったです、そのすさまじさは、先日の「激しいPCI」の比ではありませんでした それと共に自分の心もより強くなっていくのを感じます

早くこの素晴らしい治療が認可され、多くの患者さんに適用され、たくさんの人々に恩恵がもたらされることを祈ります

羽田空港ラウンジ

今朝も早く起きて羽田空港に向かいました これから札幌便 8:00AM発に搭乗する予定です この何時も使用している便はちょうど良い時刻で便利なのですが、例の 787騒動のお蔭で 4月からは運休となるらしいのです 困りました JALにしても 30分ずれますので もっと早く起きてもっと早く鎌倉の自宅を出ねばなりません
今日は 4:30PMの便で羽田にとんぼ返りし、今週末にある日本循環器学会総会発表の予行演習をする予定です 皆がんばってたくさんの演題が通りましたので、予行演習といっても膨大な時間が必要です
僕自身も、座長の役割はさておき、Late-breaking sessionでの発表と、Featured Sessionでの慢性完全閉塞についてのKeynote Lectureなど事前に準備せねばならないものがあります そりゃあ外国行けば何時も英語での講演ですが、日本国内でやるとなると少し違うものがあります まあ頑張りましょう
それにしても何の気なしに今週もそれなりに難しいCTOのPCIをいくつかこなしています やはり、時代はTAVIであり、以前ほどCTOに対する興奮は無く、最近はいたって冷静にPCIをするようになっています

本日は札幌

今朝札幌に入りました 千歳はこの冬一番の冷え込みでマイナス15度でした たくかんの外来患者さんが待たれておりました 今年最後の札幌での外来診療を終え、本日は日帰りします
昨日は二ヶ月ぶりの TAVIでした 最近 TAVIというものが体で分かってきたような気持ちがします でも相変わらず学ぶことばかりです
昨夜は竹下くんの送別会を開催しました 竹下くんには四年半に渡り、鎌倉でものすごくお世話になりました 彼が循環器科としての体裁を整えて下さいました これから郷里長崎に戻られ、より一層有意義な人生を送られることを願っています
人生は交差点のようなものですね 色々な人との出会いがあり、ともに同じ道を歩み、別の交差点で違う方向に歩む そんなことの繰り返しです ずっと一緒に歩めれば良いのですが、そんな訳にも行きません その運命を受け入れ、前に進まねばならないでしょう
なんだか美空ひばり的心境です

これから羽田空港

今 羽田空港に移動中です。途中病院に寄り、昨日の TAVIの患者さん達の具合を伺ってきました。お二人ともお元気で、この治療法のすばらしさがまたしても証明されました。

昨日技術的に学んだことですが、我々が使用しているシステムは Self-expandableのものです。もちろんシースによりプロテクトされており、体温により温まった Nitinol合金姓のステントが大動脈基部で自然に拡張することにより、固定されます。頭の中では、その部位でシースを抜けば良い、これだけです。簡単なことです。

しかし、患者さんの体内では話が異なります。

  1. 心臓が強く拍動している – これに対しては rapid pacingである程度対応します
  2. 大腿動脈アプローチの場合には、長い経路、しかも大動脈弓で強く屈曲しているため、その部位で保護シースと大動脈との摩擦抵抗が大きい、しかもこれも心拍動により変化する
  3. 同様の理由により保護シースとステントの間の摩擦抵抗も大きい
  4. 同様の理由によりシステムと、stiff wireとの間の抵抗も大きい

実際の植え込みでは、これらの相反するいくつもの効力に逆らって指摘部位で植え込みを行わねばならないのです。そながら作用反作用をうまいこと魔法のようにコントロールすることが必要なのです。これにはどうやらセンスと経験が必要な気がします。それにようやく気が付いたのです。これはPCIとは全く異なる世界です。術者として技術的な部分で非常に惹かれる部分がありますし、自分にとってのチャレンジでもあります。

ハートチーム (Heart Team)

最近、心臓領域の医学界において、ハートチーム (Heart Team)という言葉が声だかに叫ばれています。この言葉は、もともとヨーロッパ心臓病学会、ヨーロッパ心臓外科学会などが共同で提唱した言葉です。一人の心臓病で苦しんでおられる患者さんを治療するに際しては、循環器内科とか心臓外科とかの単科医師が治療方針を決めるのではなく、共同で最適な治療方針を決めねばならない、というものです。そして、拡大した概念としては、これらの診療科医師のみならず、例えば一般内科医、呼吸器内科医、リハビリ診療医師、地域のかかりつけ医師などのみならず、関連するコメディカル、あるいは在宅ケアチームなどがあわさって一人の患者さんのために治療方針を協議して、決定するというものです。

もちちろん、重要なのは患者さん自身の人生観であり、またそのご家族のご意向もあります。

このようにして治療方針を決定し、後はそれを実行する医師が粛々と全力で治療に当たるのです。これは素晴らしい、当たり前だ、そのように誰しも思われると思います。

もちろんそうです。しかし単純に考えて、それを実現するためには、社会が1名の患者さん : 10 – 100名の医療関係者、という関形式を受け入れ、そのシステム維持構築に対して、支出することを許容する必要があります。また、方針決定に関して、実際に治療に当たる医師が全責任を負う必要が無くなるかも知れません。

うーん こう考えると難しい問題ですね。確かに、個々の医師に治療方針決定を任せてしまえば、独善的な治療がまかり通ってしまいます。その中には医学的におかしい治療もなされることでしょう。これは問題です。

ですから、現実にはこれを提唱しだしたヨーロッパでも、全部の患者さんに対してこのハートチームという概念で運用することを主張している訳ではありません。実際の治療として、医学的に完全には立証されていない治療、たとえば左主幹部病変に対する薬剤溶出性ステント植え込み治療とか、糖尿病を有する三枝病変に対する経皮的冠動脈インターベンション治療とか、そのような患者さんに限定して、ハートチームによる意思決定を呼び掛けているのです。

そして、もう一つ重要な疾病治療として、重症大動脈弁狭窄症患者さんに対する TAVI (経カテーテル的大動脈弁植え込み術: 最近では、特に外科系から、TAVR: 経カテーテル的大動脈弁置換術 という呼び名も好んで用いられます)なのです。

当院で、TAVIの治験を開始することに決まった時、僕は色々なことを考えました。

  1. そのような先進的医療を治験で行えることは自分自身とても光栄である
  2. これまで治験に先進的に意欲的に取り組んできたことが生かされた
  3. 世界の最先端医療に乗り遅れることなく、自分のキャリアが追従できる
  4. 開院以来25年間も経たない当院が、このような先進的治療を率先して行える立場になったことは本当に素晴らしい

などのポジティブな感想、そしてその一方でネガティブな感想というか不安

  1. 当院のような純然たる民間病院、何の冠もついていない民間病院で、そのような先進的医療を行うことは概念的に可能だろうか?
  2. そもそも当院にはこのような先進医療を行うだけの様々なリソースがあるのか?
  3. 病院の姿勢として、このような先進医療遂行を受け入れるものだろうか?
  4. 対象となる患者さんが当院のような民間病院に集まるであろうか?

などなどです。そして、そのような不安の中から思った結論は一つ

このような先進的医療を当院のような無冠民間病院が、大学病院や、国立センターなどに伍して行っていくためには、それらの病院を上回る総合力が必要である

ということでした。そして自然に思いついた概念が ハートチームだったのです。

本日二例目はあっという間に治療が大成功に終了しました。そして、患者さんを手術場から ICUに搬送するまでの皆を 治療成功の余韻を味わいながら見ていました。この一人の患者さんの治療のために、循環器科医師4名、心臓外科医2名、血管外科医1名、麻酔科医2名、エコー指導医1名、エコー検査技師2名、レントゲン技師2名、臨床工学士2名、看護師2名、CRC(臨床試験コーディネーター) 2名、その他5名そして外国からの指導医1名、ざっと数えただけでも、これだけ多数の人々が協力して当たったのです。そして、驚くべきことに、皆が楽しみ喜びながら、その準備や後片付けに当たっているのです。チームという言葉で片付けてしまうにはあまりにも深い連帯感がそこにはあるのです。

TAVIを開始し、色々なことを学んでいます。そして、純粋に医学的、あるいは医療技術的なこと以外にも、このようなチームとは? とか そのようなことについても学んでいます。TAVIを開始して、患者さんに対してはとても良いのですが、それ以上に自分自身にとって、本当に素晴らしい体験です。

しかし、本日の二例目、僕の中では壁を越えた感覚があります。これまで数々の新しい医療技術を伴う手技を経験克服してきました。それらの中である時、壁を越えた感覚を味わうことができます。本日はそのような日でした。

 

 

やはり Exciting!!

本日は朝から TAVIです。日本人の Intervetional Cardiologistとしてはトップ・レベルの経験を積みつつある私達ですが、毎回毎回学ぶことが多々あります。

そして何より思うのは、心の強さの必要性です。瞬時の判断力と、それを可能にする心の強さが一番重要な気がします。その次に必要なのは経験でしょう。もちろん、これらの前提には医師としての使命感とか、カテーテル技術の洗練度が必須条件としてあります。

昼の breakの後、また午後あります。最善を尽くし、多くの患者さんに役立てたいと思います。

これから羽田空港

昨日の患者さん達のご様子を ICUで診てから、今羽田空港に向かっています。始発 6:10AM発の長崎便に乗り、本日は島原に日帰り出張です。本日は泉川病院での院内ライブデモンストレーションがあり、その術者として出かけます。

きつい日程ではありますが、やはり TAVIを遂行する責務があり、このような日程となりました。

とても有意義な一日

:本日は朝から TAVIを行いました。とても難しい症例 3例でしたが、満足すべき結果でした。色々と勉強し、医師としての遣り甲斐もあり、また強い心の必要性を痛感しました。

それと共に、本当に今の湘南鎌倉総合病院Heart Teamは素晴らしい、そのように思いました。こんなに素晴らしいチームは他に無いのではないでしょうか

ものすごい重症の大動脈弁狭窄症が、 TAVIによる治療によって、瞬時に劇的に改善するのです。その劇的さに、時に患者さんの体が変化についていけないのです。さながら一週間ぐらい宇宙に滞在した宇宙飛行士が地球に帰還してもすぐには歩けないように、いや、逆ですね、これまで地球上に住んでいた人が宇宙に出て無重力状態の中で自分の体をコントロールできない、そんな感じでしょうか

それまでは極端に狭くなった大動脈弁に抗して無理やり血液を全身に送り出そうとしてきた左心室、そして、それでも全身の組織の血流は低下し、ぎりぎりでやっていた体に、急に TAVIにより大動脈弁の機能が正常化するため、突然後負荷が取れた心臓はより一層収縮し、また全身に豊富な血液が流れるため、これまで足りなかった部分にも血液が流れ、相対的に全身循環血液量が足りなくなるのです これらの急激な変化は Afterload Mismatchとも呼ばれています。実際に目の前でこれが起こる、その急激な生理変化は驚くべきものです。

もう今から35年も前のことですが、兵庫医科大学胸部外科で3ヶ月間心臓外科医としての研修を受けた時のことです。当時開心術の後、心臓外科医は泊まり込みで、患者さんの術後管理にあたりました。その術後管理では微妙に点滴の量を変えたり、数少ない薬剤投与量を微妙に変化させたり、それこそ大変な管理をしていたのです。その時、僕の指導医に聞きました、「どうして術後管理が必要なのですか? 手術がきちんとされれば、術後管理なんて必要無いのではないのですか? 術後管理が必要、ということは手術が不完全だからではないですか?」 これに対して、その指導医は、「いや違うんだ、術後管理をきちんとすれば、患者さんの立ち上がりが早いんだ」、そのように僕に答えました。

しかし、当時の僕は、「そんなことは無いだろう、体は良い手術をすれば自分で回復するだろう」と、思っていました。そして、その後も35年間ずっと心の中ではそのように信じてきました。

しかし、本日それが間違っていた、そのように理解できたのです。そもそも人間はそのような急激な変化には自分の力のみでは耐えられないのです。だからこそきちんとした管理が必要なのですね。まったく35年間にして初めて学んだことでした。

今日の症例はとても大変でしたが、本当に自分は医者だ、ということを実感した次第です。