学会の詳細

ベオグラード空港 |
そもそも何で僕が今回セルビアを訪れたのでしょうか? 実は、10月12日から15日に渡ってこのベオグラードで、第14回セルビア・モンテネグロ心臓病学会(the 14th Congress of Cardiology Society of Serbia and Montenegro)が開催され、そこに講演と、PCIのライブ・デモンストレーション術者として招聘されたのです。そもそもの繋がりは、徳田虎雄徳洲会理事長の強い肝いりで、2002年11月末にベオグラードの循環器医師数名が僕の所属する湘南鎌倉総合病院 心臓センター循環器科に10日間ばかし滞在され、日本の循環器治療について視察されたのです。そしてこの時から今回の学会招聘の話が持ち上がっていました。この時、熱心にPCIなどを視察されていたのがGoran先生であり、今回ベオグラード空港まで出迎えに来られました[写真右]。

Song Jae-Kwan(宋 在寛)先生(左)と |
第14回というからにはユーゴスラビアの頃から行われている学会だと思われます。セルビアおよびモンテネグロから1,000人近くの医師、そしてコメディカルが集まりました。International Faculty Memberとしてはイタリアからあの有名なAntonio Colombo先生を含め三人、ドイツ一人、ボスニア・ヘルツェコビナから四人、ギリシャから二人、マケドニア、クロアチア、ハンガリー、ポーランド、スロベニア、スイスから一人ずつが招聘されました。そして、アジアから私とソウルのSong Jae-Kwan(宋 在寛)先生が招聘されました[写真右]。実は、Song 先生も来られている、ということは当地に着くまで知りませんでした。彼は、心エコーの分野で世界的に有名な先生で、韓国編-Iでも紹介したソウルのAsan Medical Centerにおいて心エコー部門の長をされています。米国の名門医学校Harvard Medical Schoolにも所属しています。10月14日の朝、ホテルで朝食をとっている時に、どこかで見た顔のアジア系の人が盛んに僕に手を振ることに気づきました。それが、Song先生でした。彼は今回、エルゴノビン負荷による冠動脈攣縮を心エコーによる壁運動の早期検出により、安全に確認できる、ということを講演されました。この内容は既に彼自身の手により、JACCなどにpublishされています。

Inter-Continental Hotel |
学会は宿泊したホテル、Inter-Continental Hotel [写真右]と渡り廊下でつながっている大きな国際会議場[写真左下]で行われました。これらの施設はSAVA川を挟んだ旧市街の向かい、新市街側にあり、旧ユーゴスラビアの時代25年ぐらい前に造られた施設です。今回の二年前には、Colombo先生がミラノからライブ・デモンストレーション中継を短時間行ったということですが、今回初めて国内でのライブ・デモンストレーションが行われることになり、僕がその光栄の術者をすることになりました。PCIの手技は学会場から数キロ離れた旧市街の岡の上にあるDedinje心臓血管研究所病院(Dedinje Cardiovascular Institute)[写真右下]でした。心カテ室は三つあり、そのうちの二つが稼働していました。僕がライブ・デモンストレーションを飛ばしたカテ室はSiemensのDICOM対応デジタル機であり、事前に送られてきた症例の写真から心配していた画像の質は問題ありませんでした。

国際会議場 |

Dedinje心臓血管研究所病院 |
ライブ・トランスミッションは11:30から13:00まで行われました。トランスミッションはユーゴスラビア国営テレビが担当し、その模様は当日の20:00からのユーゴスラビア国営テレビ全国ニュースで流されました。このテレビはウィーンなどにも流され、80%以上のユーゴの人々が見た、ということです。放映直後にGoran先生の所に、ウィーンに住む友人から電話があり、「Dr. Saitoって知っている?」「知っているも何も、今目の前に座っているよ。」といった会話が交わされました。僕がカテ室に入ったのは11:15amぐらいで、ぎりぎりでした。現場の人々は皆、初めてのことなので非常に緊張している様子が伝わってきました。

一例目 |

二例目 |
一例目[写真左側]はSLE(全身性紅斑性狼瘡)を有する女性で、腎機能低下もある方でした。今回のターゲットは左冠動脈前下行枝近位部の慢性完全閉塞病変で、推定閉塞期間は1年間であり、今回の学会長Miodrag C. Ostojic先生の大切な友人、ということでした。7Fr TFIで入り、日本より持参したExcelsiorとAthlete Magic-FAにより病変をクロスし、このあとCypherステントを植え込みました。トランスミッションはこの症例の前半うまく行かず、会場ではチラついた画像とカテ室からの一方向のみの音声が伝わるだけだったそうです。
二例目[写真右側]は56歳の男性で、左冠動脈前下行枝近位部の慢性完全閉塞と、右冠動脈に75%狭窄を有していました。7Fr TFIで入り、同様にExcelsior + Athlete Magic-FAの組み合わせにより慢性完全閉塞病変をクロスし、病変部に3.5 x 8 mmのExpress-IIステントを植え込みました[写真右]。
そのまま、右冠動脈に対しては前拡張無しに4.0 x 18mmのExpress-IIステントを植え込みました。こちらの症例は最初から最後まで放映されました。一例目と二例目の間の患者さんの入れ替え、そして動脈穿刺、またセットアップに30分ぐらいかかり(本当に僕以外の皆が舞い上がっていました)、トランスミッションに使えた時間は実質的に1時間ありませんでしたが、それでも13:00の終了10分前には終了し、あとはインタビューに答える形式[写真上]でユーゴスラビア初のPCIライブ・デモンストレーションは大成功の内に終了しました。

日本国大使館前にて |
この後、急いでホテルに戻り、ホテルの隣に位置する建物内に存在する在セルビア・モンテネグロ日本国大使館に出向きました[写真右]。大使への謁見後、再びホテルに戻り、15:30からの遅い昼食後に学会場に出向きました。そこで、二つの招聘講演 "Update of the Treatments of Acute Myocardial Infarction" と "Angioplasty for Chronic Total Occlusion: Tips and Tricks" を行いました。Goran先生によれば、僕は色々な国際的なライブ・デモンストレーションでも良く名前が出てくるし、Colombo先生も大変誉めているし、また何よりもたくさんの英文論文で名前が知れ渡っているので、参加者全員がアジアの遠い国、日本より来た僕に対して、非常に満足されていた、ということでした。我ながらすごくやり甲斐を感じましたし、苦労して論文を書いてきて良かったな、と思いました。
当日の学会終了後21:30から学会主催のDinner Partyが開催されましたが、その席上[写真左下]で僕とSong先生は共にCardiology Society if Serbia and Montenegroの名誉会員として選ばれました[写真中央]。
今回の学会には、部下の堂前君[写真右中央]を連れて行きました。彼は、僕がライブ・デモンストレーションを行っている間、会場でModeratorをしましたが、人生で初めて一人ぼっちで英語の質問、英語での返答、という場面に直面し大きな精神的ストレスを感じたようでした。でも、誰でも最初はそうなので若い内にそのような体験を出来たことは人生の中で大きなプラスとなることでしょう。
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