はじめに
今回はセルビアを訪問した後、私が唯一日本からのInternational Scientific Committee and FacultyとなっているInternational Congress on Coronary Artery Disease: From Prevention to Interventionという国際学会に招聘されて参加しました。この学会は1997年に初めて開催されましたが、その後の不安定なユーゴスラビアやイスラエル情勢のために、1999年と2002年には開催が見送られました。そこで今回は第五回目ということになります。
そもそも1996年に北京で開催されたGreat Wall International Congress of Cardiology(詳細は中国訪問記Iを参照して下さい)において僕が招聘講演を行った際にそこに同じく招聘されていたこの学会の学会長のLewis先生より招聘されたのがこの学会との関わりの最初です。とはいいましても、僕自身は2000年のリヨン、そして2001年のプラハに参加(招聘)して、これが三回目です。学会はいつも10月にヨーロッパの古都で開催され、今回はフローレンス(Florence、イタリア語ではフィレンツェ: Firenzeです)の国際会議場がその開催場所でした。学会が10月19日より22日まで開催されたのですが、何しろ21日からは神戸で日本最大のライブ・デモンストレーションであるCCT(Complex Coronary Therapeutics)が開催され、私自身もその会に深く関わっているために、非常にきついスケジュールでヨーロッパから関西に時差を利用しながら入らねばなりませんでした。
セルビアからアイルランドに入り、フローレンスには10月17日夜遅くに入りました。僕は学会より招聘講演の二番目に指定されていましたので、20日11:00amより15分間の講演 "Angioplasty for Chronic Total Occlusion: Tips and Tricks" を行った後、フローレンス市内のピザ・レストラン「ダンテ」[写真右上]で昼食後、2:40pm発の飛行機でパリに向かい、そこで6:25pm発の関西空港行きJAL便に乗り換えて神戸の学会場に向かいました。実は、関西空港到着予定時刻が1:30pmでしたが、飛行機は延着し、3:00pmから僕がCo-chairを行ったセッションには遅刻してしまいました。ついでですが、このダンテというTrattolia and Pizzeriaはフローレンスの中心とは川向かいにあるためかガイドブックにも紹介されていないピザも食べられるイタリア料理のレストランです。お客さんはほとんど地元の人々ばかりで、メニューもイタリア語のメニューしかありません。店内は非常に綺麗で清潔感があります[写真中央]。料理は本当においしく、中でも前菜(Antipasta)の中の「ムール貝の白ワイン蒸し」は絶品です。また、スポゲティー・ボンゴレも良く、20種類ぐらいあるピザは流石においしい味です。もちろん、各種の魚や肉料理もあります。そして、何よりも値段がすごく安いのには驚かされます。大きなピザ[写真右下]はどれも6〜7ユーロ(日本円で800〜900円前後)にしか過ぎず、日本のピザ宅配便と比べても1/3ぐらいの値段です。フローレンスには日本でも有名なイタリア料理店「SABA****」もありますが、そこで同じような料理を頼めば「ダンテ」の4倍くらいの値段になる、ということでした。イタリア語のメニューも何だろうと時間をかけて推測すると、それなりに何となく分かるようになり、またその作業が楽しみでもあります。
通常最近の僕の講演内容では定番である"Angioplasty for Chronic Total Occlusion" は45分から1時間かけて講演する内容なのですが、それを学会のスケジュールに合わせて15分間のものに縮小するため、19日は一日中ホテルの部屋でパソコン相手に過ごしました。
僕の書いたCTOに関する論文がCCI誌に掲載されたのを契機に世界中から講演の依頼が舞い込みます。苦労して英語で論文を書いて良かったな、と思います。
学会には日本からも30名ぐらいの人々が参加していました。皆、何かしら演題を提出し発表していました。この学会も年々参加者が増加し、演題採択基準もだんだんと厳しくなりつつあります。僕は本年も100ぐらいの演題を査読し、その半数はRejectしました。
僕の講演の直前はあの有名なCarlo Di Mario先生によるDrug Eluting Stent(DES)の講演でした。彼はCypherやTAXUSに関する臨床試験であるRAVEL、SIRIUS、E-SIRIUS、TAXUX-IIIそしてTAXUX-IVなどにより得られた知見、そして自分自身の経験からDESに関する独自の主張をされていました。僕の記憶に残ったのは、DESはCypherであれTAXUSであれ安全で有効なディバイスである。再狭窄が発生するとすれば、それはステントの過拡張によるストラット破損ないし薬物濃度の低下、あるいはステント拡張不十分によるmal-apposition(ステントが血管壁と密着しないこと)、あるいは後拡張時にステント近位部健常部を障害する、といった植え込み手技のまずさにより、DESの有効性を否定するものではない。そして、これらの技術的問題は、デリバリー・バルーンの改善や、後拡張にShort balloonを用いることで解決する。また、DESによって再狭窄率がbare stentに比較して80%低下するとすれば、DES一つ当たりの価格がUS$2,500で医療経済的に採算がとれることになり、現実にヨーロッパでは当初高止まりであったDESの価格も、TAXUSという競合DESが出現したためと、厳しい保険価格のお陰で、この価格になりつつある。従って、将来的には多くの病変でDESが用いられることになるであろう。というものでした。正直の話、どこでもかしこもDESの話ばかりで、いい加減聞き飽きていましたが、このDi Mario先生の講演は大変に勉強になりました。また、彼はこのDESの経済性に関する議論の中で、CABGについても触れましたが、その中で "Next speaker, Professor Saito, will talk how much we can open even chronic total occlusion." と述べられたのには感激しました。

講演の様子 |
自分自身の講演[写真右]はスムーズに終了し、座長より合併症に関する質問がありましたが、それに対してもスムーズに答えることができました。皆、CTOに関する講演には大きな関心があり、非常に注目を集めました。思いおこせば1984年にWashington DCの国際会議場で開催されたWCC(World Congress of Cardiology)において初めて英語での発表をした時に、フロアーからの質問を全く理解することができず、座長をされていたSpencer B King先生が紙に絵を描いてくれて、「どっち?」と、僕に問いかけられました。その時から比べると我ながら進歩したものです。あの時は、僕の前の演者が水野杏一先生であり、当時米国留学より帰国されてすぐの水野先生は流暢な英語で発表および質疑応答をされたのですが、その場面との対比で本当に自己嫌悪に陥りました。ちなみにその時の僕の発表は「再狭窄と内膜解離の関係」でした。そうです何しろ、この時初めてパスポートを取り、初めて外国に行ったのです。
今回、学会の規模が二年前よりもはるかに大きくなっていることに驚きました。また全ての口演発表はPC presentationとなり、スライドは一切用いることができませんでした。ほとんどの演者はCDで講演内容を持参されましたが、僕は自分のVAIO PCG-Z1T/Pで行いました。その理由は、講演のところどころでインパクトを与えるために、敢えて漢字を用いていますが、漢字フォントを有さないヨーロッパのPCではその部分を正しく表示できないからです。今後、この学会はますます大きくなるものと思われます。来年2004年にはトルコのイスタンブールで開催されるそうですが、世界情勢の成り行きによっては延期されるかも知れません。やはり平和であることが望ましいですね。
フローレンス

ピサの斜塔

大聖堂(ドゥオーモ: Duomo) |
普段外国に行った時にはほとんど観光というものをしたことがありません。しかし、今回は18日一日がまるまる空きました。このため、フローレンス近郊のピサ、そしてフローレンス市内の一部を観光しました。
ピサにはあの有名なピサの斜塔[写真右]があり、以前から一度登ってみたいと思っていました。倒壊の危険性が増したために一時期塔に登ることは禁止されていましたが、土台改良工事の後、最近は完全予約制で一回に40人ずつ登ることが許されています。塔の高さは60mもなく、登ること自体は肉体的にさして苦ではありません(日頃、自転車で鍛えています)、しかし足下が傾いていることが非常に不安定にさせ、実際の上り下りは大変でした。
ピサで昼食をとった後、フローレンスに帰り大聖堂(ドゥオーモ: Duomo)[写真右]に登りました。ここはあの2001年公開の映画「情熱と冷静のあいだ」の中で重要な舞台となった場所です。こちらは高さが80m以上、階段数500段以上あるので少し肉体的にこたえました。Duomoより降りた後、そのまますぐ隣にある高さ88mの鐘楼に登りました。流石に頂上近くになると足がガクガクし、翌日には足の筋肉が痛くなりました。「情熱と冷静のあいだ」は飛行機の中で見ました。ストーリーは甘く切ないラブ・ロマンスです。竹ノ内 豊と、香港スターのケリー・チャン(Kelly Chan)が主演しています。中でも端正な美しさのケリー・チャンの魅力に引き込まれてしまいました。
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