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シンガポール訪問記 II

はじめに

  2004年3月27日から29日までから東京国際フォーラムで第68回日本循環器学会総会が開催されました。私は、この学会会期中にいくつかのセッションの座長などを行いました。29日は昼の12時まであるセッションの座長を執り行い、その後成田空港に向かいました。そして、16:20発のANA機に乗り、シンガポール・チャンギ国際空港に到着したのは現地時刻で10:40pmぐらいでした。
 今回のシンガポール訪問はシンガポール・ハート・センター主催の第13回シンガポール・ライブデモンストレーションにFacultyとして参加するためでした。
シンガポール・ハート・センターはシンガポール厚生省直轄のシンガポール総合病院(Singapore General Hospital = SGH)の中にあります。というか、SGHとは基本的にCancer CenterとかEye Centerとかの各専門診療科の集合体であります。これらの専門診療科は基本的に独立したビルディングを有し、そのビルに管理事務棟と外来診療棟が存在します。病棟は共用のようです。
これまでこの病院は外来者に対して非常にオープンな病院でありましたが、去年のSARS騒動以来、外来者はまずRegistration Deskにおいて身分証明書を示した上で登録せねばなりません。このため、従来ですとエレベーターで簡単に行けたカテ室もそれらのエレベーターは停止されたままですので、随分と回り道せねば到着できないようになっていました。


シンガポール・ライブの看板

シンガポール・ライブデモンストレーション

 
シンガポール・ライブデモンストレーションはもう13回というだけあって世界的にも古くから行われているライブデモンストレーションの一つです。かつて世界で開催されるライブデモンストレーションがまだ少なかった時には、かなりの数の参加者が集まったものですが、年々参加者が少なくなりつつあるように思います。
 シンガポールは東南アジアの中で最も経済的に進んだ国でしたので、PCIの分野でも東南アジアで最先端の医療を提供する国でした。事実、シンガポール政府の国策として、技術立国と並んで、観光そして医療が挙げられています。シンガポールは高度な医療を提供することにより、近隣の東南アジア諸国から特に裕福な人々に対して高額ではありますが高度な医療を提供することにより、国を豊かにすることも目指したのです。一人の裕福な患者さんがシンガポール国内の病院に入院して医療を受ければ、その医療費だけのみならず、患者さんのご家族あるいは付き人などが落とすお金もばかにならないものになります。


シンガポール港
 しかしながら、最近は隣のマレーシア、あるいはタイなどにおける医療技術の発展は著しいものがあります。かつては、ほんの10年前まではマレーシアから多くの虚血性心疾患の患者さんがPCIや冠動脈バイパス手術を受けるためにシンガポールに渡っていったのですが、今やその患者さんの流れは逆になっています。シンガポールの患者さんが、より安く質の高い医療を求めてマレーシアの、特に車でも2時間ぐらいで行けるマラッカなどに渡り、そこで高度な医療を受けて戻るケースが増えています。
 シンガポール全体のPCI症例数はせいぜい年間2,500例程度にしかなりません。一方、マレーシアの首都クアラルンプールにある国立心臓センター(IJN)では、つい数年前までPCI症例数は500例も無かったのですが、昨年は何と1,700例も行っている、ということです。このように少なくともシンガポールのPCI分野における東南アジアの中での優位性は次第に失われつつあるようです。
 いや、これはPCI分野に限らず他の全ての分野においてもそのように感じます。何れにしても東南アジアの国々は互いに切磋琢磨して競争の中で発展しているように感じます。そのことからこれらの国々の強い活力が生まれだされているように思います。
 このようなことを知ると共に、もしも日本も医療分野を国際的に開放したとすれば、日本の医療はどの程度通用する、あるいは生き残るだろうか?などとも考えています。例えば、隣の韓国との競争となった時、日本の医療は生き残れるかな?とも思います。いや、そのような事態になっても生き残らねばなりません。生き残れるように自らを切磋琢磨せねばなりません。
今年のシンガポール・ライブデモンストレーションは3月29日から31日までシンガポール国際展示場で開催されました。私は31日の朝8:00-9:30までのMeet-the-expert “TRI”において講演しました。

Meet-the-Expertでの座長
 座長をつとめた後、SGHに行き、11:30amからのライブデモンストレーション一例を行いました。症例は80歳女性、Chinese Singaporeanでした。彼女はNon-Q心筋梗塞とそれに伴う肺水腫のために1週間前に冠動脈造影を初めて受け、3枝病変であることが分かりました。左室駆出率は20%程度しか無く、主治医は大動脈内バルーン・パンピングを準備したりとても緊張していました。今回のNon-Q心筋梗塞の責任病変は屈曲した右冠動脈近位部の99%狭窄でした。
 まず、右橈骨動脈を穿刺(これはうまくいきました)を行い、6Frシースを挿入してからガイディング・カテーテルを上行大動脈に挿入しようとしたのですが、鎖骨下動脈蛇行がとても厳しく、特殊なテクニックを用いてようやく上行大動脈にガイディング・カテーテルを持ち込みました。用いたAL0.75ガイディング・カテーテルをうまいこと右冠動脈入口部に近づけ、フローティング・ワイヤーを用いてBMWガイドワイヤーを右冠動脈深く挿入しました。2.5mmで前拡張の後、TAXUS 3.5x28mmを植え込みました。このような場面ではBMSを用いることはとても許されない雰囲気でした。
 次いで、そのまま同じガイディング・カテーテルを左冠動脈に挿入し、すばやく同じガイドワイヤーにより左回旋枝末梢までクロスしました。この時、ガイディング・カテーテルのために大動脈弁閉鎖不全が発生し、またガイディング・カテーテルは左主幹部にWedgeするために血圧低下(50mmHg)とSTの大きな低下が起こりました。しかしながら、前の講演演者が本来は15分の講演の筈なのにダラダラと40分間も講演を続けるため、なかなかライブ放映がされませんでした。カテ室スタッフと話し合い、なるべく待つことにました。このため、ガイディング・カテーテルを少し引き上げ、待ちました。やっと放映ラインが繋がったので、2.5mmバルーンで左回旋枝#11 99%を前拡張してからこちらにはCypher 2.5x28mmを植え込みました。LADの病変は右冠動脈や左回旋枝程にはクリティカルなものではなく、最初から手をつけるつもりはありませんでしたが、会場におられたModeratorsの先生方から左主幹部入口部がSignificantではないか?とのご指摘があったため、この後IVUSを行い確認しました。そして、結局大動脈内バルーン・パンピングも挿入せず終了しました。

Meet-the-Expertでの議論風景
 自分の症例が終了してから再び、国際展示場に車を飛ばして帰り、そのまま昼のMeet-the-expertセッションで講演を行いました。
 ホテルをチェックアウトしてから、いつも行きつけのEast Coast Parkの中にあるシーフード・レストラン街の中の小紅瘻という店に行きました。シンガポール名物にPepper Crabというものがあります。これは大きめの蟹を蒸し、それから黒胡椒をたくさん入れた油で揚げる(この料理法は私の想像です)ものであり、ピリリと辛い蟹です。このPepper CrabはこのEast

インドネシアの先生方と
Coast Parkのどのお店でも食べることができますが、この小紅瘻が最高です。値段もとても安く毎晩満席です。この店に入ったのは6:00pm過ぎでしたが、途中でインドネシアの先生方も合流し、店を出たのは9:30pmでした。
 そのままチャンギ空港に向かい、11:30pm発のANA機で3月31日7:00amに成田に戻りました。飛行機のクルーは行きと同じメンバーでした。
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