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 韓国訪問記-IV
はじめに
 今回のPCI訪問は、またまた韓国です。今回は2004年2月8日に成田から釜山の金海(Kim-Hae:"キムヘ"、もしくはリエゾンして"キメ")国際空港に到着しました。この空港は韓国空軍との共用空港ですので、空港内の写真撮影は禁止されています。釜山はソウルに次ぐ、韓国第二の都市であり、人口は400万人ぐらいです。町は山と日本海(韓国では東海と呼びます)に挟まれ、丁度、神戸や長崎のような雰囲気があります。

 8日の日曜日はホテルに入ってから韓国きっての海水浴場がある広安里(グワァンアンリ)海岸近くの刺身家(フェッ・チム)でHong先生と食事をしました。釜山は海に面しているために、刺身などの生魚で有名です。また、水だこの足を細かく切って動いているまま食べるサン・ナッチ(鮮蛸)も有名です。ちなみに、"フェッ・チム"の"家"を表すハングルの"チム"は、正確には"チム"ではなく、"チプ"です。つまり子音のp(b)です。しかしながら、このp(b)は母音を後に有しないために、音としてはムとして聞こえます。ただ、後に母音が続く場合には、p(b)の音が生きてきますので、例えば"チベ・カヨ"というようになります。ちなみにこれは「家へ行く(家へ帰)」という意味です。


2月9日(月曜日)
釜山大学病院
釜山大学病院 救命センター
 この日は朝8:30から釜山国立大学医学部付属病院を訪れました。釜山国立大学は韓国の国立大学の中でもソウル大学と並んでとても由緒のある国立大学です。長く、この付属病院には古いシネ・アンギオ装置しか無く、釜山市内のPCIに関しては私立の東亜(ドン・ア)大学医学部付属病院がリーダーシップをとってきました。しかし、釜山大学病院に救命センター[右写真]が設置され、新たにシーメンスの最新式のシネ・アンギオ装置が2年近く前に設置されてからは釜山大学のPCI症例数は急速に伸び、現在では年間800例程度のPCIを行っている、ということです。

Kim先生
Kim June-Hong先生

Chin先生
Chin Kook-Jin先生

Hong先生
Hong Taek-Jong先生
 僕がこの病院を訪れるのは去年の5月に次いで二回目です。この病院でも、やはりほとんどの症例がTRIにより治療されています。現在Interventional Cardiologistsは三人おられます。二人おられる若手の先生方は、とても優秀です。特に、Kim June-Hong先生[左上写真]はソウルのAsan Medical CenterでSJ Park先生の下で二年間のトレーニングをされただけあって、とても優秀であり、また積極的です。Chin Kook-Jin先生[左中央写真]は若いにもかかわらず学者肌の先生です。二人の上におられるのがHong Taek-Jong(洪)先生です[左下写真]。Hong先生もとても良い先生ですが、日本人のように少し内気で控えめな感じです。

カテ室スタッフと
釜山大学病院カテ室スタッフと
 当日、ここでは合計17例の症例が準備されていました。しかし日本と異なり、韓国ではほとんどの症例がAd hocです。別の呼び名では"One stage"とも呼ばれます。要するに、診断カテーテルとPCIを一期的に行うことです。このため、この日は結局、予め診断カテーテルを済ませて僕の訪問に準備されていた技術的に困難な症例5例のみを行うことになりました。これらの症例はHong先生の受け持ち患者さんであったため、結局PCIは2:00pmまでに終了してしまいました。最後はカテ室スタッフと記念写真です[右写真]

 釜山国立大学病院は韓国国内でもっとも古い西洋医学の病院だということです。この大学は釜山周辺地域に多くの卒業生、そしてそれに伴うネットワークを有しているために、現在たくさんの患者さんが紹介されてきている、ということです。


2月10日(火曜日)
Paik病院釜山病院
Paik(ペク: 白)病院釜山病院
カテ室から
カテ室からの眺望
 釜山国立大学の翌日火曜日には、相対する私立大学の雄である、Inje(インジェ: 仁済大学)付属、Paik(ペク: 白)病院釜山病院を訪れました。この病院はこれで2回目の訪問です[右写真]。白病院は高台に位置し、その上、心臓カテーテル検査室は5階にありますので、カテ室からの眺望はなかなかのものがあります[右写真]

Kim先生
Kim Du-Il先生

Kim先生
Kim Seong-Man先生
 今回の訪問では、以前よりこの病院でPCIを行われていたKim Du-Il先生[左上写真]に加えて、Kim Seong-Man先生[左下写真]がチームとして参加されていました。Kim Seong-Man先生は、それまで釜山市に以前より存在していた高神(Ko-Shin)大学でPCIそして不整脈アブレーションをしていました。Ko-Shin大学は消化器系の悪性腫瘍の分野で有名な病院でしたが、場所も良くなく、また循環器に関して投資もせずに来ました。これが祟り、ついに去年の春にKo-Shin大学は破産してしまいました。もとより、Ko-Shin大学付属病院の心臓カテーテル検査室にあるシネ・アンギオ装置は、韓国国内に現存するもっとも古い20年以上昔に据え付けられたSiemensの旧式のシネ・アンギオ装置でした。僕はKo-Shin大学には過去3回訪れてこの機械を用いてPCI行ってきましたが、正直とても辛いものがありました。Ko-Shin大学は結局破産してしまい、優秀な医師が次々と抜け出し、Kim SM先生もついに去年の12月にこの白病院に移籍されました。

 当日彼らは既に診断カテーテルを済ましていた8例の症例を準備していました。その中には、DCA(方向性冠動脈粥腫切除術)の症例、3例のCTO(慢性完全閉塞)症例、左主幹部分岐部病変、そしてCABG術後グラフト閉塞症例も含まれていました。

 CTO症例3例の内訳は、右冠動脈症例一例、左冠動脈前下行枝症例2例でしたが、その中の2例は一回PCIが試みられたものの不成功であった症例でした。

 右冠動脈のCTO症例は閉塞長が2CMぐらいであり、既に一回PCIが試みられておりましたが不成功だったそうです。この症例に対してはTFIにより入り、カテ室内にあったShinobiと放射線科より借用したマイクロカテーテルを用いてガイドワイヤーの通過を行いました。しかしながらCrossSail 1.5mmが通過せず、Aqua 1.5mmを用いて閉塞手前のRV branchにアンカーをかけることによりCrossSailを通過させ、最終的にはCypher 3.0 x 28mmを留置して終了しました。

 左冠動脈前下行枝近位部からのCTO症例は、まだ42歳の男性であり、Kim DI先生とは小学校の同級生だということでした。彼は半年前に労作性狭心症のために冠動脈造影を受け、3枝病変であったため、Kim DI先生に右冠動脈に対してCypherを植え込まれていました。今回確認造影で、右冠動脈は全く再狭窄無しでしたが、もともと病変の存在していたLADのCTOと左冠動脈回旋枝のdiffuse病変がターゲットとなりました。この症例に対してはTFIで行い、左右同時冠動脈造影を併用しながら先の右冠動脈の症例と同様にShinobiとマイクロカテーテルを用いて再開通に成功しました。そのまま左冠動脈回旋枝に対してもPOBAをかけ(灌流域が狭く、血管径も細い)、最終的に左主幹部からLCX入口部を覆う型で2本のCypherをLADにかけて植え込みました。

 もう一例のLAD-CTO症例も一回PCIが試みられ不成功であった症例でした。この症例に対しては、Choice-PTを用いてクロスし、最終的にはやはりCypherを植え込みました。

カテ室スタッフと
白病院カテ室スタッフと
 この日、実はソウルで知人のお医者さんをお見舞いに行く予定でしたので、白病院は3時頃に切り上げ、速やかにソウルに移動し、延世(Yon-Sei)大学セベランス病院に入院中の知人を訪れるつもりでした。その旨、Kim DI先生に申し出ると、彼は強く拒絶されました。既に患者さん達に、「日本人の先生を本日呼んでいて、難しいPCIをしてもらう」と、伝えてあるので最後の症例が済むまでは絶対に駄目と言われました。このため、最後の症例40歳前半の女性、左主幹部分岐部の狭窄による不安定狭心症の治療をさっさと済ませて、やっと5:45pmソウル行きの飛行機に乗り込むことができました。ちなみにこの症例に対しては7Fr TFIで入り、LMT bifurcationに対して2本のCypherを用いてdirect kissing stentingを行いました。

 全ての症例に対して成功裏にPCIを終了し、最後はカテ室スタッフ皆で写真を撮りました[右写真]

 ソウル市内の学生街シンチョン(新村)には韓国におけるトップの私立大学が二つ存在します。一つはヨンセイ(延世)大学であり、もう一つはイファ(莉花)大学です。イファ大学は女子大です。韓国ではヨンセイ大学出身の男性とイファ大学出身の女性が結婚するのが憧れの的でありました。もちろん、今はそんなことはないのでしょうが。ヨンセイ大学には医学部が存在し、その付属病院がセベランス病院です。何でもアメリカの修道士が100年ぐらい前に設立した西洋医学の病院が母体として発展してきたそうです。シンチョン・セベランス病院は韓国国内でも最高峰の病院とされており、その心臓病センターでは前の大統領も治療を受けた、ということです。ちなみに、ヨンセイ大学医学部はソウル・シンチョンの他にもヲンジュ(温州)にあるヲンジュ・セベランス病院も所有しています。この病院でのPCIチーフがTRIの仲間であるYoon先生です。

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