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心臓病の治療について
心臓の治療
  虚血性心疾患に対する診断法
  選択的冠動脈造影
何と言っても、虚血性心疾患に対するゴールデン・スタンダード(黄金標準)となる検査法です。

はじめに
冠動脈は普通にレントゲン撮影しても見えません。胃のレントゲン検査をする時には、かならずバリウムというレントゲンに写る薬を飲み、胃の中をこれで満たします。そうしてレントゲン撮影すると、これまで見えなかった胃の中がはっきりと見えるようになります。冠動脈を見ようとすれば、胃の検査と同様にレントゲンに写る薬(=造影剤)を冠動脈内に入れねばなりません。

胃の場合には、口から飲めば自然に胃の中に入ります。しかし、冠動脈の場合には口から服用しても、あるいは静脈注射で投与したとしても冠動脈にたどり着く頃には希釈されてしまい、十分な濃度で造影剤が冠動脈を写すことは出来ません。そこで、カテーテルと呼ばれる細い管をレントゲンで見ながら冠動脈の入り口にまで持っていき、そこで冠動脈内の直接造影剤を流すことにより、冠動脈をレントゲンで見えるようにします。この検査法を選択的冠動脈造影と呼びます。
選択的冠動脈造影を始めて行ったのは米国クリーブランド・クリニックのSones博士であり、それは1956年のことでした。それ以来、虚血性心疾患に対する医学の理解は格段に進歩し、狭心症や心筋梗塞に対する治療法も大いに発展しました。

心臓は動いているため、普通にレントゲンに撮影しても画像はブレてしまいます。このため、選択的冠動脈造影の時にはレントゲンの映画撮影を行います。これをシネアンギオとも呼びます。

心臓カテーテル検査および選択的冠動脈造影を受けられる患者さんへ
「心臓カテーテル検査と選択的冠動静脈造影(CAG)の説明文と同意書」

カテーテルはどのように入れるの?
昔は用いられていたカテーテルは3mmぐらいの太さがありました。そして、それを動脈の中に入れる時には、肘の部分で皮膚を2cmぐらい切開し、内側を走っている動脈を確認して、動脈切開を加えてカテーテルを挿入していました。カテーテルを抜いた後には細いナイロン糸で動脈を縫い合わせていました。

しかし、その後には太い大腿動脈(足の付け根の部分を走っている太い動脈)を細い針で刺し(=穿刺)、この針から細いガイドワイヤーを動脈の中に入れ、それに沿わせてカテーテルを動脈内に挿入する経皮的穿刺法が開発されました。

現在では用いられるカテーテルの太さも1.3mm~2mm以下と細くなり、安全に経皮的穿刺法により挿入することが可能となりました。これに伴い、カテーテルを挿入する部位も肘動脈や橈骨動脈(手首を走る動脈)にと変化してきました。

大腿動脈よりカテーテルを挿入すると、出血が完全に止まるまで歩くことが出来ません。これには最大24時間かかり、その間の安静が患者さんにとっては苦痛です。一方、腕からカテーテルを挿入すれば、患者さんは終了後すぐに自分で歩くことが可能であり、患者さんの安静に伴う苦痛は大幅に軽くなります。

検査にかかる時間
患者さんの動脈が動脈硬化のために著しく蛇行していたりすれば別ですが、熟練した術者が行えば全手技時間は15分以内です。

体に入った造影剤は安全?
最近の造影剤は多くの改良がなされ、とても安全になっています。造影剤は冠動脈を流れた後、全身を回り、すぐに腎臓より尿中に排泄されます。腎臓の働きが正常であれば24時間以内には全ての造影剤が完全に体外に排出されるとされています。但し、腎臓の病気のために腎機能が低下している場合には造影剤が体内にとどまってしまいます。このような場合には一時的に血液透析を行って人工的に造影剤を体外に排出してあげます。造影剤はレントゲンに写るヨードを含んでいるので、時に造影剤に対してアレルギー反応を起こす人がいます。このような場合には、造影剤を用いる検査は慎重に行う必要がありますので、造影剤アレルギーを起こされた場合があれば医師に申し出る必要があります。造影剤アレルギーの頻度は500人~1000人に1人ぐらいです。

検査は苦痛?
選択的冠動脈造影はそれほど苦痛のある検査ではありません。胃カメラと療法受けられたことのある患者さんの多くは、選択的冠動脈造影の方が胃カメラよりも楽だと、言われます。検査の際には、軽い精神安定剤を事前に投与して気持ちを落ち着かせる場合もあります。また、穿刺部位に対して痛み止めを注射しますが、全身麻酔を用いることはありません。心臓の中にカテーテルが入ると、その刺激で不整脈が出ることがあり、その時には動悸がしますがご安心下さい。

造影剤を冠動脈に流しても痛みはありません。心臓の動きを映すために、比較的多くの造影剤を左心室内に注入する左室造影という検査の際には、全身が一瞬暖かく感じます。

また、冠動脈の痙攣を解除するためにニトログリセリンを投与した時には「口の中が一瞬スーッと」感じます。

検査は危険?
もちろん選択的冠動脈造影は実際にカテーテルを心臓にまで入れて行われる検査なので100%安全な検査ではありません。このため、この検査を行うに際してはその必要性について十分なご理解が必要です。このような検査の安全性は、それを行っている病院スタッフがどれだけその検査に対して習熟しているか? ということに大きく依存します。少なくとも年間1,000例以上(できれば2,000例以上)の症例数をこなしている病院であることが必要です。ちなみに日本において年間1,000例以上の選択的冠動脈造影を行っている病院は全国に350病院程度存在しますが、年間2,000例以上行っている病院は10病院程度しかありません。

これらの選択的冠動脈造影に習熟した病院で選択的冠動脈造影を受けられるならば、検査に伴う危険性は0.05%(2,000人に1人)よりもはるかに少ない頻度です。

検査の合併症にはどのようなものがある?
可能性のある合併症としては、造影剤が合わないことによる蕁麻疹、発熱、ショック、腎不全など。そして、不整脈、心筋梗塞、カテーテルを挿入した動脈の閉塞、死亡などがあり得ます。

検査にかかる費用と日数は?
選択的冠動脈造影は健康保険により認められている検査ですので、皆様方の病院に対する支払い金額は保険区分や入院日数により異なります。しかし、ほとんどの場合病院に対する支払い金額は数万円程度です。

検査は日帰りでも可能です。しかし、初めて選択的冠動脈造影を受けられる患者さんについては基本的に病院に一泊されることをお勧めしています。

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